「第9話」買物
野菜の収穫も終わり、次第に寒さを感じるようになった。美雪も大きな病気をすることもなく2歳を迎えた。冬の準備のために純一と雪は美雪を連れて、街に買い出しに出掛けた。
雪は初めて見る巨大なスーパーに興奮している様子だ。
雪「うわー。。でっかいなー!」
純一「行こうか。」
美雪をベビーカーにのせるとスーパーに入って行った。雪は不安気に純一の腕につかまる。
純一「どうした。怖いのか?」
雪「ねえ。じろじろ見られてる。。やっぱり妖怪ってバレてるみたい。」
純一「違うよ。雪。さっきから見るの男ばかりだろう?つまり、君があまりにも綺麗で見とれてるんだよ。」
事実、そう滅多に見ない美人で、スタイルも良い。男が見とれるのは当然なのだろう。
雪「えっ!は、恥ずかしいよ。。」
純一「そうか?綺麗な奥さんだ。いいだろう!って自慢だけどな。」
雪は妖怪がバレてないと聞くと安心し、いろんな商品を興味深く見て、純一に説明を受ける。
雪「ねえ。これ何?」
雪は下着コーナーでブラジャーを指指す。
純一「ああ、おっぱいの形を良く見せる下着というか。。良く知らないけど、走ると揺れて痛いだろう?そういうのを減らしたりするんだ。」
雪「そうなんだ。。つけないほうが楽ちんじゃないかな。」
純一「雪はおっぱいが大きいからだよ。小さい女性は大きく見せたいだろう?」
雪「どうして?」
純一「男にモテるからじゃないかな。。人間の世界は見た目も大事なんだ。そればかりではないけどね。」
雪「ねえ。純一はおっぱいが良かったからなの?」
純一「まさか。僕は雪の優しさに惚れたんだよ。もちろん初めて雪のおっぱい見た時は、すごいと思ったけど。僕は雪の全てが好きなんだ。多分、人間って好きな人の身体が一番好きなんだと思う。大きいとかじゃないと思う。雪を愛して学んだんだけどね。」
雪「うわー。かわいい。」
雪はペットコーナーにさしかかり、ウサギを見ている。
純一「確かにかわいいな。。でも、ウサギって噛みつくからな。美雪がいるから危ないよ。」
雪「ウサギって食べる物だと思ってた。飼うんだ。。」
純一「人間も食べるよ。僕は食べないけど、ソーセージとかに入っているみたいだから食べてるのかな。人間は残酷な生き物だ。動物を殺して食べるんだ。大切な命を奪うから、感謝して食べるんだよ。」
雪「そっか。。私、何にも考えずに食べてた。。そうよね。ウサギだって家族いるもんね。。考えたことなかった。。何か悲しいな。」
純一「感謝して食べるしかないさ。雪、それは植物だって同じさ。家族はいる。もしかしたら話をして幸せに過ごしているのかも知れない。それは確かめることは出来ない。けど、動物であれ植物であれ、殺しているんだ。命に重い軽いなんてないと思う。」
雪「そうね。本当にそう。真面目に考えたら、何も食べれない。死ぬだけね。複雑だけど納得するしかない。」
純一「赤ちゃん用の店だ。雪、美雪の服を買おうか。」
雪「うん。うわー。かわいいのいっぱいある。」
2人は時間をかけて服を選び、再び歩き始める。
雪「ねえ。この店はなあに?何かうるさいわね。」
純一「ああ、CD屋さんだ。音楽を売ってる。」
雪「音楽が売れるの?形がないものがお金になるの!」
純一「ああ、いい曲がサンプルであるな。」
純一は雪にヘッドホンをつけると再生ボタンを押す。純一が車で流している曲だ。まるで目の前で歌っているようだ。雪は感動している。
雪「すごい!これは確かにお金を払う価値あるわ。欲しいな。」
純一「持ってるよ。いつでも聴けるよ。」
雪「そうなのね。いろんな音楽あるのね。」
純一「これなんかクラシックと言って。。そうだな。、
300年くらい前に作られた音楽だよ。」
雪「すごい。ずっと残るんだ。。人間って想いを大切に残すんだね。妖怪の世界とは違うな。。」
純一「妖怪の世界は知らないけど、違う形で大切なものは残っていると思うよ。」
雪「ねえ。隣はもしかしたら本を売ってるの?」
純一「その通り。えーとね。。これなんか1000年前くらいかな?それくらい前に作られた物語だよ。」
雪「すごい!お婆様より昔だ。すごいわね。」
純一「雪。何か食べようか。」
雪「うん。何を食べるの?」
純一「好きなもの選べばいい。」
3人でフードコーナーに向かって行った。