「第15話」来客
彩菜は両親と共に昼過ぎに美雪の家に訪れた。
彩菜の父「娘がお世話になっております。」
彩菜の母「あの、手土産ですけど、夕食に一緒に出して頂けるといいかと思います。」
佳代「ご丁寧にありがとうございます。あの。。中身は?」
若菜の母「ウナギです。有名なお店で買ってきましたから、味は間違いないですよ。」
大輝「いや〜。それはありがたいな。」
若菜「ねえねえ、お父さん。私の畑を見てよ。」
彩菜の父「分かった。分かった。」
大輝「んーー。なんか、娘の趣味に付き合わせてしまって申し訳ない。」
彩菜の母「いや。むしろ、あの子が乗り気みたいでして。まあ、悪い遊びされるよりありがたいわ。アイドルとかアニメのいろいろ買ってたの辞めて夢中になるくらいだから。」
佳代「美雪は自然が昔から好きな子でね。」
彩菜の父「いや〜。本格的ですね。美雪さん。すごいな。」
大輝「私も呆れてますね。さあ、暑いからお入り下さい。」
親同士でテーブルを囲む。
大輝「お仕事はどうですか?大企業はいろいろ大変でしょう?」
父「はい。おかげさまで、一つ出世したので、あと2年で住宅ローン終わりそうです。」
大輝「いや〜。大企業はすごいな。もう返済終わるんですか。それは楽になりますね。」
父「いやいや。収入は社長ほどではありませんから。もちろん、プレッシャーのある大変なお仕事ですから、もらって当然ですね。仕事も私より大変でしょうから。」
佳代「でも、お金があっても幸せにはなりませんからね。家族の愛が一番です。」
彩菜の母「それは間違いないですね。」
大輝「私達は、お金はもう十分ですね。幸せを追求したいです。」
佳代「なんだか外がにぎやかね。。ち、ちょっとお父さん!お二人がもう来てるじゃない!美雪達と畑で話してるわ。」
大輝「それはヤバい。夕食1時間早めるか。」
彩菜の母「私達も手伝いますよ。」
彩菜の父「よし、やるか!」
大輝「ちょっと、お父さん。。すごいですね。切り方が手慣れてるな~。」
彩菜の父「ああ。私、料理趣味でして。良かったら炒飯作りますけど。」
佳代「いいですね!いろんな料理並べるから中華もアリだと思う。」
彩菜の母「じゃあ、お父さんは炒飯と麻婆豆腐をお願い。私はどうしようか。。サラダ作りましょうか。」
佳代「いいかも。お父さん。私達はちらし寿司よ。」
大輝「やっぱり。。また、扇ぐの。。キツイな〜。」
佳代は、炊けたごはんを桶に入れると均等にならす。
佳代「はい。酢と具を入れるよ。。いいわね?。。はい、切って切って!もっと切って!早く切らないと味が落ちるよ!」
佳代は汗だくで扇ぐ。
佳代は素早く細く切った玉子焼きを振りかける。マグロやきゅうりものせると布をかぶせた。
彩菜の父「すごい本格的だな。。ねえ、佳代さん。冷凍庫に紅生姜あったから、液抜いて横に置きましょうか。ちらし寿司や炒飯で用途ある。自由に乗せたらいいと思う。」
大輝「なんか楽しいな。しかし、切るのキツイな。。扇ぐほうが楽だ。佳代は今まですごかったんだな。。」
佳代「市販のちらし寿司のもとを使うのと味が全く違うからね。本気の時しかやらないわ。ものすごく疲れるからね。」
子供達が2人を連れて入ってきた。
弁護士「取り込み中に失礼します。ケーキ買ってきましたので、デザートで良かったら。もし他にあるなら明日お食べ下さい。」
佳代「これは、ご丁寧にありがとうございます。実は、デザートは用意しませんでした。ねえ。先生?」
医師「さすがだな。仕方ない。。愛情いっぱいのメロン3つじゃ。」
美雪「やったー。彩菜。このメロンむちゃくちゃ美味しいんだからね。」
彩菜の父「どこで買われたのですか?高いでしょう。」
医師「ああ、わしが作ったんだ。」
彩菜の父「えっ!お医者さんなんですよね?医者がメロン作ってるの。。」
医師「どちらかと言うと、医者が道楽じゃな。わしにはメロンのほうが大事だよ。」
大輝「お見えになるの、早かったですね。」
医師「美雪さんが畑見てくれと言ってたから、明るいうちに来たんだよ。しかし、教える必要ないくらいだよ。びっくりしたよ。」
美雪「メロン教えてくれないと困る。」
彩菜「メロン。私も。」
弁護士「先生。大人気ですな。2人の美女とは羨ましい。」
佳代「さあさあ、お二人。テーブルにどうぞ。準備出来たから食べましょうか。」
美雪「うわー。すごい豪華。これ、彩菜のお父さんだよね?相変わらず美味しそう。尊敬しちゃう。」
彩菜の父「そうですか?恥ずかしいな。でもね。大輝さんもちらし寿司で全力出してましたよ。すごかった。」
みなテーブルに着くと大輝が「私達の友人が皆揃いました。まずはいただきましょう!」
美雪「炒飯最高!」
彩菜「ちらし寿司もすっごい美味しいわよ。」
医師「いや〜。これは本格的だな。。みんな美味しいよ。すごく手間がかかってる味だな。」
弁護士「本当ですね。これはかなり本格的だ。サラダもあるとは嬉しいね。」
佳代「あーっ。忘れてた!」
佳代「はい。極上のウナギです。彩菜さんのお母さんからです。」
大輝「うわっ!な、何これ。。」
彩菜の父「ちょっと、母さん。。家でこんなの出たことないよ?」
彩菜の母「高いもん。当たり前でしょう?それにすっごい並んだんだから。」
医師「すごい!これは美味いなー。このウナギ、人生最高じゃないかな。」
弁護士「これ、すごいな。美味いなー。参った。」
佳代「うそ!信じられない。ちょっと。。ねえ、ウナギだけで良かったんじゃない?」
美雪「みんなで作って、みんなで食べるからいいのよ。私作ってないけど、野菜は私が作ったんだから。」
彩菜「私。。何にも。。」
美雪「あなたはお客様だから当たり前でしょう?楽しいならいいのよ。」
きれいに食事は無くなった。
仕事の話や、畑の話で盛り上がる。夜も遅くなると、佳代がメロンとケーキを出す。
大輝「びっくりしますよ。」
彩菜の父「何これ。。。今まで食べたメロンって何だ。。きゅうりだったのか?」
彩菜の母「いくらなんでも言い過ぎでしょう。。うわっ!うまっ!。。。本当だわ。。全然違う。」
彩菜「おじさん。こんなの作れるの!すごい。。ねえねえ。私も作れるのかな。」
医師「なかなか難しいぞ。作れなかったら遊びに来なさい。食べさせてあげる。」
佳代「私の実家のお隣さんだから、泊まりで行けるわよ。」
彩菜「ねえ、お父さん。行こうよ!」
父「お寺とか行かないといけないけど、1日で強引に終わらせるか。行くか?」
彩菜「やったー。約束だよ。」
佳代「道すいてるから、ここから1時間くらい。みんなで行きましょうか。」
美雪「やったー。絶対行こうね。」
彩菜の父「さて。私達はそろそろ帰ります。彩菜はどうするんだ?」
彩菜「泊まりたいな。畑の勉強したいの。」
医師「仕事の準備もあるから、昼過ぎには帰らないといけないからね。」
彩菜の母「では、申し訳ないですが、娘をよろしくお願いします。」
佳代「もちろん。大丈夫ですよ。」
弁護士「しかし、先生大人気ですな。まあ、私は明日大輝さんと仕事のお話ししないといけないから、いいんですが。」
大輝と佳代は彩菜の両親を見送ると戻ってきた。
美雪と彩菜が一緒にお風呂に入るうちに話しをする。
大輝「なんか嬉しいな。純一さんと雪さんが繋いでくれた縁。ありがたいです。」
弁護士「こんなに幸せなのは久しぶりだ。良い仲間がいるなら街も悪くないかな。。」
医師「しかし、美雪さんの畑は予想以上だったよ。あの子はすごいな。その後、変わったことは?」
佳代「今のところないですね。そういえば、大したことじゃないですが、美雪。むちゃくちゃ頭いいらしいんです。」
弁護士「まあ。雪さんの血なら、当たり前かも知れないな。雪さんは環境に恵まれなかっただけで、明らかに私達より頭良かった。でも、あなた達の愛情もすごいからだと思うよ。」
医師「遺伝と環境の両方が最高なら。。当たり前と言うのが正しいかもな。」
美雪「先生達もお風呂入ってね。私達は今日は寝るね。」
大輝「おやすみ。」
佳代「早く寝るんだよ。」
全員風呂を出るとリビングに集まる。
大輝「さて。皆さん飲みますか?」
医師「これは。。また、いいもの飲ませるねえ。」
佳代「私が選びましたよ。これ美味しいらしいですからね。」
弁護士「へー。初めて飲むな。。」
医師「これ、いいよ。実は、私は名前で飲んだことあるんだよね。なかなか手に入らないんだ。」
大輝「日本酒。。雪か。味はどうでもいい。名前がいいよな。」
弁護士「ん!美味い。」
佳代「いいでしょう?」
医師「いや〜。染みるね。この味だよ。いや〜雪さん思い出すな~。」
大輝「なにこれ。すごく美味いな。。」
佳代「実は見せたくて。久しぶりに充電したの。ほら、雪さんのスマホ。皆さんの写真もいっぱいある。」
医師「懐かしい。本当に。。いや〜、泣けるなー。美雪やっぱり似てるな。」
弁護士「。。。たまらないな。あっ。俺若いな。。やっぱり綺麗だな。純一。。純一。」
大輝「僕らは、15分くらいしか会ってないからな。美雪の小さい頃の写真が何とも言えない気持ちになる。頑張っても、この親子関係は無理です。けど、精一杯努力してる。だからいいんです。」
佳代「死んだら、雪さんに褒められたいからね。今は、これは危険ですから、金庫にしまいますね。」
弁護士「辛いけど、懐かしいし。幸せも。。今日はいい1日だったんだろうな。」
医師「しかし、やり切れないな。何であの2人があんな目に合わないといけないんだ。何故、都会が嫌で来たのに。。都会で死ななくてはならないんだ。。」
弁護士「そういえば、彩菜さんの両親には?」
大輝「言ってないです。こんな重荷を友人に負わせる必要はない。」
医師「しかし、打ち明ける時に力になるかも知れない。それにずいぶん彩菜さんと仲がいいじゃないか。彩菜さんにも少なからず影響は出ると思うよ。」
佳代「それは。。分かってます。私達も非常に悩んでいます。美雪に力があるのは、もはや疑う余地はないこと、先生も感じていますよね?」
大輝「私が気にしているのは、雪さんの封印が完全に消えているのか、まだ残っているのかです。まだ残っているのなら、考えている以上に力があるということ。あのー。何とか、雪さんのお婆様に会うことは出来ないのでしょうか?」
医師「前も言ったが、命の危険がある。場所も分からない。今あなたを失ったら、あの子はどうなる。あの子の幸せのためとは言っても、あなた達の存在はデカい。無茶は出来ない。」
佳代「実は。。。んーー。。」
弁護士「隠さなくていい。」
佳代「雪さんのスマホに変な動画が1つだけあったの。天井しか映ってないから、恐らく知らないうちに撮ってしまったのでしょうね。あのね、2人の会話でね。妖怪は死後の世界にはいつでも行ける。死者がこちらに来ることは認められてないって。だから、行けば雪さんに会えるの。話も出来る。どうも純一さんがお婆様に会いに行こうと雪さんに言った時の会話みたい。お婆様の村での立場がなくなる。それに人間を見たら殺さないといけない決まりだって。」
弁護士「そんなことがあり得るのか。死んだ者にいつでも会えるのか?でも、誰もお婆様を知らない以上、どうにもならない。」
大輝「どうしようもないけど、佳代。僕は初めて聞いたぞ?」
佳代「どうにもならないのが分かってるから言わなかったのよ。せめてお婆様と直接会えたら。。」
医師「私達もお婆様のことは一切知らない。どうしようもない時の最後の手段で探すのはアリかも知れない。けど今ではない。その時は寿命が一番短いだろう私が行くよ。」
大輝「雪さんに任された以上は自分の責任で美雪を幸せにする努力をする。今はそれは考えるのはやめよう。」
佳代「そうね。ごめんなさいね。変な話して。」
弁護士「あなたの悩みは分かるから気にしないで。」
大輝「そろそろ寝ましょうか。お二人は和室で寝て下さい。」
医師「そうだな。寝ようか。」
佳代も分かってはいたが、やはり、自分の考えで進むしかないと改めて思った。
※※※
翌日、朝から畑のやり方を医師は若菜さんに教える。最後にメロンの作り方を教えた。
2人は必死にメモして、質問攻めだった。
その頃、部屋では弁護士が話をしている。
弁護士「大輝さん。あの火災で見舞金とかもらってないですか?」
大輝「一切関わりたくないから、門前払いしました。」
弁護士「実は、亡くなった人はニ億円支払われたらしく、親族が申請しないともらえないらしいことを、お付き合いのある会社で1ヶ月くらい前に聞きましてね。本当はもう、締め切っていますが、親族が当時2歳で出来なかった。今も判断力を持っていないと、私が青年後見人になって、もらってきました。先週振り込まれました。美雪さんの通帳ですのでお渡しします。」
大輝「すごい金額じゃないですか。2億どころではない。。ん?1年に1万円振り込まれているのは?」
弁護士「2億の金利も払わせました。あの会社、ナメ腐ってるよ。ああ、その1万円は口座が休眠すると困るから、私が入金していました。たったの12万円ですから、気にしないで下さい。純一さんの資産も相続してますからかなりの額ですね。雪さんと純一さんにはそれ以上のことをしてもらった。大輝さんは家を見る限りでは要らないかも知れないですが、美雪さんの人生は長い。必要になるかも知れないですからね。」
佳代「そんなご苦労を。。わざわざありがとうございます。」
弁護士「本当は雪さんの分がもらえないから、大輝さんと佳代さんは取れるだけ取ってほしかった。けど、苦痛なら私は言わない。」
大輝「会社は憎い。けど、私達は雪さんと純一さんという素晴らしい方と出会い、別れた場。複雑ですけど、いい思い出だけ残したいです。通帳、本当にありがとうございます。美雪に真実を伝える時に、一緒に渡しますよ。しかし、私達もあちらに行くことを真剣に考えたいな。」
佳代「美雪が卒業したら、行きたいですね。」
弁護士「通帳は定期的にお金動かして下さいね。あと10年くらい先か。。来てくれたら嬉しいけど。これからあなた達はいろんなことがある。希望を持ちながら運命に身を委ねることですね。」
先生と子供達が戻ってきた。
医師「では、帰るよ。楽しかった。ありがとう。」
弁護士「来年楽しみにしてるよ。彩菜さん。」
彩菜「絶対行くからね!」
美雪「楽しみだな。」
大輝「いろいろありがとうございました。」
佳代「気をつけてお帰り下さいね。」
医師と弁護士は戻っていった。
一応16日まで毎日投稿の予定ですが、長期連休は皆さんもやることが多いのか、アクセスが減少する傾向は感じていますので、想定より大幅にアクセスが少ない場合はお盆休みの投稿はお休みし、のんびり過ごす場合もあります。
その場合は、お伝え致しますのでご了承下さい。