「第92話」両親
ゴールデンウィーク初日、美雪と彩菜の家族は美雪の実家に到着した。
彩菜の両親と美雪とさよは、すぐに妖怪村に向かった。
彩菜の父「へー。これが長老の家か。。意外といい家じゃないか。」
さよ「妖力で建てたらしいわ。人間の家の技術を使ったみたいね。」
彩菜の母「妖怪って。。まあまあ人間と見た目変わらないわね。」
美雪「火炎小僧!ちょっと。」
火炎小僧「お久しぶりです。今日はどうされました?見たことない方が3人も。どちら様?」
彩菜の父「彩菜の父です。娘が世話になっております。」
火炎小僧「とんでもない。何回助けられたか。世話になってるのはこちらのほうです。」
彩菜の母「彩菜の母です。」
火炎小僧「わざわざご両親が。。もう1人の方は。彩菜さんの妹ですか?」
さよ「お兄ちゃん。久しぶり。」
火炎小僧「は?誰?」
美雪「本当に馬鹿ね。。さよさんだよ!」
火炎小僧「。。。えーっ!。。。いや。。。」
さよ「お兄ちゃん。1番目になってもいいわよ。ただし、2番目、3番目が人間になるのを認めてくれるならね。」
火炎小僧「いや〜。綺麗だけど妹にしか見れないな。。考えてみる。けど、良かったな。足治ったんか!本当に良かった。」
火炎小僧が泣きながら抱きしめる。
さよ「お兄ちゃん。。ありがとう。私、しばらく長老と人間の世界で過ごすわ。」
火炎小僧「そうか。足が治ったなら、今まで出来なかったことを思いっ切りしてきな。応援するよ。」
さよ「ありがとう。今日は死者の村に行ってくるの。お父さんとお母さんに足が治った報告。」
火炎小僧「それは喜ぶと思うよ。村の入口までついていくよ。」
火炎小僧は虫を火でやっつけながら死者の村まで見送った。
さよは初めて死者の村に入った。彩菜の両親も問題なく入れた。
美雪「ねえ。火炎小僧っていいヤツじゃないの。さよさん1番目にするべきじゃないかな。」
さよ「妹なのね。それを感じた。今結論出さなくていいし。」
4人で雪の家を訪ねる。彩菜の母とさよは挨拶すると両親のもとに向かう。
彩菜の母「雪さん。むちゃくちゃ綺麗ね。美雪さんも綺麗だけどなんか別格だわ。」
さよ「雪は妖怪村では私と同じで不幸だった。幸せそうで良かったわ。でも美雪さんはもっと大人になったら雪より綺麗になりそうね。あっ!ここだわ。」
さよが扉をノックする。
母「ん?どなた?」
彩菜の母「あの。私は知り合いですが。さよさんです。」
母「えっ?さよ。あなた歩けるの!」
さよ「お母さん。足を治してもらったから来ました。」
母「あなた!ちょっと!」
父「何?ん?さよか?」
母「足治ったって。友人の方も一緒よ。」
父「お二人とも入って下さい。」
部屋に通される2人。
彩菜の母「あの。お酒を2本持ってきました。お召し上がり下さい。」
父「雪って。。この間の騒ぎの時に飲んだな。びっくりするくらい美味しい酒だった。ありがたい。」
母「あの。どのような関係ですか?」
さよ「私をこんなに綺麗にしてくれた方。彩菜さんのお母さん。」
父「えっ。あの火炎小僧のひどいケガを治した治癒妖力のお母様。。」
彩菜の母「私は何もしてないし、あの時は来てませんから。私が出来るのは料理くらいかな?良かったらお昼作りますから、親子の会話楽しんで下さい。」
彩菜の母は台所で食材を見ながら料理を始めた。
母「綺麗な化粧だね。お前には苦労かけたね。足が治ったなんて。。あなた。。」
父「お前には申し訳ないことをした。」
さよ「仕方ない。2人のせいじゃないわ。今は美雪さんや彩菜さん。あと長老と人間の世界で暮らしてるの。私、人間と結婚したいなって。」
父「ずいぶん不幸だったのだから、自分の思う通りでいいさ。幸せならいいんだ。」
母「もしかして彩菜さんに治してもらったの?」
さよ「彩菜さんでは治せなかったの。美雪さんが黒妖力で治してくれた。5ヶ月かかった。」
父「美雪さんが。。あの方の妖力は凄まじいな。あんな力は妖怪では初めてらしいぞ。」
さよ「頭もすごくいいの。」
母「私達の後悔を美雪さん達が消してくれたのか。。本当にありがたいわね。」
父「さよ。お前の人生はこれからだ。時々教えてくれたら嬉しいな。しかし。今日はいい日だな。気持ちが明るくなった。」
彩菜の母「お待たせ〜。さよさん。運んで。」
さよ「はい。」
さよが料理を運ぶ姿に、母は涙が溢れた。
父「本当に良かったな。」
さよ「彩菜のお母さんの料理すごいんだよ。食べましょう。」
父「頂きます。」
母「ん。。すごいわー。こんなもの主人に食べさせたら私の食べなくなるわ。」
さよ「やっぱ、美味しい。」
彩菜の母「調味料で誤魔化してるけどね。醤油、ソース、塩、砂糖、胡椒を持ってこれるだけ持ってきたから使って下さい。」
母「あの。良かったら作り方を教えて下さい。」
彩菜の母「もちろんです。台所に行きましょう。」
母「はい。」
さよは父に抱きついた。父は頭を撫でる。
父「親らしいこと出来ないうちに死んだからな。ごめんな。本当に。足まで。。」
さよ「私、幸せになるために来たの。幸せな姿見せないと辛いでしょう?私ね。畑で野菜作ったり。法律やお金の計算の仕事してるの。いっぱい勉強して結婚して。。美雪さんの温泉の後継者にならないといけないの。だからたぶん人間と結婚すると思う。もちろん、まだ相手もいないけど。。頑張るわ。今まで動けなかった分も取り返さないと。」
父「長く禁じられてきた人間との交流か。。人間は悪いと聞いたけどな。」
さよ「私。人間の世界見たけど。悪いヤツもいるみたいだけど。。妖怪村みたいに妖力が強いとかじゃないのよ。愛が一番なの。友人も親子も。愛なの。」
父「妖怪村も昔はそうだったそうだ。いつの間にか。。そうか。人間は悪いとは言えないな。」
さよ「あのね。私、勉強したけどね。お金稼ぐ額で国に税金取られるの。昔人間に騙されたって話は勘違いなの。妖怪は税金ないからお金少ないだけで、むしろ多かったのよ。妖怪の勘違いなの。」
父「そうなのかい。妖怪はとんだ過ちをしたんだな。さよが変えていく使命があるかもしれないな。」
母「あなた。どう?」
さよ「お母さん。綺麗!やっぱ彩菜さんのお母さんの才能すごいなー。」
父「どうした。。すごい変わり方だな。」
さよ「いやなの?」
父「いや、最高じゃないか。。」
母「彩菜さんのお母さんに教わったから、夜は私が作るわ。」
母の作る料理は文句なく最高だった。4人で酒を飲み、酔ったさよのかわいさに両親は驚きながら4人で一緒に眠った。
彩菜の母は3人の幸せな姿を見て、幸せな気持ちになった。
朝食を用意していると彩菜の父と美雪がやってきた。
彩菜の母「あら。どうしたの?ごはん食べる?」
美雪「あと2時間だから来たの。お父さん。食べて帰ろうか。」
彩菜の父「そうだね。」
父「いや、これは彩菜さんのお父さんですか。毎日美味しい料理とは幸せですね。美雪さん。すごい妖力でしたな。尊敬します。」
母「わざわざどうも。いろいろ頂きありがとうございます。食事食べていって下さい。急がないと手ちぎられますし。」
さよ「おはよう。お母さん。あれ違う理由らしいの。1日以上いると生きている者は死ぬらしいのよ。」
父「そうなの!それはマズいな。」
さよ「美雪さんが気づいたの。」
美雪「死者が生きている世界で死ぬと消滅するから、そちらのほうが更に厄介です。」
母「だから、あいつと外で戦ったの!」
美雪「そういえば、あいつどうしたのかな?」
父「よく泣いてるらしいよ。」
美雪「本来なら消えるべきことをしたのだから、もう少しあのままね。また村長と相談するわ。」
彩菜の母「さあ。食べましょう!食べたら帰りますね。」
全員「いただきます!」
父「いや〜。美味しいなー。」
母「本当に。妖怪って食べるのにこだわりないから。。けど、美味しいって幸せね。」
さよ「でしょう?」
彩菜の父「さよさん。スマホ。3人並んで。」
母「何?」
さよ「笑って。」
彩菜の母「まあ。いい写真じゃない。」
さよ「素敵。思い出になったわ。お父さん。お母さん。見て。」
父「うわー。すごい。時間を切り取れるんだ。。」
美雪「なるほど。。その考え方は素敵ね。次来る時に印刷して渡したら?」
さよ「そっか。。そうね。次持ってくるわ。」
美雪「30分切ったわね。さよさん。そろそろ。」
さよ「うん。お父さん。お母さん。また来るね。」
母「身体に気をつけてね。」
父「幸せになるんだぞ。」
さよ「うん。ありがとう。」
さよの両親の家をあとにして入口に戻る。
美雪「クズ妖怪。どう?いい気分でしょう。」
妖怪「助けてくれ。お願いだ。」
美雪「んー。まだ反省足りないわね。またね。少し食事減らすわ。」
妖怪「そんな。。助けてくれ〜〜。」
門番「あなたは手ちぎれないな。」
美雪「1日経ってないでしょう。あの妖怪どう?まだダメだと感じたけど。」
門番「封印室にいた時もあんな感じでした。」
美雪「よし。次来た時に姿消して解除するか。もし暴れたら消し去るわ。帰りますね。」
門番「ん?まさか。。さよか?すごいな。」
さよ「バレた?いい女でしょう。」
門番「足治ったのか。良かったな。」
さよ「えっ。ありがとう。」
美雪「帰りますね。」
長老の家から美雪の実家に戻るとみんなが昼食を食べている。
長老「美雪。おかえり。食うか?」
美雪「朝食食べたばかりだから。。夜まで我慢する。彩菜のお父さんとちょっとまとめたいし。」
彩菜の祖母「さよ。両親とはどうだったんだい?」
さよ「すごく幸せだった。でも。。ちょっと不思議だった。」
長老「何がだ?」
さよ「門番が、足治って良かったなって笑ったの。。妖怪村ってあんなことなかったのに。。」
長老「彩菜のばあさんの愛じゃな。妖怪村も良くなるかもな。」
さよ「私、草取りしてくるわ。」
晴れやかな気持ちで畑作業するさよ。瞳からは幸せの涙が溢れた。




