「第7話」暑さ
今年も雪の苦手な夏がやってきた。
雪「暑いわ。妖怪村はこんなに暑くなかった。」
純一「今日は暑いね。じゃあ今年初めて入れるか。」
雪「う、うん!」
純一はエアコンのリモコンを押すと、たちまち涼しくなった。雪は人間界に来て、初めて体験したクーラーが大好きだった。
農作業も一段落したため、涼しい部屋でのんびり美雪と過ごす雪だった。
純一は1人で街に買い物に出掛け、帰宅した。
純一「雪。体力落ちてるみたいだから、ウナギ買ってきたよ。」
純一が食事を用意すると雪と一緒に食べた。
雪「美味しい!ウナギって。。こんなに美味しいの。。」
純一「食べたことないんだ。。」
雪「妖怪村にはいっぱい川にいた。けど、あんなものを食べようとする者はいなかった。すごいなー。お婆様に食べさせたら喜ぶだろうな。。」
あっという間に全て食べてしまった。
食後、美雪に授乳していると、純一が「雪、終わったら花火やろうか。」
雪「何?花火?それなあに?」
純一「雪。庭においで。」
純一は雪から美雪を受け取り、抱き抱えるとベビーカーにのせた。
雪に花火を持たせると、ロウソクの炎を近づける。
花火にが火が着くと、シューっという音とともに鮮やかな赤色の明るい光が飛ぶ。
雪「わー。きれい。。」
花火は、あっという間に終わってしまった。純一は次の花火を持たせると火を着ける。
雪「あっ!緑色だ。。きれい。。」
雪は子供に戻ったように無邪気に花火を楽しむ。
美雪は、じっと見つめている。
全て花火が終わると火が消えたのを確認して、部屋に戻った。
純一「さあ。お風呂に入ったら寝ようか。」
雪「うん。今日は、楽ちんで、美味しくて。。楽しかった!」
純一「それは、雪が喜んでくたみたいで良かったよ。」
お風呂を出ると、雪が「暑いから裸になる。」と服を脱いだ。
純一「雪。今日からエアコン入れたから着なさい。」
雪「だって、暑いんだもん。」
純一「脱いだら寝れないよ?」
雪「どうして?あっ!あ〜ん。。」
純一「寝れないって言ったよね?」
雪「寝れなくて大丈夫だから、お願い。やめないで。愛してる。」
2人は愛情を伝え合うと、純一は疲れ切って眠ってしまった。
暑さと興奮で寝付けない雪。
花火きれいだったな。。火や光を楽しむ。人間の考え方は素敵だわ。
でも、ウナギを初めて食べた人って誰なんだろう。すごいな。あんなもの食べようと思う人がすごいな。。お婆様なら長生きだから、初めて食べた人を知ってるのかな。。ああ、妖怪村でウナギ食べないのだから、知らないわね。お婆様に作ってあげたら、きっとすごく喜ぶだろうな。。
お婆様だけは、私に優しく、厳しかった。。
ごめんなさい。お婆様。
ねえ。お婆様。私、こんなに幸せになっていいのかな。。
純一。いっぱい愛してくれてありがとう。たぶん。。私、妖怪村の中で一番幸せ者だと思う。
そういえば、新しい地下の村は出来たのかな?私はあの中では妖力が足りないから生きられなかったと思う。人間界に来るしか生きられなかった。でも、どうしても生きたい気持ちはなかったのよね。
私は、一度だけでもいいから愛されたかった。この幸せを知ることが出来て本当に良かった。
愛するって。。素敵なことだわ。妖怪村にはほとんど無い考え方。あのままの妖怪村では地下に移ったとしても幸せは来ないわ。みんな気づいて。
優しく、純心な気持ちは決して失わない雪だった。