第8話 変態の更新、見られる。
エビキングが矢を射られた時から少し遡る〜〜
〜〜木の上に潜む1人の男がいた。
異様な黒いコートに赤い焔を纏った機械的な弓を構えるその男は、ダンジョン内を偵察しているところだった。
「うむ、やはり比較的歴史の古いダンジョン。なかなか深いな」
私はギルド『黒鳥の集い』の偵察者をやっている。
名前は隠して活動しているが、よく名乗る名前としては、『黒煙』。
黒き闇に潜み、煙のように消える。
この仕事を始めた最初の頃から名乗っている名前だ。
私はここ、『メリオールのダンジョン』の定期的な偵察を行い、ギルドを通じて国々に情報を提供する代わりに、金銭を受け取っている。
「定期確認完了」
私はしっかりとダンジョン内の異変を確認したので、早々に地上へ帰還しようとした、その瞬間だった。
「な、なんだアレは」
私の動揺の理由、それは、変態を目視してしまったことにある。
私のスキルに『偵察者』というスキルがある。
このスキルのすごいところは、透明化している魔物や、隠されたトラップ、魔物の痕跡まで目視で確認することを可能にするというものである。
そんな私の視界に、いつもは透明化した魔物が映るようなシルエットの見え方で人間の姿が見えたのだ。
その人間はどうやら川の方に向かっているようで、変な踊りを踊りながら歩いていた。
「ま、まずい、川に奴が!」
私は驚愕した。
その人間がなんでダンジョン内で透明になって踊っているのかとかどうでも良くなるような事だ。
ダンジョンはある程度人間により調査されている。
このダンジョンは特に歴史が長いため、これほど深い階層であっても出現している魔物はほぼほぼリスト化されている。
そのリストに載っていた、このダンジョンに現れうる最強の魔物。
このダンジョンだけでなく、この世界の情勢にも影響を及ぼしうる存在。
そんな存在のうちの一体、水竜のような影が水中に浮かんでいる。
水竜は水中で寝るという。
あの人間が刺激しなければ良いが⋯⋯。
しばらく見守っていると、あろうことかその人間は透明化を解除した。
「馬鹿者!なぜダンジョン内で警戒を怠るのだ!ここは深層だぞ!」
私は弓を構える。
いざという時は、私が囮になり、奴を逃そう。
目覚めた様子の水竜は、しばらく人間と顔を見合わせているようだった。
「竜の眼光をまともに喰らったか⋯⋯、仕方ない!」
私は弓を射った。
だが、奇妙なことに人間が竜を庇ったようだった。
竜も私に気づいたようで、飛び上がる。
「仕方ない、撤退だ。皆に知らせなくては!」
私は木々の間を飛び跳ね、竜から距離を取る。
竜は水弾を8発同時に発射してくる。
「ウォーターキャノン《上級水属性魔法》の8発同時展開か⋯⋯さすがは竜だ」
私は純粋に感心した。
だが、初めて見る竜の絶技に見惚れる暇もなく、今は殺し合いの場である。
弓を射るとき、少し多めに距離を取っておいたため、私が竜の爪から逃れることはそう難しくなかった。
8話 終わりた____
終了、厨二病。
かっこいいい(グラサン グラサン)