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妖女 美雪  作者: ぴい


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「第77話」さよ

 美雪の家に来た2日目の土曜日は各自別行動になった。


 美雪の一家は家の補修や片付けをした。長老と美雪が妖力をフル活用して床や柱も直した。

 彩菜の一家は図面を見ながら駐車場やフェンスのイメージ。畑の場所決めをしたようだ。年明けには住宅の契約を正式に結ぶことになった。


 日曜の妖怪村が朝早いこともあり夜は珍しくみんなで外食をして休肝日となった。




 翌日曜の朝から美雪、彩菜、長老、先生の4人は妖力村に向かい。残りの人は弁護士さんの畑の整備を手伝った。



 移動装置で妖怪村に行くと、広場に向かう。


 先生と彩菜は妖怪を診察し治療する。先生が症状を聞き、彩菜に治し方を伝えると彩菜は次々と治療していった。


美雪「彩菜。ペース早いわよ。おばあちゃんと2人でも追いつかない。サプリのほうがいいかな。」

長老「いや〜。すごく疲れる。サプリのほうがいいぞ。」


 サプリに変えると彩菜のペースに追いついた。


 火炎小僧も一生懸命手伝い。妖怪を上手く整理して効率良く進み夕方になる前に目処がついた。

 火炎小僧は美雪に忠実に従う。


 美雪はふと視線を感じた。


美雪「おばあちゃん。あれ誰よ。さっきから睨んでるんだけど。」


長老「ん?ああ。あれは。。さよ。」


彩菜「何で睨んでるの?」


長老「さあな。あの子は生まれつき足が悪くてな。」


彩菜「だったら何故治療に来ないの?私、行ってくる。」


 彩菜はさよの所に行く。


彩菜「さよ。何故治療に来ないの?」


さよ「私。。私。美雪さんなんかに負けないもん。」


彩菜「なんだ?ちょっと〜火炎小僧。」



火炎小僧「はい。。彩菜さん。どうしました?」


彩菜「さよさんは何故治療しないの。」


火炎小僧「ああ、さよ。ごめんな。俺の背中に乗りな。先生のところに行こう。」


さよは真っ赤になり「うん。」とおんぶされる。



 さよは美雪に目も向けず通り過ぎる。


美雪「私、何か気に入らないことしたかな。。」

彩菜「あれはジェラシーってやつよ。火炎小僧のライバルってことみたい。」


美雪「は?火炎小僧が好きってこと。。へー、かなりの変わりものね。」


長老「火炎小僧はな。さよを妹みたいに可愛がっているからな。。そうか。。しかし、火炎小僧は本当にバカじゃな。」


先生「おーい。彩菜さ〜ん。」


彩菜「は〜い。」



先生「これは右足の膝の骨がおかしいな。」


彩菜「分かったわ。」


さよ「ち、ちょっと。私、美雪さんの力には頼らないもん。」


火炎小僧「さよ。お前何を言ってるんだ!美雪さんはお前を治してくれるんだぞ!」


さよ「だって。だって。弱いし。。胸も小さいし、可愛くないけど、私負けないもん!」


火炎小僧「お、お前。。。」


長老「わしがやる。それならいいんだろう?」


さよ「まあ。それなら。。」


火炎小僧「さよーっ!お前は何様のつもり。。う、うわーっ。」


 美雪の風妖力で火炎小僧が吹き飛ぶ。



火炎小僧「な、何するんですか!」


美雪「バカ!鈍感!」


火炎小僧「お、俺が悪いの?」



彩菜「あれ?治らない。。何で?」


先生「ん?本当だな。。もしかしたら。。先天性だからかな?これが普通。つまり身体が病気ではないと思い込んでいるんじゃないか?さよさんはご両親は?」


さよ「もういない。私1人。」


先生「ちょっと村長〜。」


村長「はい、いかがなされました?」


先生「さよさんをわしの病院に連れて行きたいんじゃが。検査しないと治し方が分からない。」


村長「そうですねえ。。まあ、他の人間に見つからないなら構いませんが。」


先生「さよさん。病院で調べようか。」


さよ「うん。」



 先生の病院に着くとレントゲンを撮る。


美雪「どう?」


先生「右と左で骨の形が違うな。だが原因箇所が鮮明に写らないから、はっきり分からない。」


彩菜「装置使えば?」


先生「それしかないか。まだ実験してないからな。」



彩菜「私は、さよさんのそばにいる。」


先生「美雪。装置に入ろう。」



 先生が起動して、足の中にカメラを入れる。


先生「良く見えるな〜。やっぱ、これすごいな。。なるほど。右足は左足と違って骨を受ける部分が内側に変形してる。だから、足が曲がらないんだよ。擦れると痛いだろうな。」


美雪「ねえ先生写真撮れるの?」


先生「ああ。大丈夫だ。。今印刷するよ。」


印刷した写真を見せながら先生が「ほら。ここから内側に曲がっているだろう?関節の可動を妨げてる。だから足が曲がらないんだ。」と説明する。


美雪「つまり、ここを外側に曲げたらいいの?」


先生「ああ、そうだ。他は左右で違いがない。ただな、簡単には曲がらないぞ。力加えすぎたら折れる。」


美雪「どうしたら。。」


先生「そうだな。。ゆっくり時間かけて引っ張るのかな。広げ過ぎると脱臼するようになる可能性もあるし。。なかなか難しいな。」


美雪「手術は?」


先生「これを手術で治せる技術がある医師はいないだろうね。本来ならこれは治らないよ。」


美雪「妖力で磁石みたいに引っ張るのは?」


先生「出来るかもね。力加減が分からないな。説明するから出ようか。」



 先生がさよさんに説明する。


さよ「そう。。やっぱり治らないのね。」


先生「いや。美雪さんの妖力なら可能性はある。」


彩菜「あのね、さよさん。美雪は火炎小僧は男としての興味はないの。」


さよ「でも毎日。美雪さん。美雪さん。って。。」


先生「さよさん。人間と妖怪では歳の取り方が違う。だから、火炎小僧は美雪さんでは幸せにならないよ。そもそも美雪さんは火炎小僧には興味ないんだぞ?」


美雪「火炎小僧はあなたが幸せにするのよ。まず足を治さないと。」


さよ「だって。私なんかで美雪さんに勝てるはずがないもん。綺麗だし。妖力だって。。私すごく悲しくて。」


美雪「バカね。さよ。私よりあなたのほうが火炎小僧を愛してるじゃないの。私は愛で負けてるわよ。」


さよ「だって。妖力が負けてたら。。」


美雪「そんな時代はもう終わらせたよ。彩菜がね。愛が強いヤツが一番なの。火炎小僧も変わったでしょう?」


さよ「美雪さんは。。火炎小僧は愛してないの?」


美雪「そうだな。。お母さんみたいな愛はあるかな。ただそれだけよ。」



彩菜「さよ。美雪しか治せないよ。諦めるの?」


さよ「分かりました。お願いします。」


美雪「いい?写真の丸の部分の関節の骨を時間かけてゆっくり曲げるから。妖力で引っ張るわ。痛い時は言って。やったことないから、引っ張る力が分からない。あなたの感覚を聞きながらしか出来ないわ。」


彩菜「磁石みたいに骨を外から引っ張るのね。先生。木の板か何かあてがわないと、皮膚側に穴が出来るんじゃない?」


先生「おお、確かにそりゃそうだな。彩菜さん、外科医の才能あるんじゃないか?」


美雪「じゃあ、やるわよ。一番曲がっている箇所を一番強く引っ張るから。だいたい20箇所くらいを同時に引っ張るわ。」


先生「美雪。先に固定するよ。」


美雪「いい。妖力入れるから。痛い時は言ってね。」


さよ「あっ痛い!木をあててるところが痛い。」


美雪「そっか。そっちが痛いか。。ん〜〜。黒の妖力で足の周りをガードする。その上に木をあてがいましょう。。あれ?木は要らないか。先生、妖力板の上下をぐるぐる巻きして。。固定出来たわね。じゃあ妖力入れるよ。」


さよ「あっ。」


美雪「痛い?」


さよ「痛くないけど、引っ張られた感じがする。」


美雪「これで様子見ましょうか。あまり動かないほうがいいから。。私の家に泊まる?長老と一緒に生活して。」


彩菜「もしもし。お父さん。大至急先生のところに来て。」



彩菜の父「どうした。」


彩菜「妖怪村のさよさんよ。美雪の家までおんぶして。」


彩菜の父「えっ!ああ。分かった。」



美雪「先生。おかしいと思ったら電話して。再来週から冬休みだから来るし、緊急の時は学校休むから。」


先生「分かった。」


彩菜の父「あっ!そういえば。。皆さん、ごはんですよ。」

佳代「美雪。町内会あるから、私達帰るからね。」


美雪「分かった。忘れてたわ。私達、昼も食べてないよ。」


彩菜「そういえばそうね。行こうか。」



 みんなで美雪の家に向かうと食事になった。


美雪「おばあちゃん。さよさんが治るまで一緒に生活して。痛い時はすぐに先生に連絡して。先生。毎日骨の具合チェックして下さいね。」


先生「分かった。0.1ミリ単位で変化は記録するよ。あのカメラなら出来る。」


彩菜の父「すごいな。レントゲンだとその精度は不可能でしょう?」


先生「不可能どころか、レントゲンでは治療箇所すら明確にならなかった。それに毎日レントゲン撮ったら被爆量がマズいから。」



長老「なあ美雪。先生のところ行く時に移動装置使っていいか?移動は出来るが姿消すのは移動装置しか出来ない。」


美雪「まあ。空飛べるから使えるわよね。いいわよ。帰る前に練習しましょう。」


彩菜の母「今日はみんな疲れたから鍋よ。」



弁護士「いいじゃない。これは相当いい肉使ったなー。」


彩菜「うわ。うま。。」


美雪「さよさん。取ってあげる。」


さよ「ありがとう。。うわ〜。な、なんて美味しいの!」


長老「さよ。妖怪村では絶対に秘密だぞ。毎日こんなものじゃ。」


さよ「すごい。。知らない世界だわ。」


 食事を終えると、彩菜の家族も一足先に慌ただしく帰って行った。


長老「何かみんな忙しそうじゃな。」

彩菜の祖母「12月は年末が休みだから、いろいろ予定が入るからね。毎年そうよ。」


美雪「おばあちゃん。私も教えたら早めに帰るわ。」


長老「分かった。」



 おばあちゃんは大して教えなくても装置は使えた。


長老「これは簡単だな。大丈夫だ。」


美雪「必ず扉閉めてからよ。それだけは気をつけて。」


先生「電話して患者がいないの確認してから来て下さいね。」


美雪「すぐに帰るけど、毎日。様子は見に来るわ。」



長老「分かったぞ。さよ。飲むか?」


さよ「はい。」


美雪「えっ!お酒飲むの?梅酒しかダメでしょう。」


長老「さよは一応歳上だぞ。」


美雪「うそ!全く見えない。へー。すっごい童顔なんだー。。あっ、いけない。帰るわ。」



さよ「美雪さんだけで帰って大丈夫?どうやって帰ったの?」


弁護士「ああ、自宅と隣の部屋の移動装置が繋がってるからな。一瞬だよ。」


医師「お待たせ。今日は熱燗の雪からだ。」



さよ「うわ〜美味しい。雪ってお酒なんだ。。ぴったりな名前ね〜。」


弁護士「何かいいね。こんなに若い子がぐいぐい飲むのは。雪も綺麗だったけど、違う良さがある。」


長老「実はな。酔うと妖怪一かわいいぞ。雪より上だ。お酒の席では人気者だ。」


先生「長老。高いのいく?」


長老「是非。」


さよ「なにこれ、すごい!」


長老「だろう?だがな、すごい高い酒じゃ。」



 さよの飲みっぷりと酔ったかわいさも手伝い、宴は夜遅くまで続いていった。



 さよは長老と彩菜の祖母と一緒に寝る。


 さよは思った。何よ。人間っていい人ばかりじゃない。聞いた話と全く違うわ。私、美雪さんに謝らないと。妖力より愛か。。簡単には頭が切り替わらないな。

 私、長老がこんなに楽しそうなの初めて見たわ。


 雪は幸せになったんだな。。すごく可哀想だったのに。良かったわね。いい人生になったんだね。


 あれ?涙。。何故?悲しくないのに。。不思議だわ。


 心がいっぱいになると、さよは眠っていった。


 

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