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彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われました  作者: 湯島二雨
第14章…元カノ

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元カノを忘れないと許されません

 簡単な話だ。

雲母とヨリを戻そうと考えているか? という問い。


イエスなら死、ノーなら生、それだけの話だ。


ならば俺なんて死んだ方がいい。ここまでウジウジウジウジ悩んで男らしくないの極致を貫いて、それでもハッキリできない俺は死ぬべき。俺なんか死んだ方が楓ちゃんのためにもなるし雲母のためにもなる。


だからイエスと答えろ。こんなに可愛い女の子に処刑されるなら本望だ、さあ言え。




「―――っ……思って、ない……ヨリを戻そうなんて思ってない……!」



最低だし弱くて卑怯な俺は、生にすがりついた。俺はまた、死ぬ勇気も出なかった。


……ウソだ。本当はまだまだ未練が残っている。どうしても吹っ切ることができない。雲母と付き合っていたあの頃に戻りたいという願いが、心の底の底に貼りついて剥がすことができなかった。


最悪な答えを出した、ウソをついた、楓ちゃんに。楓ちゃんのペットの分際で。

楓ちゃんのペットもやめる気ないくせに、本当に最悪だ俺は。



「…………本当に?」



楓ちゃんはジト目で疑いの念を投げかける。当然だ。俺の答え方は、誰が見ても信用できない感じなのだから。



「思ってない! 全然、これっぽっちも……」


ウソを重ねる、罪を重ねる。ペットとしてこの罪はあまりにも大きいとわかった上でペラペラと罪の言葉が出てくる。



「…………なら、いいけど」


楓ちゃんはピストルになっていた人差し指を引っ込めた。ホッとした反面、罪の意識が心を締め上げた。



「ヨリを戻す気がないのなら、あんな女のことなんて()()()忘れられるよね? ていうか忘れて」


楓ちゃんは微笑しながら言った。穏やかに微笑んでいるように見えるが、心なしかピストルよりも圧力を感じた。


「えっ……その、いつになるかはわからないけど、できる限り早く、必ず忘れるようにするから……」


本当に情けない言い方だけどこれは本心だ。忘れられるものならすぐにでも忘れたい。これは本当の気持ちだ。

忘れられたら楽になるのに、どうしても忘れられないから苦しいんだ。

いや……その()()()という感情自体が、被害者ぶってる感じでより一層自分が気持ち悪い。



「ダメ、今すぐに忘れなさい」


「え、そのっ……慌てずにゆっくり、じっくりでいいって、楓ちゃんがさっき言ってたじゃないか……」


「女のことなら話は別だよ。涼くんの心の中に他の女がいるなんて1秒でも耐えられない。速やかに迅速にキレイさっぱり忘れてよ、ねぇ」


「ッ……!」



わずかではあるが、楓ちゃんの瞳が揺れた。少し潤んでいるのを感じた。

……本当は楓ちゃんはわかっているのだろう。俺が雲母をあきらめられていないことを。

ついさっきまで元カノの存在すら知らなかったのに、やはり俺のすべてを見透かされている。俺の陳腐な心など、楓ちゃんの手のひらの中。


楓ちゃんの涙を帯びた瞳が、何よりも俺に効いた。

病んだ暗闇の目よりも、ピストルよりも、圧力のかかる笑顔よりも、泣かせてしまったことが俺の罪を重く大きくした。


こんなに醜い醜い俺の内部をわかった上で、それでもなお楓ちゃんは俺を愛してくれている。なんて優しい女の子なんだ。

なんで俺なんかを愛してくれるんだよ。なんで……



「お嬢様、安村様。そろそろ学校に到着しますよ」


運転手さんの声が車内で響いた。表情や声からしていつも通り冷静。

なんでこの空気この空間でそんなに平静でいられるんだよ。鋼メンタルか。



俺は最低で楓ちゃんを悲しませてしまっても運転手さんは車をいつも通り運転し、車はいつも通りの時間に学校に到着した。


誰か俺を殺してくれって思ってるけど、俺はこんなんでもいつも通り学校で仕事をしなくてはならない。しないと多くの人に迷惑をかけるんだ、ガキじゃないんだからちゃんとしっかりやらなくては。



「涼馬さーん!」



校門をくぐった瞬間、つばきちゃんが登場した。

前も思ったけど、登場早すぎない? 俺たちが登校する時間完璧に把握してんの? まあ登校する時間ほとんど決まってるけどさ。運転手さんが優秀で到着時間ほとんど一定だし。


……つばきちゃんもなぜか俺を慕ってくれてるんだよな。こんな俺なんかを。

友達になるとは言ったけど、こんなにもダメなこの俺を登校した瞬間から出迎えてくれるくらい、慕ってくれている。

すごく申し訳なくなる。こんなに可愛い女の子に声をかけてもらう価値なんて1ミリもないのに。



「涼馬さん、おはようござ……

…………」


つばきちゃんは挨拶する途中で、俺の顔を見て黙り込んで石化したみたいに固まってしまった。


そうだった、俺の顔面には楓ちゃんのキスマークがいっぱい刻まれてるんだった。

楓ちゃんの許可が出るまで消しちゃダメって言われたし、マジでそのまんまの顔をつばきちゃんに晒してしまった。



「涼馬さんなんですかその顔。超みっともないですね!」



俺の顔を指差してアハハハと笑ったつばきちゃん。

悪気はないんだけど思ったことをハッキリ言うつばきちゃんのド直球炸裂。俺は恥ずかしくてできるだけ俯いて顔を見られにくいようにした。



―――ドスッ!


「ぐっ……!」


「か、楓ちゃん!?」



楓ちゃんがつばきちゃんに腹パンして、つばきちゃんはうめき声を出して倒れた。


後ろ姿だけでもわかる。楓ちゃんが凄まじく機嫌が悪いということが。そんなに風が強いわけでもないのに美しい金髪がふわふわと舞うほど、暗黒オーラを発している。

もちろん俺のせい。俺が二股炸裂ゴミカスだからこんなことに。俺の顔がみっともないのは紛うことなき事実だからつばきちゃんは何も悪くない。すべて俺の責任。ごめんつばきちゃん。俺のせいで腹パンされてしまった。


つばきちゃん大丈夫かなと思って倒されたつばきちゃんを見るが、ギャグみたいな表情をしてるし大丈夫そうか。大丈夫でも俺のせいであることに変わりはない。つばきちゃんが起きたらちゃんと謝らないと。


楓ちゃんはスタスタと歩き出した。つばきちゃんの登場、つばきちゃんの発言に言及することはない。何も言わないのがさらに怖い。



「ああ? なんだデカパイ女か……」


ドスッ!


「ぐふぅっ!」


「堀之内さーん!!」



堀之内さんが登場したと思ったらもうすでに腹パンされて倒れていた。

デカパイ女って呼んだ時点でもうアウトなのか、さっきよりも強烈っぽい楓ちゃんの腹パンが堀之内さんの腹に炸裂した。

あとで堀之内さんにも謝らなくては……


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