「第65話」旧友
彩菜のおばあちゃんを美雪の実家に残し、彩菜と美雪の家族は自宅に戻った。
長老「久美子や。幸せに過ごしたのか。」
久美子「そうね。それなりにね。最後におばあちゃんと会えて良かった。幸せなんだと思うわ。おばあちゃんと寝るのは久しぶりね。」
長老「しかし、彩菜といい美雪といい、並じゃないぞ。すごい2人じゃよ。」
かつての仲良しの2人は幸せな眠りになったようだ。翌朝から一緒に畑仕事に精を出す。
長老「おお。ナスが売れたらしい。久美子。収穫だ。」
久美子「どうやるの?」
おばあちゃんは久美子に教えながら、ナスを箱詰めした。
お茶を飲み、ひと息つきながら話す。
長老「ナスが終わるとしばらくは収穫がない。冬支度だ。こちらは寒いからな。」
久美子「ほうれん草とかあるんじゃない?」
長老「聞いてみるわい。けど、ここは冬は結構厳しいからな。」
佳代「ねえ。おばあちゃん達。ごはんどうする?彩菜のお母さんが作るって言ってるけど。」
長老「ん?行く!食べる!久美子や移動装置を使うぞ。」
彩菜の祖母「楽しそうね。東京タワーの時よりワクワクするわね。」
長老「あのな、東京タワーは無理って言ったのに、お前さんが。。」
彩菜の母「ちょっと。お母さんが言ったの!ほんとに無茶して。。」
長老「今なら行ける。新しい飛び方を美雪に教わったから妖力は足りる。」
佳代、彩菜の母「ダメ!」
4人で移動装置で大輝の家に向かう。
彩菜の祖母「すごいわね。便利だけど混乱するし緊張するわね。」
彩菜の母「おばあちゃん達、座って。さあ食べましょう。」
彩菜の祖母「やっぱり1人で食べるより楽しいから美味しいな。」
長老「料理がそもそも上手いからな。」
佳代「あらら。おばあちゃん。お世辞まで言うようになったの?」
結局2人は大輝の家で午後は過ごした。
美雪「ただいま。あっ、おばあちゃん。ナス運んでくれたんだ。ありがとう。」
彩菜「発送してきましょう。これで収穫は大根と玉ねぎまでしばらくお休みね。」
長老「彩菜のおばあちゃんがほうれん草はどうだって。」
美雪「虫が食べるのよ。」
彩菜「ねえ。ビニールハウスも虫も妖力使えば簡単じゃない?」
美雪「あのね。畑はなんか妖力使いたくないの。自然に任せたいというか。。それに人が食べるから、危険なことは避けたいの。たぶん問題ないのは分かってるけど、なんか抵抗あるのよね。」
彩菜「美雪の気持ちがそうなら、やめましょう。」
美雪「でもほうれん草はチャレンジしてみましょうか。あと、あそこ川が近いから栄養が土に入る気がするからジャガイモ挑戦してみようか。」
彩菜「そうね。せっかく広くなったから実験する畑も作ってもいいかも。」
お母さんとおばあちゃん達が夕食を作っていると、大輝が彩菜の父と一緒に帰宅する。
2人は部屋で大輝と彩菜の父が温泉施設や会社買収の話し合いを行っているようだ。
彩菜と美雪は高校3年生の勉強を始めたため、しばらく勉強の割合が増えている。
佳代「全員集合!ごはんよ。」
夕食を食べると再び、各自の作業にもどる。
おばあちゃん達と佳代と彩菜の母は夕食の片付けをすると話をし始めた。
彩菜の祖母「私も空飛びたいな。」
長老「飛べるんじゃが、皆と約束してのう。人前で妖力使うのは禁止なんじゃよ。美雪なら出来るけど、勉強の邪魔は出来ない。土曜日曜なら美雪が飛んでくれるかもしれない。」
彩菜の祖母「なんで美雪さんは人前で妖力使っていいんだい?」
佳代「美雪だけは、姿も気配も消せるのよ。」
彩菜「お母さん。ジュース。でもね、初めておばあちゃんの家に行った時に、おばあちゃん気づいたわよね。何で?」
長老「何と言うか。。匂いというのかのう。。いつもと違う妖力を何となく感じたんじゃ。恐らく、村の他の者には分からないじゃろう。」
彩菜「おばあちゃん。村の妖怪と話し合いしたの?」
長老「それがのう。。役員すら。なかなか抵抗があるみたいなんじゃ。美雪の力を借りないと無理かもしれない。役員が抵抗するのだから、村の者はもっと難しいと思う。」
彩菜「空飛ぶ件と合わせて美雪に伝えるわ。ジュース持ってくね。」
美雪は、長老の話を彩菜から聞くと、作戦を考えることにしたが、とりあえず金曜日までは勉強に集中して、土曜に村のことを考え、日曜に先生と畑の相談することにした。
夜になり、それぞれの家に戻って行った。
長老「温泉というものはすごいのか?みんながずいぶん熱心じゃが。」
彩菜の祖母「関東北部しか温泉はないの。この辺りには全くない。わざわざ向こうに行かなくても近くに温泉出来たら、人がいっぱい来るわよ。価格が安すぎるとは思った。向こうの温泉に泊まったら、もっと高いわよ。他が作れないなら、かなり儲かると思うわ。」
長老「妖怪の力が必要なのか?」
彩菜の祖母「私達以外は妖怪なら、かなり必要じゃないかな?100部屋が3階分でしょう?毎日500人とか来るわ。食事500人分よ。布団500人分を干したりする。掃除も。」
長老「それはわしらだけでは不可能じゃな。妖怪村の者も必要じゃな。ただ、お金で争いが始まらないかと。」
彩菜の祖母「50年前とは違うわ。今はスマホでボタン押すだけで買えるし、届けてくれる。温泉施設で買って届いたら村に運べばいい。姿を見せなくても買える。」
長老「電気は?」
彩菜の祖母「それはさすがに無理じゃないかな。人間と同じ生活が幸せとは限らない。妖怪村には妖怪村の良さがあると思う。ただ、人間の文化が入るのは防げない。危険なものは禁止するしかないかもしれないわね。美雪さんと一緒に考えたら大丈夫よ。あなたがずっと悩んでたことを2日で解決したんでしょう?大丈夫よ。それにあなたはもう村長じゃない。気楽にいけばいい。ダメなら人間界に住むだけ。あなた村人とも仲良くなってるじゃない。あなたなら大丈夫よ。」
長老「相変わらず久美子はすごいのう。お前はわしの不安をいつも取ってくれた。再び会えてこんなに嬉しいことはないよ。さあ。気分も軽くなったし、寝るとするか。」
彩菜の祖母「そうね。幸せだわ。。おやすみ。」
彩菜の祖母も長老と一緒に住む生活は夢のようだった。こんな毎日が来ることは想像していなかった。昔にはもう戻れないけど、残りの人生はおばあちゃんとは離れないと固く誓って眠った。




