「第19話」収穫
日曜の夕食、法事から帰るとすぐに美雪の家を訪ねた。
美雪「あら。来たの?」
彩菜「気になって。。」
美雪「今日、八百屋さんに見てもらったの。2つとも、もう大丈夫って。持って行くのは明日の夜に収穫するわ。」
彩菜「ねえ。じゃあ。」
美雪「いいわよ。あなたが一番頑張ったから、あなたが収穫しなさい。ああ、右のやつね。そっちのほうが成長してるって。」
彩菜「いいの!」
美雪「いいわよ。あっ。彩菜。スマホ貸して。」
彩菜の収穫を美雪が撮影する。
美雪「あらら。トリミングしないとマズいな。。あなたのメロンが写ってる。」
彩菜「メロンよりは小さいでしょう。。やだ!恥ずかしい。。」
美雪「お母さん。メロン穫れたよ。別のメロンも撮れた。」
佳代「何言ってるの?あらら。。これはマズいわね。切り取るかモザイクかけるかね。」
彩菜「モザイクはやめてよ。変な写真になるから。」
大輝「おお、穫れたか。」
美雪「ええ。ほら。」
大輝「いや、立派なものをお持ちで。この写真マズいだろ。目がそこにしかいかない。」
美雪「切り取るわよ。八百屋さんが常温で寝かせてって。」
佳代「分かったわ。」
彩菜「ねえ。持って行くのは美雪が獲りなさいね。」
美雪「分かったわ。問題は味ね。美味しかったら。。儲けるぞ~。3980円狙ってる。」
大輝「何個穫れるの?」
彩菜「15個くらいかな。」
大輝「あんなに苦労して4万円くらい?割に合わないな。」
彩菜「楽しかったから、儲けはいいの。赤字は避けたいけどね。今日は帰ります。」
大輝「明るいうちに帰るほうがいいな。気をつけて。」
美雪「彩菜。木曜日の夜に両親と来て。食べるわよ。」
彩菜「分かった。」
嬉しそうにメロンを眺める美雪。
佳代「美雪。旅行の用意しなさい。」
美雪「そうだね。やってくる。」
佳代「大輝。検査金曜日にやるらしいから、私と彩菜さんのお母さんは食事抜きよ。」
大輝「そうか。だったら子供たちと4人で適当にラーメンでも食べるか。」
佳代「みんなで相談して決めて。あなた。ちょっといい?」
大輝「なんだ。」
佳代「あのね。最近、純一さんや雪さんのこと、思い出すの減ってる。ダメだと思うの。」
大輝「確かに。」
佳代「辛い思い出はいいの。でも、私達から消えるのはダメよ。」
大輝「あの日のことをこの間思い出したんだ。雪さん。塩を撒けって言ってたよな。」
佳代「確かに言ったわ。」
大輝「あれが無かったら、僕達は死んでた。思ったんだ。雪さんの予想を越えてたんじゃないかなって。本当にギリギリだったと思ったんだ。」
佳代「あのね。無理したら雪さんも入れたと思うの。私達への優しさであり、純一さんへの愛。それがあの結果だと思う。」
大輝「純一さんのいない世界で子供を育てるのは難しいだろうな。。でも、死者の世界で仲良くしてるんだろうな。いつか会いに行きたいな。僕達が死んだら会えるのかな?会えないなら生きているうちに会いたいな。」
佳代「そうね。私達は純一さんとは話を出来てないのよね。なのに人柄は知ってる。話をしたいわね。」
大輝「そういえば、来週は純一さんと雪さんの話はあまり出来ないぞ。弁護士さんと先生に口止めしないといけない。」
佳代「検査申し込む時にしておいたわ。」
美雪が階段を降りてくる。
佳代「用意終わった?」
美雪「だいたいね。」
佳代「なら、お風呂入って寝なさい。」
美雪「はあーい。」
旅行とメロンという夏休み最大の楽しみに、美雪は嬉しくてたまらなかった。