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彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われました  作者: 湯島二雨
第10章…昆虫

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楓ちゃんのクラスに初めて入りました




―――




 この学校で働き始めてそこそこ経つが、今日も俺は雑用の仕事をする。

無能な俺でも慣れてきて、校内の掃除が捗る捗る。



「あ、神様だ」


「神様だ……クスクス」



たまたま近くを通った女子生徒に笑われたが、これもまあ慣れた。いちいち気にしてたらここではやっていけない。

全校集会の楓ちゃんのスピーチで俺のことを認めてくれた生徒もいるが、それはせいぜい3割くらい。他の7割は俺を敵視する生徒と言ってもいいだろう。


スピーチは『安村涼馬は神様だから認めてあげて』というような内容だったんだ。それじゃあバカにされるのも無理はない。


神様だから認めろと言われても宗教の自由もあるし多くの生徒が認めるわけないのは当たり前のことだ。むしろ思ってたより俺を認めてくれた生徒がけっこういて驚いたくらいだ。

納得はしているが気にしないと言えばウソになる。これからずっと神様ネタ擦られるかもしれないと思うとなぁ……



キーンコーンカーンコーン……


あ、授業が終わって休み時間になったみたいだな。



「涼く~ん!」


「あ、楓ちゃん」



休み時間になってすぐに楓ちゃんが来た。

発信器がつけられているから居場所はわかるとはいえ、早すぎやしないか。チャイム鳴り終わってないぞ。動きが速すぎる。



「涼くん、野田先輩や堀之内さんに絡まれたりしなかった?」


「いや、大丈夫だけど」


「そっか、よかった。堀之内さんは同じクラスだしちゃんと監視はしてるけど涼くんが心配だし念のために、ね。他に何かあったらなんでも言って」


「女子生徒に笑われたりすることはたまにあるけどまあ全然大丈夫だから」


「ああ……ちゃんと全校集会で言ったのにまだわかってくれない女がいっぱいいるんだよね……もう一度全校集会で言った方がいいかな」


「いやいいって。無理に認めさせようとすると逆効果だと思うからさ。バカにされるのは仕方ないよ」


「イヤだ。涼くんがバカにされるのはイヤだ」


「楓ちゃんの気持ちは嬉しいよ、ありがとう。でも本当に大丈夫だから」


「うーん……なんとか涼くんを認めさせるように頑張るよ私。

ところでさ、涼くん仕事すごく頑張ってるね」


「え? このくらい当然だよ」


「そんな頑張り屋さんで偉い涼くんのために新しい仕事を用意したよ」


「え、ホントか!?」


なんか仕事が評価されてランクアップしたんだろうか。嬉しい、嬉しいぞ。



「うん、次の授業で私のクラスに来てほしいの」


「え!?」



楓ちゃんのクラスって、2年B組だったよな。雑用の俺はまだ一度も行ったことない。というか教室自体行ったことない。俺は教師でも生徒でもないんだから普通は教室に入る機会はないだろう。



「俺が? 楓ちゃんのクラスに? 行っていいのか?」


「うん、ちょっと来て」


グイッ!


「わっ!?」


腕を掴まれ、強制連行された。




 楓ちゃんのクラス、2年B組の前に来ていた。

今さらながら緊張してきた。女子校の教室とか、俺にとっては未知の空間、禁断の領域。足がすくんで止まる。



「ホラ涼くん、入って入って」


有無を言わさず俺の背中をグイグイ押す楓ちゃん。俺は2年B組に初めて足を踏み入れた。



―――しーん……


ヒエッ……


教室内は休み時間ということもあってそこそこ賑わっていたが、俺が入ってきた瞬間静まり返った。

友達と談笑していたであろう女子生徒も、一斉に俺の方を見る。

ああ、この空気苦手すぎる。涙目敗走したくなる。


まあ、女子校の教室だからな……男がいきなり入ってきたら空気が一変しても無理はないよな。



「大丈夫だよ涼くん。涼くんがここに来ることはクラスのみんなに事前に話してあるから。万が一涼くんに何かしようって子がいたら私がぶっ潰すから安心して」


そう言ってくれる楓ちゃんの存在は心強くはあるが……生徒たちに説明はしてあるとはいっても、生徒たちの本音は『ちょっとイヤだなぁ……』って感じだろ。

受け入れてくれてるっぽい生徒もいなくはないけど、半分以上が俺に冷たい視線を浴びせる。


特に窓際の一番後ろの席に座っている生徒。俺を殺そうとしたヤンキー女子高生、堀之内リリアが俺に殺気の視線をぶつけていた。

派手な緑色の髪だし、態度悪そうな座り方してるし、一番後ろの席でも目立つな堀之内さんは。堀之内さん1人がいるだけで俺は嫌われているんだなって雰囲気がマシマシになっている。


前に働いていた会社の経験で、相手のイヤそうな反応とかに敏感になってしまった俺にはなおさらこの空気は辛い。



「で……楓ちゃん? 新しい仕事というのは……?」


「次の時間生物の予定だったんだけど、担当の先生が足を挫いてしまったらしくてね。だから自習に変更になったの。涼くんには先生の代わりとして私たちを見ててほしいんだ」


「え、俺が先生の代わり!?」


「ごめんね、他の先生も忙しい人ばかりだからさ。自習だし私たちの様子を見張っててくれるだけでいいの。だからお願い」


お願いも何も、俺は働かせてもらっている立場でこれは仕事なんだから断るわけないだろ。決して女子高生を合法的に観賞できるとか考えてないぞ。いや下手に言い訳すると余計怪しいからやめよう。

不安や辛さはあるが楓ちゃんもいるから大丈夫。頑張るぞ。



「まあ、先生がいないんならせっかくだし涼くんをそばに置いておきたいっていうのが私の本音だけどね」


楓ちゃんはそう言って妖艶に微笑み、俺はドキッとしてしまった。

ハッ、いかん。周りに生徒もいるのに楓ちゃんとイチャイチャしてしまった。周りの視線がより冷やかになる。


「チッ」


あ、堀之内さんが舌打ちした。教室静かだからよく聞こえたぞ。



 そしてチャイムが鳴り、2年B組の自習の時間が始まった。

みんな自習を始め、俺は教卓に座る。


俺、今教師みたいなことをしている……教室全体を見渡せるポジションにいるだけで教師になった気分になる。初めての経験に強い緊張感が走る。


さすが名門のお嬢様学校。みんな真面目に黙々と自習している。俺の高校時代は自習になったらみんなうるさく騒いでいたからな。民度の差がえげつない。


まあ、このクラスでも例外はいるっぽいけどな……

堀之内さんは自習の時間が始まってもえらそうにふんぞり返って座る姿勢を崩さず、自習もせずに俺にガンを飛ばし続けている。


注意した方がいいのかな……しかし俺は教師ではない。下手に刺激してトラブルとか起こったら大変だ。楓ちゃんがいるから大丈夫だろうけど生徒に迷惑はかけないに越したことはない。

ていうか単純に堀之内さんが怖くて何も言えない。目も合わせられない。


他の生徒も真面目に自習してはいるがすごく俺を警戒していて『早くどっか行ってくんないかなぁ』みたいなオーラがある。

ああ、気まずい。肩身が狭すぎる……多くの女の子から負の感情を向けられるというのは男にはしんどいんだ。



俺がいる教卓から一番近い席に座っているのが楓ちゃん。一番真ん中の一番前。教師の視線から一番目立つ位置。やっぱり生徒会長でリーダー的存在だからそこの席なのかな。教室の雰囲気に押し潰されそうな俺としては目の前が楓ちゃんなのはラッキーだ。


楓ちゃんもすごく真面目に自習している。真剣に集中している楓ちゃんも可愛い。


あ、楓ちゃんと目が合った。

楓ちゃんはクスッと笑顔を見せてくれた。


……可愛い……

楓ちゃんの笑顔を見れるだけでもどんな激務でもこなせそうな気がする俺は単純すぎるな。


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