「第5話」悩み
赤ちゃんが生まれ、懸命に子育てする2人。ある夜、純一が相談する。
純一「なあ雪。雪のお婆様に報告に行くほうがいいと思うんだが。。」
雪「。。。」
純一「どうした。何故黙っている。」
美雪を撮影していたスマホを置き、雪は話し始める。
雪「あのね。妖怪村に人間が入るのは許されないの。前も言ったけど、人間は見つかったら殺される。私はあなたを、つまり人間を助けた。だから、私も同じなの。妖怪村に行くということは、2人とも。。いや、もしかしたら美雪すら。。。」
純一「世話になったお婆様に報告したかったけど、不幸になるなら仕方ないな。」
雪「お婆様は、あの村で圧倒的な妖力を持つお方。私達が行くと、お婆様の村長としての立場も無くなってしまう。それに、たぶんだけど。お婆様は、私が人間界に行ったことを把握してるはずよ。お婆様だけは妖力の跡で追跡出来る能力を持っているわ。けど、あの時は車で移動したから、恐らく。。ここまでは追跡出来ないでしょうね。だから、お婆様は理解してると思う。お婆様は、私が妖怪村では愛されることもない者だと分かってた。もし、お婆様が人間の世界に行ったことを認めてなかったら、今ごろ私達はどこにいたとしても妖怪達に探し出されて殺されてたはず。だから、私達はお婆様に認められてるの。確かに美雪をお婆様に見せたいわ。でも、それは、お婆様が危険になるから出来ない。死んだら報告したらいいわ。」
純一「そうか。お婆様に会いたいな。。死んだら会えるのか。不思議だな。。なんか死ぬのが怖く無くなったよ。」
雪「前も言ったけど妖怪の世界では死はあまり意味を持たないの。死者が集まる場所にはいつでも行ける。」
純一「そうなのか。。」
雪「あなたには妖怪の血筋が刻まれてしまったから、妖怪の世界にも行けるし、人間の世界にも行けるのかも知れない。ただ、人間にも死後の世界があるのかは、誰も知らない。」
純一「雪と永遠に一緒にいれるのなら、僕は妖怪の世界を選びたいな。」
雪「それは、その時に決めればいいわ。私はあなたに幸せを与えてもらえた。こんな日が来るなんて想像してなかった。だから、死んだ後まであなたを縛るつもりはないの。今、幸せになれたら十分幸せよ。」
純一「雪は優しい。こんな子が幸せになれないなんて、おかしいと思う。」
雪「妖怪村に次第に人間が迫っているからなの。昔は妖力が一番ではなかったらしいわ。そんな世の中になったから純一と。。だから良かった。」
雪「どうやら、美雪は成長が人間と同じみたいね。私のように成長の時間が長くない。美雪は人間界で生きていくほうがいいわね。どのみち、妖怪村にはいけない。美雪の妖力は封印するわ。」
雪が不思議な光を放つと、美雪の身体に光が吸い込まれた。
純一「普通の人間になったのか?」
雪「私の封印では力が足りない。美雪が大人になった時、つまり、生理が始まり身体が完全に大人になる頃に、身体の変化に耐えられず、妖力の封印の効果は壊されてしまう。だから、それまでに妖力を理解させないといけない。ただ、半分は人間の血筋。私より妖力は小さいと思う。もしかしたら妖力はないのかも知れない。それは、封印が解けた時にしか分からないわ。」
純一「雪は頑張りすぎだ。ゆっくり休みなさい。すごく疲れているのが分かるよ。」
雪「私は、人間より体力はある。農作業しても疲れない。ただ、今封印で妖力を使ったから、疲れただけ。寝たら回復するわ。あの。。あと、あなたに愛されると一気に回復するの。。あなたの愛が回復させるみたい。不思議なの。聞いた話だと妖力使い果たすって。あなただと逆なの。」
純一「そうなんだ。。回復するなら、どちらがいいんだ?」
無言で裸になり、恥じらう雪。
純一は雪を愛し、雪は一気に妖力を回復すると、幸せそうに眠りについた。
純一は、雪の今までを知りたかった。もっともっと愛情を注ぎたかったからだ。だが、妖怪村に行けないということは、それを知る術はないということを意味することを理解した。




