「第97話」連休
美雪も厄介な問題が解決しホッとした。ゴールデンウィークはみんなで植えたメロンの世話とおばあちゃん達に世話の仕方を教えることに費やした。
彩菜の父は仕事のため夫婦で帰っていった。佳代も町内の仕事があったため彩菜の両親の車に便乗した。
大輝は美雪の実家でのんびり過ごす。
長老「しかし、他の食物より手がかかるのう。」
彩菜「その代わり高値で売れるからね。」
美雪「でも今年は今までの3倍は規模がデカいから受粉も大変よ。」
さよ「受粉って。。何をどうするの?」
彩菜「ああ。つまり。赤ちゃん作るの。いい男のモノを、さよさんのここに。。」
長老「彩菜!お前。例えが悪いだろう。」
さよ「メロンさん。気持ちいいの!」
長老「も〜。どうするんじゃ。彩菜。」
彩菜「ちょっと反省した。後でお母さんに説明頼むわ。」
美雪「あっ!言い忘れてた。さよさん。たぶん生理くるわよ。」
さよ「えっ!私に生理。本当?なんか嬉しいな。」
彩菜「最初は嬉しいかもしれないけど。厄介よ。」
彩菜の祖母「だいたい作業終わったなら、私は昼ごはんの支度してくるよ。」
美雪「あとは雑草取るだけだね。昼前にみんなで終わらせて、売れた分は収穫したから昼からは発送作業をしましょう。そういえば彩菜の家の畑は?」
彩菜「建築終わるまで入れないの。危ないからダメって。年末か来年からね。」
草取りを終えて昼食を食べると、彩菜はさよに生理の対応を教えた。
さよは大人になったようで嬉しそうだ。
長老「おーい。さよ。」
さよ「はーい。」
長老「さよ。お前は人間界で過ごすのか?」
さよ「年齢差も気にしないで良くなった。勉強も好き。。私は妖怪村で生活するより人間界で過ごすほうが生き生きと過ごせる。だから、未来は分からないけど、今は人間界。正確には今の仲間達と暮らしたい。やがて愛する人が出来たら、その人と。。妖怪でも愛したら、妖怪村でいい。結婚してからは、こだわりはないです。」
長老「さよ。お前は掟を破っている。もちろんわしもじゃがな。足が治ったならば村の役員に許可をもらう必要がある。」
彩菜「ねえ。温泉が完成したらみんな働きに来る許可が出てる。やがては許されることじゃない?」
美雪「戸籍がないから役員には出来ない。2人は温泉建設になくてはならない存在と言ったら?」
彩菜「でもね。他の妖怪と違って、この家に住むのは、やがて不公平感が出る可能性あるわね。」
美雪「登録上役員にはなれないだけよ。社内では役員や役職につけばいい。社内規定を作る時に掟のように決めてしまえばいい。妖怪の世界は大ざっぱだけど掟はあるみたい。妖怪は人間より掟には忠実な印象がある。」
さよ「当たり前よ。掟破りは殺される。」
美雪「それなら2人では行かせられないわ。私と彩菜も行く。必要なら私達は姿を消す。」
さよ「危ない時に助けるってこと?そんな事態になってから登場したら、温泉で働く話も無くなりかねない。行くなら姿を消すのはダメよ。」
美雪「さよさんは。。表向きでは監査役としましょうか。」
医師「すまんな。ウナギ持って来たんだが、結果的に立ち聞きしてしまった。」
長老「別に構わんぞ。私らの仲間には重要なことじゃ。結論出たら伝えるつもりじゃったよ。」
医師「それなんだがな。ずっと考えていたんじゃ。。あのな、さよさんはあまりにも優秀だ。だから年明けから考えていたんだが、わしは大きな病院にもパイプがある。身内が全くいない若い年齢で亡くなる女性は時々いる。そういう人が出た時に、その人間に成り代わることは出来る。だが掟破りってやつになるがな。仲間のためならな。。」
彩菜「つまり。。その人は死なずに治った形式ってこと!ねえ、もし見つかったらどうなるの?」
さよ「医師の資格は取り消されるでしょうね。法的には。。微妙ね。戸籍の不正取得にもならないから。罰する法はないかも。。身代わり殺人でもないしね。倫理的にどうって話は別として。」
医師「わしは温泉に集中出来るから医師の資格剥奪されても構わんが、相手の先生に迷惑がかかるかもしれない。亡くなったらすぐに私の病院に移して、死亡判定はわしがやればいい。もちろん死亡しないんじゃが、火葬とかはコネで上手くやるし、しっかり葬儀はするつもりだ。ただ、そんな話は限られた人にしか出来ないからな。もちろん亡くなりそうだって話はお前達にはしないぞ。聞いたら治してしまうからな。」
美雪「それは先生しか出来ないわね。。あのね。みんな治したら国に殺されるわ。徹底的にオープンにするか隠蔽するしかない。けど、オープンにしたら毎日行列になる。温泉経営出来なくなるし、幸せにならない。そうか。。その方法なら、さよさんは正式に人間になれるのね。役員登録も可能になる。さよさんにはマイナスにはならない。いい方法だとは言えないけどね。」
さよ「そういう人が現れた場合は。。誰も不幸にならないのなら、お願いしたいです。あと、私、弁護士さんと戸籍を作る方法を考えてるの。出生届け出されず捨てられた子が相談に来たということにして。今検討中なの。」
彩菜「だったら、そちらのほうがクリーンじゃない。」
彩菜の祖母「横文字は使わないで。長老が分からないわ。」
長老「彩菜の家系は失礼じゃな。分かるわい。わしも勉強しているからな。コンプライアンスとか。分からない時は聞くさ。ワン・フォア・オール、オール・フォア・ワンってやつじゃな。」
美雪「あら!おばあちゃんも戸籍必要じゃない?」
長老「いらんよ。もう残りは30年もないじゃろう。彩菜のおばあちゃんと同じくらいで死ねそうだし、文句なしじゃ。」
医師「確かにそちらの方法のほうが罪悪感はないな。。先に弁護士さんと動いてくれないか。無理な場合はわしが動く。ウナギは夜だな。温めて食えよ。」
先生は帰って行った。
美雪「夕ごはん得したね。まず妖怪村に行ってから発送作業しようか。」
彩菜の祖母「気をつけて行っておいで。私は部屋で箱詰めしてるわ。」
妖怪村に行き、説明すると役員はあっさり許可した。先生の貢献や、最近の妖怪村の安定のおかげだろう。
美雪「なんか、全く問題なく認められたわね。何にも言うことなかった。」
長老「まあ。根回しもしてたからな。」
彩菜「村長さん。足驚いてたね。」
さよ「みんな。。私なんかのために。。ありがとう。」
こんなに大切にされた経験はなく、ずっと辛さに耐えてきたさよは号泣する。さよを優しく抱きしめる彩菜の祖母。
彩菜の祖母「みんな家族だよ。妖怪とか血が繋がらないとか関係ないからね。」
彩菜「おばあちゃん。私達は発送してくるわ。さよさん頼むわ。」
彩菜の祖母「大丈夫だ。気をつけてな。」
発送を終えて戻ると、いつの間にか全員集まっていた。彩菜が母にさよの性教育を頼んだためでもあった。
さよはスマホでDVDの映像を見せられて、恥ずかしいくらい興奮している。続いて彩菜の母は愛について話をする。愛している時の身体の特徴を教え、最後に出産の映像を見せる。
すごく刺激的だったが、真剣に愛した人としかしないというのは妖怪の認識と差はなかった。ただ、楽しむ行為というのは初めての感覚だった。
さよ「お母さん。妖怪は繋がったら、すぐに出る。一分もないらしい。受けたら妊娠って。さっきの全然違う。。」
彩菜の母「それは。。つまらないわね。恐らく妖怪は油断したら死が待っている。子孫を残す目的のみに変わったのかな。」
さよ「あの。。やっぱり、気持ちいいの?」
彩菜の母「愛する人となら。きっとこの世で体験する一番の快感ね。だから幸せなのよ。AVみたいなのは気持ちいいでしょうけど、別格の快感までにはならないと思う。愛がないからね。人間は贅沢よね。性を楽しむの。」
さよ「出産は苦しいのよね。」
彩菜の母「ものすごいわよ。ただ、苦しいけど信じられないくらい幸せなの。まあ、いい人見つけなさい。」
彩菜の母とさよが合流すると、遅くなってしまったため、宴会兼夕食になってしまった。先生は予想していたのか、ウナギはしっかり全員分はあった。
さよは、あまりに嬉しかったのか、性教育の影響か分からないが、初めて完全に酔っぱらうと惜しげもなく裸を披露してしまう。
弁護士「おいおい。ヤバい身体と顔のバランスだな。。こんなのあり得ない。。誰もが奥さんにしたいだろうな。。」
佳代「よほど嬉しかったのね。今日の男達はラッキーね。ちょっと!あなた!いつまで見とれてるのよ!明日は町内会あるから帰るわよ。」
大輝「引っ越す話するんだったな。そういえば村でも呼ばれてるんだ。明日は忙しいな。しかし。。さよさんはヤバいな。。これはたまらないな。ああ、母さん怒るから私達は帰るよ。」
彩菜の父「私達はこちらに泊まるか。明日は休み出した。しかし、さよさんは系統は違うが母さん並のインパクトだな。」
彩菜の母「そう。。だったら負けてられないわ!」
なんと!彩菜の母も裸になる。
彩菜の父「うわー。な、何してる。」
弁護士「いや〜。前からすごいとは思ってたが。。これは圧巻だな。。」
医師「すごいな。。」
長老「お、おい!美雪はやめろ!刺激が強すぎる。」
彩菜の父「あのー。この2人は。。長老来る前にまあまあ見せてるよ。」
長老「なんじゃと?女の子がはしたないことはやめなさい。彩菜、減るもんじゃないって言うなよ。」
彩菜「あら見事な先制パンチね。おばあちゃん腕上げたわね。美味しいウナギも食べたし、美雪とお風呂はいろ。」
美雪と彩菜は全裸になって風呂に向かった。
長老「こらーっ!」
彩菜の父「目の前でパンツまで脱いでいいわけないだろー!」
医師「ねえ、お父さん。こんな身体を見て、妹としか見てなかったの?馬鹿だねー。」
弁護士「本当。それな。」
彩菜の父「いえ。初めて見たから妹じゃなくなったんです。我慢出来ますか?」
医師「んー。納得だ。血が繋がっててもヤバいかもしれないな。。」
弁護士「んー。法的に問題あるが。。確かに。この身体の妹。。法が間違いだな。」
彩菜の祖母「ちょっと!全員やりすぎだよ。着なさい!着ないなら私も脱ぐわよ。」
彩菜の母「お母さん。ごめんなさい。」
さよ「えっ!私。。すみませんでした。」
彩菜の祖母の一言で一気に酔いも覚め、みんな服を着た。楽しい宴は続いていった。
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結果的には、弁護士さんとゴールデンウィーク明けから積極的に動き、両親共に不明ということで日本国籍も持たない状態であったため困難と思われたが、弁護士さんの熱意もあり『家事審判申立』によって、さよは弁護士さんの養子となり、6月末に正式に日本国籍と戸籍を取得することが出来た。




