登場人物紹介
◆主要人物
・ルセル・フォン・ガーディア(二度目)
三度目の世界のリームと同一人物で、ルセルとしては回想シーンにて登場。
日本人からの転生者で、現代知識や常識を新たな世界で反映し、『十二の偉業』と呼ばれた改革を行う。
転生にあたり加護を受け、最高階位の五属性神威魔法を行使でき、魔法士としても傑出した存在だった。
もとはガーディア辺境伯家の庶子だったが、内政と軍事面での功績により最終的に辺境伯位を継承する。
最終的には部下の裏切りによって、道半ばで戦場にて斃れる。
・ルセル・フォン・ガーディア(三度目)
ルセルが再転生する際に本人と入れ替わったが、その正体は魂が引き裂かれた本人の一部なのか、それとも他人なのかは不明。二度目のルセルが行った改革や歴史の経緯を知っており、ルセルが受けるはずであった加護や身分を受け継ぐ。
表面上は同一人物として歴史をなぞるよう振舞っていつつ要所要所で独自路線を進め、改革の順番や目的を変えて前倒しするなど、歴史知識を巧みに利用する傍らで冷酷かつ容赦ない一面をみせる。
・リーム(リュミエール・ガイヤーブルグ)
再転生の過程で自分自身と加護を奪われたため、余っていた『適当な』器と加護を与えられ再転生した。
実は二度目でも辺境伯の愛妾フィリスの子供として存在していたが、出産にあたり母子ともに命を落としていたはずだった。
三度目では身寄りのない子供として孤児院に預けられ、当初は自身の境遇とかつての人生に虚しさを感じて、自由気ままに生きる予定だったが、孤児院でかつて愛したアリスと出会ったことで、新しい運命を生きる決意を固める。
◆二度目と三度目に登場する人物
・アリス(アリュシェス)
リーム(ルセル)より三歳年上の少女(女性)。二度目の世界でも三度目の世界でも、ルセル(リーム)に多大な影響を与える存在だが、抱く思いは異なっている。
二度目の世界では、アスラール商会との商談のため社交場を訪れたルセルと出会う。
その際にルセルが行っていた改革の恩返しとして、ルセルに商会との取引が成功するよう後押しする。
アリスの境遇を知ったルセルは、自身の至らなさを思い知るとともに新たな改革を断行すると決心した。
ルセルはアリスより多大な影響を受け恋心すら抱いていたにも関わらず、流行り病で他界してしまう。
三度目の世界では、リームと共に孤児院で暮らす仲間として登場。
幼くして亡くなった弟とリームを重ねて見ており、『お姉ちゃん』として特別な思いを抱いている。
二度目と同様に成長すれば娼館に売られる予定だったが、聡明さを知るリームの導きによって才能を開花させ、リームを支えるかけがえのない存在となり、その後はリームの画策で新たな運命を歩んでいる。
・クルト(クルス)
リーム(ルセル)より八歳年上の青年(男性)。二度目と三度目を通じ、ルセル(リーム)の協力者として活躍する。
二度目の世界では、孤児院や教会のもたらす残酷な世界を憎み、反抗するため教会での地位を固めていた。
アリスの導きによってルセルと出会い、教会や孤児院の改革を断行する同志となる。
目的を達成したのちは教会を代表する神父となり、ルセルが行う改革の担い手となる。
三度目の世界では孤児院時代から登場し、孤児院が始まって以来の秀才として優遇された立場にあったが、既にこの頃から教会や孤児院のもたらす『残酷な世界』を憎んでいた。
当初より孤児院でのリームの行動には疑念を抱き、同志となる人物ではと考え密かに見守っていた。
野外採集を機にリームの協力者となり、新たな思いを秘めて教会へと進み地位を固めている。
・アイヤール(アスラール商会の会長:男性)
ベルファスト王国でも頭角を現していた新進気鋭の個人商会。基本的に弱者の側に寄り添うが、裕福な貴族などからは『ぼったくり』を信条としている。
二度目の世界では、改革を推進するルセルに興味を抱きながら、まだ『覚悟が不十分』と一度は突き放す。
アリスを通じてヒントは残していたものの、結局二人が再び出会い協力することはなかった。
王国全土で起こった民衆反乱には、陰ながら彼の率いる商会が後押ししていたともいわれている。
三度目の世界では、孤児であった僅か十歳のリームと出会い、その思いと見識、財力に驚嘆する。
リームが望む新たな世界に感銘し、以後は盟友として商会を挙げてリームを支える。
アスラール商会もリームとの取引で多大な恩恵を受け、二度目の世界を遙かに凌ぐ急成長を遂げ、王都の大商会と肩を並べる存在にまでなっている。
・バイデル(男性)
ガーディア辺境伯に長年使え、最終的には文官のトップである家宰に任じられていた辺境伯の懐刀。
本人だけ主君の密命を受け、二度目も三度目も密かにルセル(リーム)を助ける。
二度目の世界では、ルセルの父親である辺境伯から密命を受け、時折ルセルを訪問し彼の思いを後押ししていた。
ルセルが辺境のトゥーレに追いやられた時も、自身の思いと先代辺境伯の願いを叶えるため、職を辞して彼に同行した。ルセルが十二の偉業を成し遂げたのも、バイデルの助力があってのことだった。
三度目の世界では、二度目と似た動きをしつつも既にそれなりの知見と地位を固めていたルセルに対し、一歩引いた立ち位置で対応していた。
そのためか彼の心は先代が託した『もう一つの願い』に傾いていた。
ルセルが行う表面上の善政のなか、いち早く彼の冷酷な影の部分に気付き、忸怩たる思いで過ごしていた。
リームと出会ってからは、先代のルセルに対する思いは既に果たしたと割り切り、かつてのマリアやフィリスの思いを受け継いだリームを、全力で支援していくと決心する。
・アンジェ(修道女)
リームより十歳年上の孤児院出身者。
非常に優秀だったことから卒業後は教会へと進み修道女となった。
もともと十二歳までは孤児でもなく市井に暮らしていたため、他の孤児たちと違い一般常識がある。
そのためか二度目と三度目も教会や孤児院の姿勢には疑問を抱き、クルトの協力者として孤児院の闇を暴こうとする。
二度目の世界では、ルセルとクルトの行った改革により、再建された孤児院の院長に就任する。
その折、ルセルとも会って挨拶を交わしているが、その後は深く関わることはなかった。
三度目の世界では、年齢差のすれ違いにより孤児院でリームと面識はなかったが、彼の行った孤児院改革の煽りを受けて窮地に立つ。
しかし孤児たちから孤児院内での味方と認識されていたころから、彼らの願いを受けたリームにより救われる。
・ガルフ
元々は魔の森の里に住まう獣人族の戦士で、『力こそ正義』が信条の獣人たちをトゥーレの町で取り仕切っていた。
二度目と三度目で立ち位置が大きく変わってしまったが、ルセルに対し敵意を抱き対決するという点では、何一つブレていない。
二度目の世界では、獣人に対する融和姿勢を見せるルセルの施策を良しとせず、獣人の誇りに背くと言って逆らい妨害を続けていた。最終的には魔の森に住まう獣人たちを焚き付け、餓狼の里の獣人たちと共に乱を起こしルセルによって討伐された。
三度目の世界では、リームと出会い訝しがりながらも彼の依頼を受け、その顛末を確認するため自らフォーレの開発に参加していた。
その過程でリームの有言実行と本意を知り、やっと自身のわだかまりを納得させ、ヒト種の彼に仕えることを決心をした。
・ザガード(男)
トゥーレの裏町を根城に、ゴロツキたちを集めて裏町を力で抑えていた『アモーレ』の元締め。
ただアモーレは実力者たちの共同体であり、同じく所属するガモラやゴモラとの上下関係はない。
アモーレにも知られていない裏の顔は、義賊を自称する盗賊団の首領。
二度目の世界では、最終的にルセルによって討伐され、最後は仲間を助けるように願い死を選んだ。
三度目の世界では、リームによってアモーレの中でも裏の顔を露見させてしまったが、紆余曲折ののち仲間となる。
信条として『愛』を拗らせており、対面したリームを幾度も辟易とさせたが、出会って以降は盗賊稼業から足を洗い、別の形でトゥーレに『愛』を施している。
・アーガス
元々は裏町でザガートの配下だった青年。
驕った者たちから財貨を奪い、貧しい者たちに分配するというザガートの言葉に応じ、義賊として彼の配下に加わっていたが、ずっと『誇りを持った生き方』を望んでいた。
二度目の世界では、ルセルに捕らわれたあと犯罪奴隷として兵卒に志願し、彼と同様に裏の世界に生きてきた者たちを率い、精強で命知らずの軽騎兵部隊をまとめあげた結果、後に許されて将となった。
最終的にはルセルを支える四傑と呼ばれた将軍の一人になるまで栄達し、恩人であるルセルを常に親しみを込めて『旦那』と呼び敬愛していた。
三度目の世界では、リームの言葉に応じて自らの意思でザガートの配下から抜け、リームに仕えるようになった。今はフォーレに移住して精強な兵を育てあげ軍事力の増強することに貢献している。
・四傑(四人のうち三人は現時点でプロローグのみ登場)
二度目の世界での仲間になった経緯を記した回想とともに、三度目の世界でも順次登場する予定
◆リーム関係者
◇孤児院
・マリー(マリアベル)
孤児院で育てられていた、リームよりも五歳年上の少女。
本来なら最下級の勤労待遇に甘んじていたが、リームが行った教育に参加し一気に才能を花開かせて上級待遇にまで上り詰めた。孤児院の冷酷な対応には反感を抱いており、同時に自分たちへ救いをもとらしたリームには並々ならぬ感謝の気持ちを抱いている。
感謝の気持ちと優秀な目でリームを見つめ続けていた結果、年齢にそぐわない彼の言動や行動力に惹かれ、リームの内面を窺い知って恋心を抱くようになった。
今やリームを支えるかけがえのない存在。
・カール(カーディアル)
孤児院で育てられていた、リームよりも五歳年上の少年。
リームが盟友としたクルト・アリス・マリーの三人に次いで信頼されている仲間で、極めて身体能力に秀でていたことから、将来は教会直属の騎士となることを嘱望されていた。
三人以外では、公式の場以外でリームと対等な言葉で話す数少ない仲間。
・アルト
孤児院で育てられていた、リームよりも四歳年上の少年。
カールより次代の採集班リーダーに指名された人物だが、戦闘能力ではクルトやカールには及ぶべくもなく、それは本人も自覚し『最弱のリーダー』と自身を揶揄している。
ただそれでも常に努力を続け困難からは逃げない彼の姿勢は、同じ孤児院の仲間からも評価され信頼されている。
・レノア
孤児院で育てられていた、リームよりも四歳年上の少女。
アリスやマリーが子供たちのまとめ役として次を託したほどの人物で、人望があるだけでなく冷静な判断ができる非常に優秀な人物。失踪事件の際も残った仲間から『レノアが居るから滅多なことにはならない』とまで言われ、非常に信頼されていた。
・キロル
孤児院で育てられていた、リームよりも三歳年上の少年。
細かい機転が利く少年で、失踪事件の際は危急を告げる合図を出したり、その後にアンジェを救う契機を作り、集団脱走でも周到な準備でリームたちを陰ながら支えた。
フォーレに移住後はアスラール商会に志願し、今は見習いとしてアイヤールの下で働いている。
・院長
長年に渡って孤児院を仕切っていた老婆で元は教会出身であり、教会上層部お共に悪事を働く元凶。
孤児院という隔離された世界の中で、間違った常識を教えて孤児や働く修道女たちを洗脳し、残酷な世界を作り上げていた首魁のひとり。
不正に入手した財貨をせっせとため込んでおり、冷酷な守銭奴。
二度目も三度目も、最終的にはルセルによって弾劾され、刑に服すことになる。
◇トゥーレ
・ガモラとゴモラ
トゥーレの裏町で解体屋を営む兄弟で、二人とも筋骨隆々で強面の大男。
噂好きの兄ガモラと段取り上手な弟ゴモラは、多少の性格の違いはあってもよく似ている。
解体が趣味という危険な部分もあるが、基本的に情に厚く義理堅い性格で裏町では共に顔役となっている。
リームに対しては、当初こそ莫大な報酬で珍しい仕事を依頼してくれる『お得意様』だったが、いつしか『敬愛する人物』へと評価を進化させており、今やリームを支える重要人物となっている。
・レパル
ウルスと並び、初期段階からリームを敬愛し仕えることを望んでいた獣人族の若き戦士。
当初はガルフの下で燻っていたが、リームの言葉を聞き働きたいと率先して志願した。
獣人に誇りを与えてくれたリームに感謝し、その誇りにかけてフォーレを守ると誓っている。
今はフォーレに住まう獣人のリーダー格のひとりになっている。
・ウルス
レパルと並び、初期段階からリームを敬愛し仕えることを望んでいた獣人族の若者。
ヒト種にさらわれた妹を取り返すため、ガルフを頼って配下になっていたが、リームの言葉を聞き働きたいと率先して志願した。妹を取り返してくれた恩人のリームに対し、心からの忠誠を誓っている。
今はフォーレに住まう獣人のリーダー格のひとりにになっている。
・サラ
リームより二歳年下の獣人族の少女でウルスの妹、アリスやマリーを姉のように慕っている。
奴隷として売られていたところをリームに救われ、今はフォーレで兄のウルスと幸せに暮らしている。
幼いながらリームには並々ならぬ恩を感じ、それを返すためにフォーレで奉仕活動や勉学に勤しんでいる。
・ハッサン
裏町で主に買い取りを行っていた仲介人。
その商いは手広く、盗品や入手経路が不明なものでも値段次第では買い取っているため、クルトや後を引き継いだリームが度々カッコたびたび)エンゲル草を売っていた。
ある時より危険な兆候を感じたリームが手を引いたため、以降の消息は不明。(フォーレには来ていない)
・ガラベル(奴隷商)
貧民街にて奴隷商を営む商人だが、利に聡く抜け目のない部分も多い。
一度ならずアイヤールからは手痛いお仕置きをされており、アスラール商会には頭が上がらない。
・コージー
リームとは砂金採取の際に知己を得る。孤児たちに親身に接し、初めて会ったリームを理不尽な隊長から庇うなどの対応をみせていた。
後に出世し、百人の兵を率いる隊長になっており、たまたま城門警備を担当していたときは、孤児失踪事件に気付き、わざわざ孤児院に遣いをやって知らせていた。
◇ガーディア辺境伯家
・アマール・ブルグ・ガーディア
リームやルセルの父親であり、先代のガーディア辺境伯。
バイデルの評価によれば、柔軟な思考を持った優秀な領主であるが、唯一の欠点は恋多き方であること。
正式に妻とした三人の貴族令嬢の他に幾多の愛妾を囲っていたが、その後始末は全てバイデルが行っていた。
なお公式には嫡出子として七人の子供がり、それ以外に非嫡出の子供たちが複数いるが、当人とバイデル以外はその詳細を知らない。
・マリア
ルセルの母親で、元々は王都で文官をしていた優秀な官僚だった。
辺境伯に見初められた後は、未利用植物の有効利用や新規開拓地の造成、領内の無駄を省き税制を見直すなど、辺境伯領の善政に貢献し領地を豊かにすることに貢献した。
同時期に見初められ、極めて仲の良かったフィリスと協力し、陰ながら辺境伯の善政を後押しした。
ルセルが二歳の時に流行り病によって死亡。
・フィリス
リームの母親で、元々は借金奴隷として売られ辺境伯家でメイドとして仕えていた。
辺境伯に見初められた後は、領民に寄り添った施策や獣人たちを慮る施策を提案するだけでなく、家中の弊害を取り除く提言を行い、辺境伯の心を癒すだけでなく、館で働く者や領民たちに寄り添った施政を行うよう後押しした。
彼女の出産を妨害する勢力から逃れる過程でトゥーレに流れ着き、リームを出産する際に命を落としていた。
(嫡出子たち)
・長兄
ガーディア辺境伯家の長男で、伯爵家から嫁いだ正妻の長男。リームより九歳年長で陰湿で猜疑心が強く、嫉妬により自身より優秀な者を排除しようとする。
・次兄(※注)
ガーディア辺境伯家の次男で、男爵家から嫁いだ妻の長男。リームより八歳年長。
・三男(※注)
ガーディア辺境伯家の三男で、子爵家から嫁いだ妻の長男。リームより七歳年長。
・四男
ガーディア辺境伯家の四男で、伯爵家から嫁いだ正妻の次男。リームより五歳年長。
・長女
ガーディア辺境伯家の長女で、伯爵家から嫁いだ正妻の娘。リームより六歳年長。
・次女
ガーディア辺境伯家の次女で、子爵家から嫁いだ妻の娘。リームより五歳年長。
・三女(※注)
ガーディア辺境伯家の三女で、男爵家から嫁いだ妻の娘。リームより三歳年少。
(※注)
次章(第五章)にて登場し、ルセルやリームとの関わりが明らかに……。
◇その他
(プロローグにのみ登場)
・主神
リームは適当神と命名し、教会の神殿ではぞんざいに扱ったが、後に感謝するようになり扱いは変わった。
・女神
リームにより駄女神と認定され、神殿ではぞんざいに扱われる。後の扱いは少しだけ変化しているかもしれない。
(第一章と間話4に登場)
・叔母
フィリスの妹でリーム曰く薄幸の美人顔らしい。
孤児院の『残酷な世界』を知らず、良かれと思って甥を託したが、孤児失踪時間を機に『真実』を知り、日々後悔に苛まれていた。
後に成長したリームによって救われ、現在はフォーレの食堂で働く傍ら、積極的に孤児たちの世話をしている。
・屑男
裏町の一角に住まい、借金奴隷だったリームの叔母を買い取ったとされていたが、実は賭けに買ってタダで手に入れていた。
最後まで屑っぷりはブレることなく、リームとザガートによって断罪された。以降の消息は不明だが、日々借金の返済に追われて苦しんでいるらしい。




