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彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われました  作者: 湯島二雨
第13章…休日

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おじい様と話しました

 「ふぅ~……」


俺は賢者タイムで世界一無気力で空しい男である。

本当に何やってるんだろうか俺は……正気に戻った時にはもうすでに何度も大量に出していた。回数と量が俺をさらに惨めにさせた。


夜の学校で楓ちゃんの胸の感触を堪能した悩ましい想い出は、長期間俺を狂わせ続けそうだ。



 さっきいた洗濯物が干されていた庭よりもさらに大きい中庭。庭園のようなその庭にある池の橋に、俺は座り込んでいた。


立派な錦鯉が泳いでいる。錦鯉を眺める。

無気力で空しい気分の俺は、錦鯉を眺めることで癒しを得ていた。本当に美しい錦鯉で優雅に泳ぐ姿をいくらでも見てられる。


以前は俺に寄ってきていた錦鯉も今日は全然寄ってこない。俺をガン無視して泳いでいる。エサをくれないと学習したのかな。俺より頭良いかもしれん。ただ単に俺に存在感がないだけかもしれないが。



「おや、どうかしたのかね、安村君」



!!!!!!

振り向かなくてもわかる、いつの間にか俺の背後にいる。

威厳のある声、威厳のあるオーラ。楓ちゃんのおじいさんで中条グループの先代社長の中条賢三さんである。


怖ぇ……背中で感じるだけでも恐怖を感じる。さすが大企業の先代社長、さすが楓ちゃんのおじいさん。楓ちゃんの圧倒的カリスマなオーラもおじいさん譲りなんだろうな。


正直怖くて逃げたいけど声をかけてくださっているのに失礼だろ。俺はそっと振り向いて立ち上がって頭を下げた。



「おっ、おはようございます賢三さん!」


「ああ、そんなに畏まらんでもよい。楽にしなさい」


そうは言っても、頭を下げずにはいられない圧倒的な威圧感なんだ。ほぼ全自動で頭を下げるのはかつて下っ端会社員だった俺の悲しい習性だ。



「池の鯉を見ていたのかね?」


「は、はい」


「奇遇だな、儂も鯉にエサをあげようと思っていたところなんだよ。鯉の世話をするのは儂の役目なんでな」



ああ、確かに賢三さんの手には鯉のエサが握られている。

賢三さんが池に近寄ると、鯉たちがシュバババといった感じで一斉に寄ってきた。賢三さんが面倒を見ているから鯉もそれをちゃんとわかっているんだな。やっぱり頭良いんだ。


賢三さんがエサを投げ入れる。バシャバシャと激しい水音を立てながら鯉たちがエサを食べる。その光景を俺は近くで見ていた。

すごいな、長期間世話してるだけあって強い信頼関係で結ばれていることがよくわかる光景だった。



 エサやりが終わり、池の橋でしゃがみ込んでいる俺のとなりに、賢三さんもしゃがんだ。


エサやりが終わったのにまだここに留まるのかな。誠に失礼だが正直に言うと用が済んだら早く去ってほしいと思ってた。

だって怖い。マジで怖い。悪い人ではないのはわかってるが怖いものは怖い。ちょっと足が震えてくる。


逃げたい。超逃げたい。しかし逃げるのは失礼だ。俺は動けずに賢三さんにビビりまくっていた。



「―――で、どうだね安村君」


「ひっ……! は、はい!」


ヤバイ、ひっ……! って言ってしまった。それだけ怖いんだこの人の声は。ただでさえ怖いのにさらに低く重い声で言われて俺は萎縮しまくった。



「楓とは……うまくやっているかね?」



そうか、孫娘を心配してる感じか。おじいさんなら当然か。孫娘が心配で、俺に対して少しだけ威嚇のような感情を感じる。俺はそれでこんなにビビっているんだ。



「は、はい……楓ちゃんは、俺……あ、いや、僕のような者にもすごく良くしてくれています」


ただでさえビビりまくっているというのに今の俺はすごく後ろめたい感情まで足されている。

おじい様だって一緒に住んでいるんだし話す機会はあるとは思うけど、タイミングが最悪すぎた。今だけはちょっと勘弁してもらいたかった。

ついさっきまでおじい様の大切な孫娘をオカズにズリまくっていただけに、その直後の賢者タイムにおじい様と話すのは精神拷問に近かった。

ズリネタにしてごめんなさい殺してください。


俺はガクガクと震えながら情けない声でなんとか答えた。

賢三さんの目は猛獣のようで、俺は目を合わせられない。怖い怖い。



「キミは、楓のことをどう思っているのかね?」


「っ……!!!!!!」



ものすごく単刀直入だ。回りくどいことはせず、剛速球の直球ですごく答えづらいことを聞いてきた。



「えっと、僕はですね、そのっ……」


好き。好きだ。俺は楓ちゃんのことが好きだ。

しかし俺は恐怖と緊張と不安でまともに答えられない。それに恥ずかしくてそう簡単には人に言えない。楓ちゃん本人に言えたんだから、おじい様にもちゃんと言わなくては……でもなかなか言い出せない。


俺の態度がハッキリせず、賢三さんはさらに表情を険しくした。怖い。



「……楓の気持ちは、わかっておるよな?」


「は、はい! 楓ちゃんはちゃんと伝えてくれました」


「ならば、キミの気持ちはどうなんだね?」


「……その……僕も……好き、です……」


消え入りそうな声だったがなんとか搾り出す様に言った。これは絶対におじいさんには伝えないといけないことだと思ったから。



「……ならば、付き合わないのかね?」


「っ……」


「儂にはわかる、楓はとても不安そうにしている。

楓の気持ちを知っていて、キミも楓のことが好きだと言うのなら、すぐにでも付き合うべきだと思っているのだが、なぜそうしないのかね」


「そ……それは……」



―――元カノのことが、忘れられないから。

あんなにハッキリとフラれたのに、未だに元カノに未練があるから。

元カノのことはもう忘れようとは思っていても、忘れなくてはいけないとは思っていても、なかなか忘れることができない……いや、心のどこかにいる悪い自分が、忘れる気がないから。

忘れようとするのは口だけでうわべだけでしかなくて、あわよくばどこかでまた元カノとヨリを戻せないかと、心のどこかで思っているから。

元カノとヨリを戻した上で、楓ちゃんも手放したくないという最低な考えを持つ自分が、心の中に確かにいるから。



「楓の気持ちに応えるのか応えないのか、ハッキリしない中途半端な時間が長く続くのは好ましくないと思うのだが」


「わ……わかっております」



わかっている。だが今の俺に資格がない。

今のままでは元カノが本命のまま、楓ちゃんをキープしておこうということになってしまう。ダメだ。それだけはダメだ。



「キミは楓が見込んだ男だ。儂もキミのことは信じておる」


「っ……」



なんで、なんで俺なんか信じるんだ? 信じる要素あるか? 俺のどこに、大切な孫娘を任せる信頼性があるというんだ?

見込んだと言われても、バンソーコーを貼ってあげただけなのに。


そこは『貴様なんぞに大切な孫娘はやらん!』って言うところじゃないのか。そう言われた方が俺はまだ楽なのだが。

この期に及んで楽したいという考えがもうダメなんだな、俺は。



「信じてはいるが……もし万が一、キミが楓をキープしようという考えであるのなら、儂は絶対にキミを許すことはできんな」


「―――っ!」



なんか……何もかもお見通しって感じなのだろうか。

本当に楓ちゃんにそっくりだ。逆らえない、ひれ伏すしかない、圧倒的な強者のオーラが。


たぶん、楓ちゃんの師匠でもあるんだろうな、賢三さんは。楓ちゃんの強さの理由がよくわかったような気がした。



「楓は待っていてくれているが、儂の気はそう長くはないぞ」



その言葉を最後に、賢三さんは立ち上がって去っていった。

俺はしばらく立ち上がれず、ぼんやりと池の鯉を眺めていた。鯉たちにも『まだいるよこいつ。いつまでいるんだよこいつ』って思われてるかもしれない。


楓ちゃんを泣かしたら、殺される。その確信があった。強く肝に銘じなければならない。


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