「第2話」妖力
雪は毎日毎日、妖力を上げるために修行する。徐々に力はついているが、依然として村では圧倒的な最下位だった。
しかし、雪はお婆さまの言いつけを守り、一生懸命努力した。
あれから2年。雪は川の一部を凍らせることが出来るようになった。
雪の修行を、食材探しのついでに立ち寄り見る長老。
長老「ほう。。雪、ずいぶん成長したな。まだまだじゃが、この川を凍らせることが出来たら、みんなに追いつける。あと10年あれば、もしかしたら。。じゃが時間がない。いつ人間が来るか分からない。引き続き精進しなさい。」
雪「お婆様。。はい!」
一緒に家に歩きながら帰る。雪は長老に初めて褒められたことが嬉しかった。
長老「雪や。氷の妖力はな。完成したら火や風なんか比べものにならないくらい強いんじゃ。妖力としては、もうかなりのものになっている。争いに巻き込まれると厄介だ。他の奴らには見せるなよ。そのまま誰にも知られず精進しなさい。」
雪「はい。お婆様。今日は、私がお食事作ります。」
長老「おお。そうかい。じゃあすぐに帰ろうか。雪、掴まれ。」
長老は空を飛び、一気に家に帰った。
雪「お婆様はすごいな。私も出来るようになるかな。。」
長老「はっはっはっ。それは200年くらい努力したら出来るかもな。いいかい雪。この技はな。氷の妖力、風の妖力、火の妖力。この3つを極めて、更に修行しないといけない。今の村では妖力の2つすら極めた者はいない。まずは氷の妖力じゃ。」
雪「そんなに極めないといけないのですか。。私には想像出来ない。」
長老「伊達に長生きしとらんよ。これが出来たのは、主人と2人で考え出したからじゃ。だから、今まで2人しか出来ない。主人がいなくなった今は、わしだけじゃ。そうだ。お前にこれをやろう。いつか役に立つかも知れない。秘伝じゃ。じいさんと2人で作ったんじゃ。空を自在に飛ぶ術や一瞬で移動する術などを書きとめてあるんじゃ。」
雪「こんな大切なものはもらえないよ。」
長老「この技はお前にしか教える気はない。飛ぶだけじゃなく、一瞬で別の場所に行ける。だが、妖力はもちろん。それぞれの技も極めて初めて出来るんじゃ。お前以外が知ったら、悪いことに使う。逃げることも、近づいて攻撃することも意のままじゃ。もっとも誰も出来ないがな。」
雪「お婆様。。あの綺麗な月にも行けるの?」
長老「一瞬で移動するのなら行けるさ。じゃがな。行ったら死ぬぞ。昔人間と付き合いがあった時に聞いたのじゃ。月には空気がない。たちまち身体がバラバラになるそうじゃ。」
雪「そうなの!あんなに綺麗なのに、ひどい場所なんだね。」
長老「自然の恵みは偉大ということじゃ。じゃがな。この技は、その自然の恵みからも逃げることが出来る技。とても危険なのじゃよ。だから、良心が備わった者にしか教えることは出来ない。その点は雪だけは既に合格じゃ。いや、雪1人だけしかいない。」
雪「私が使う日は来ない気がします。」
長老「私は頭に入っている。門外不出じゃ。だから、雪にやるよ。知ったところで今の村の者に出来るようになるやつなどいないしな。」
雪「お婆様。お食事です。食べましょう。」
長老「ありがとう。お前の食事ほど素晴らしいものはない。今の村では価値がないが、わしはありがたい。。昔の村じゃったら、お前はいくらでも男を選ぶことが出来たんじゃがな。嫌な世の中になったものじゃ。」
雪「私は、お婆様に大切にされてるから、一番幸せだと思うわ。」
長老「お前はかわいいのう。雪。ちょっと妖力が落ちているみたいだな。明日は休め。妖力を溜めるのも重要じゃからな。」
雪「はい。お婆様。」
長老「さて。寝るとするか。」
雪はお婆様に褒められ、大切な秘伝をもらい、とても嬉しい1日になった。秘伝を使える日が来ることは想像出来なかったが、お婆様が自分なんかに大切な秘伝を託してくれたことが嬉しかった雪だった。