楓ちゃんとクリスマスパーティーをしました
俺はコンサートホールから外に出た。
もうすでに真っ暗な夜となっていた。さらに、少しではあるが雪も降り始めていた。
寒いな……すっかり冬だ。
さて、楓ちゃんとすぐに合流しよう。今すぐ会いたい。
スマホでメッセージを交わして、コンサートホールの入口からすぐ近くにあるベンチの前にいるとのことなので直行する。
「涼く~ん!」
天使の笑顔で手を振る楓ちゃん。可愛すぎる。背景が夜とベンチと雪なのも最高に似合ってる。
俺はドッドッドッと心臓を暴れさせながら手を振り返した。
「楓ちゃん、コンサートお疲れ様。最高だったよ」
「うん、ありがとう! すごく緊張したけどすごく楽しかったよ!
……ねぇ、涼くん」
「ん?」
「さっき高井雲母をフってたね」
「あ、知ってたのか」
本当に俺の出来事なんでも知ってるなぁ楓ちゃんは。常に楓ちゃんと繋がってる実感があるよ。
雲母の奴も楓ちゃんがいなくて俺一人の時を狙ってやって来ていたようだが、結局楓ちゃんにもバレてるから全然意味なかったな。
「高井雲母の泣き声がこっちにまでよく聞こえてきたからね」
ああそうか……うるさかったもんなあの女。
「ああ、完全に無視して相手にしないつもりだったんだがあまりにしつこかったんでハッキリ言ってきたよ」
「ふふふっ、そっか」
楓ちゃんは柔らかく微笑んだ。すごく嬉しそうな表情だ。
次の瞬間には、俺の胸に飛び込んできた。
むぎゅっ
密着する。コートを着ててもハッキリとわかるくらい押し上げられた膨らみが俺の身体に押し当てられる。
厚着をしてても柔らかい胸の感触がすごく伝わってきた。
「涼くん……」
「……っ!」
俺の耳元に、彼女の艶かしい唇がそっと寄せられた。乾燥しがちな冬でもぷるんと瑞々しく潤っている唇……俺の脳内に直接届くような距離。
「涼くん、今さらだけど……
私を選んでくれて、ありがとう」
「……!」
そんなの当たり前だろ! 本当に今さらだよ!
―――って言いたい。が、昔の俺は本当に優柔不断で楓ちゃんに悲しい思いをさせてしまっていた。
昔といってもそこまで昔じゃないし。
本当に、本当に申し訳ない。
今まで悲しい思いをさせてしまった分、愛の気持ちを何億倍にもしてお返ししたい。
「―――こちらこそ、俺を好きになってくれて本当にありがとう」
優しく、それでいてしっかりと楓ちゃんの身体を抱きしめ返す。俺の腕の中に楓ちゃんが包み込まれた。
「えへへ……うん。大好きだよ、涼くんっ」
「~~~ッ……!!!!!!」
甘い甘い、愛の言葉が耳元でそっと囁かれる。
楓ちゃんの愛の囁きは俺の脳髄をドロドロに溶かして、蕩けさせた。
寒い冬だが、至近距離で囁かれた耳だけは激しく熱を帯びていた。
冬の夜空と儚く舞い散る雪の中、俺と楓ちゃんはキスを交わした。
長い長い、熱い熱いキスを。
―――
俺たちは中山さんの運転で帰宅した。
楓ちゃんが無事にコンサートを終えたお祝いも兼ねて、中条家ではクリスマスパーティーが始まった。
「おおっ……!」
「どう? 涼くん。ウチのクリスマスケーキは」
「すごい……! こんなにすごいケーキ初めて見た」
とにかくでかい。そしてタワーみたいに高い。
いくつのイチゴが使われているんだ……どれだけの生クリームが使われているんだ。
さすが中条グループ。クリスマスケーキも常識を軽々と超えていく。その気になれば家より大きいケーキも作れるのではないか。
賢三さんや使用人のみなさんも参加して、クリスマスパーティーが始まった。
ローストチキンがすごい。俺はメチャクチャ肉を食う。いっぱい肉を食って筋肉増強する。
楓ちゃんは『着替えてくるから待っててね』と言って現在は席を立っている。そろそろ10分くらい経つだろうか。
「涼くん、お待たせ!」
「! か、楓ちゃん……!」
テーブルの上の食事も豪勢だったが、楓ちゃんが戻ってきた瞬間俺は楓ちゃんに視線を一点集中させて見惚れた。
ミニスカサンタのコスプレをした楓ちゃんが降臨した!
圧倒的な可愛さ、ラブリーさにひれ伏すしかない。
ピチピチな白い太ももと赤いミニスカがすごく似合う。ゆるふわ金髪ロングとサンタ帽子もすごく相性が良い。
「サンタさんの衣装着るの初めてだなぁ。どうかな? 涼くん」
「マジで可愛い……すごく似合ってるよ楓ちゃん」
「あ、ありがとう……」
ちょっと照れてるの可愛すぎる。ちょっと恥ずかしそうに微笑んでいるのも可愛すぎる。世界を浄化させる可愛さだ。
美少女サンタの楓ちゃんが俺のとなりに座る。
そして近い。すごく広い部屋でスペースはいくらでもあるのにすごく距離を詰めて座っている。
俺がちょっと肘を動かしたら豊満な胸に当たってしまいそうなくらい近い。ドキドキする心臓の音も聞かれそうだ。
楓ちゃんと一緒にケーキを食べる時間だ。
「涼くんっ。はい、あ〜ん」
「あ、あーん……」
フォークに刺さったイチゴ。イチゴの上に乗った生クリーム。
甘い甘い楓ちゃんのあ〜んが俺の口元に寄せられて、俺はパクッと食べる。
甘い……甘すぎる……!
甘いイチゴ、甘い生クリーム。そしてミニスカサンタ姿の楓ちゃんの甘々なあ〜ん。
極上で極限に甘くて、血が煮えたぎってシロップになりそうだ。
「おいしい?」
「甘くておいしい」
「ふふっ、どんどん食べてね」
楓ちゃんの甘々あ~んでどんどん食べさせてもらう。
これは……どうしても頬が緩んでしまう。いくらでも食べられる。
糖分をたくさん摂取して、楓ちゃんの愛もたくさん摂取して、莫大なエネルギーに変換していく。
もちろん食べさせてもらうだけではなく、俺もお返しにイチゴを楓ちゃんに食べさせてあげる。もちろんあ~んで。
幸せそうにイチゴをもぐもぐと食べる楓ちゃんが可愛すぎて、視力も強化されていく。
楓ちゃんといっぱいいっぱいケーキを食べさせ合った。
そろそろパーティーも終わりかな。
賢三さんも使用人さんたちも眠りについていた。
起きているのは俺と楓ちゃんだけ。二人で食器を片づける。
「ありがとう楓ちゃん。クリスマスパーティーとても楽しかったよ」
「どういたしまして。でもお礼を言うのはまだ早いよ?」
「ん?」
「私たちのクリスマスは、これからが本番でしょ?」
ミニスカサンタ楓ちゃんは妖艶に微笑む。
俺の心臓と股間が強く脈動した。




