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彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われました  作者: 湯島二雨
第14章…元カノ

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元カノについて話しました

 俺に抱きついたまま、俺の太ももの上に跨ってきた楓ちゃん。

座席に座る俺のさらに上に楓ちゃんが座っている。さらに首に腕を回して絡みつくように抱きしめている。


楓ちゃんのお尻の感触が……! お尻もピチピチで張りがあって柔らかい。


ちょっ、これもう対面座位じゃん。姿勢がエロすぎる。ここ車の中だぞ!? そこそこ速いスピードで走っているとはいえ、周りの通行人に見られたら誤解される体勢じゃねぇか。


楓ちゃんのミニスカートとピチピチな白い太ももが俺の足と触れ合っている。すごくいい匂いもして、一瞬にして大事な部分がテントを張ってしまった。

ヤバイ、楓ちゃんに当たりそうだ。当たりそうで当たらないギリギリの範囲でなんとかバレないように下半身をできる限り引っ込める。


おい、真面目にやれよ俺。これは決してエロいことをするわけじゃないんだ。今は興奮してる場合じゃない、真面目な話をするんだ。俺の返答次第では俺がピンチになるかもしれないんだ。

対面座位みたいになってるのは絶対に離さない、絶対に逃がさないようにするためだ。今の俺は大蛇に絞めつけられたエモノと同じなんだぞ。



「涼くん」


「はい!」


楓ちゃんの声が俺を引き締める。可愛いけどとても冷たい声。



「さっきの女、一体誰なの?」


「……えっ……?」



……あれ? 知らないのか……?

てっきり俺のことは中条グループの調査能力で徹底的に調べ尽くされているものと思っていたんだけど。楓ちゃんは俺の情報を何もかもすべて知り尽くしてるって感じだったのに。

楓ちゃんは、雲母のことを知らない……!?



「ねぇ涼くん、聞いてる!?」


「あ、ああ、聞いてるけど……」


「さっきの女は涼くんの何なの!? ねぇ、答えてよ!」


「……俺の、元カノだけど……」


「―――元カノ……!?!?!?」



楓ちゃんの目には動揺や不安の色が見えていた。俺を抱きしめる腕がガクガクと震えていた。

本当に、()()()()()()は知らないのか。



「も……元カノ……元カノ……!?」


「そ、そうだよ」


「元カノ……元カノ……ッ……!?」



ヤバイ、楓ちゃんが完全に病みモードに入ってしまった。

病みモードをここまで至近距離で見ると、凄まじく恐ろしい。今までの病みモードとは比べものにならない、大津波のような闇が押し寄せていた。もはやこれは病みモードの完全体だ。



「ウ……ウソでしょ……!? 涼くん、彼女いたの……!?」


「し、知らなかったのか……?」


「知らないよ! 初めて聞いたよ!! 付き合ってる女がいたなんて、なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」


「いや、そのくらいは知られてるものだとばかり思ってたから……」


「知ってたら私が言及しないわけがないでしょ!?」


「た、確かに……」



言われてみれば確かに、つばきちゃんや堀之内さんとちょっと接しただけでもブチギレ嫉妬してた楓ちゃんが元カノのことを何も言わないのは不自然じゃないか。本当に雲母のこと何も知らなかったんだ。


別にバレないようにコソコソ交際してたわけでもないのになんで知られてないんだ? 

中条グループの調査能力って意外とガバガバなのか?

いや、女性関係とかそこまでのプライベートにまでは調査しなかったのかな? 中条グループって思ったより良心的なのか?

まあ中条グループの調査能力とかは知らん。とにかく楓ちゃんは元カノのことを知らなかった、それはガチだ。


でももっと早く言ってほしかったとか言われてもなぁ……過去の女の話なんて女の子にするもんじゃないだろ。俺のことを好いてくれている女の子ならなおさらだ。

雲母のことを知られてようが知られてなかろうが、雲母のことは話さないよ。



「……そんな……涼くんは童貞だと思っていたのに……絶対に彼女いたことないと思っていたのに……」


「失敬な……」


「だって涼くん、私と触れ合っている時とか明らかに女の子に慣れてない感じだったじゃん! あれだけピュアな少年みたいな反応しといて実は女性経験あるなんて、サギだよサギ!」


「うっ……」


ぐうの音も出ない。楓ちゃんに対して童貞丸出しな対応ばかりしてたのは完全に事実で何も言い返せない。

いやしかし、完全に言い訳だけど楓ちゃんが可愛すぎるから……これだけ可愛くてさらに巨乳なピチピチ女子高生に迫られたら、経験あろうがなかろうがほとんどの男はイチコロのデレデレになるだろ。



「とにかく、その元カノについてもっと詳しく教えてほしいんだけど」


「あ、ああ」


隠し事は一切せず、雲母のことはすべて話した。いつ出会ったか、どれくらい付き合っていたのか、なぜフラれたのか、すべてを。




「えーっと、元カノの名前は高井雲母さん、涼くんと同い年。高校時代に出会い、そこから7年付き合っていたけど、好きな人ができたという理由で突然フラれた……ということでいいのかな?」


「ああ」


「で、今日いきなり私たちの前に現れてヨリを戻そうと言われたと?」


「ああ、そうだ。何の前触れもなく急にやってきたんだ。俺にもわけがわからん。俺を捨てて着信拒否もしてたのに今さら何のつもりなのか……ていうかなんで俺の居場所知ってたんだ……何もかもわからん……」


「ふーん、何もわからないけど来ちゃったものはしょうがないね」


俺が話した元カノのこと、ものすごい速さでスマホにメモしてて超怖いと思った。



「……ねぇ涼くん、私思ったんだけどさ」


「な、なんだ……?」


「その高井さんって人、涼くんに()()()()()とか何もなかったね」


「え? 謝罪……?」


「自分からフっておいてヨリを戻そうとするんなら、まずは謝るのが筋ってもんじゃないかな?」


「あ、あー……雲母の方から謝ってきたことは一度もないから……」


「へぇ、そんなんでよく7年も付き合ってこれたね」


雲母のことは本当に好きだったから……とは楓ちゃんには言いづらいな。

まともな男だったらたくさんケンカするタイプの女だったと思うけど、俺は尻に敷かれっぱなしの情けない男だったからケンカにならないように媚びへつらって、嫌われたくなくて雲母の顔色を窺いまくって、それで結果的にそこそこ長く関係を続けられたと言えるかもしれない。



「私も人様に偉そうに言える性格じゃないけどさ、私は『ごめんなさい』と『ありがとう』くらいはちゃんと言うように心がけてるよ。それくらいはちゃんと言えなきゃダメだってお父様に教わったからね」


確かに楓ちゃんは謝罪やお礼はちゃんと言える子だ。俺も何度も言われた。別に楓ちゃんは悪くないんじゃないかって思うようなことでも楓ちゃんは謝っていた。

楓ちゃんのそういうところ、俺は尊敬する。雲母にも見習ってほしいとは思う。

そしてお父さんの言うことをちゃんと聞く楓ちゃん、可愛い。



「まあ、高井さんとかいう女がどんな女だろうが別にどうでもいいんだけどさ。

だって()()()()()()()()()し」


「えっ……」


「だってそうでしょ? ()彼女なんでしょ? もうフラれたんでしょ? 別れたんでしょ? 高井さんとは()()もう赤の他人なんでしょ? だったら関係ないじゃん」



……雲母は、もう関係ない……

確かにそうだ。雲母とはもう終わったんだ。終わらせたのは雲母の方だ。今さらヨリを戻そうって言われても知るかボケって話だ。


……そのはず、なのに……

『雲母はもう関係ない』という言葉が、俺の心の底をモヤモヤさせていた。

最低最悪な自分が、『雲母を失いたくない』って言っている。『捨てられても傷つけられても、やっぱり雲母をあきらめたくない』って叫んでいる。プライドの欠片もない最低な自分は、自分を捨てた女を何のお咎めもなく受け入れる気マンマンでいやがる。

そんな最低な自分がイヤでイヤでたまらなくて、最低な自分を思いっきりぶん殴っても、最低な自分は立ち上がる。何度殴っても何度でも立ち上がる。

今の俺に、最低な自分を御する実力は持ち合わせていなかった。


凄まじく憎い、自分自身が。



「…………涼くん?」


スッ


「!」



楓ちゃんの人差し指が、俺の首の、喉仏の部分にそっと触れた。

楓ちゃんは、手も指もとてもしなやかで美しい。指先まで息をするのも忘れそうなくらいの美しさ。しっかり手入れされている桃色の爪もなんて艶かしい。爪だけで男を虜にできそうだ。


しかしその美しい指は、俺の首に突きつけられているピストルとなっている。美しいからこそ冷酷で残酷に映る。

恐怖で動けず、喉をゴクリと鳴らした。



「まさかとは思うけど、あの女とヨリを戻そうとか考えてないよね?」



「―――っ」



近い。神に愛されたとしか思えないほど完璧に整った楓ちゃんの顔が。

真っ暗な瞳で、真顔で俺を捉える。


ギロチンにかけられている気分だった。


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