「第129話」親子
弁護士さんの家には武が訪ねて来ていた。
さよ「いらっしゃい。どうぞ。」
武「うわー。難しそうな本がいっぱいあるな。」
弁護士「おお来たか。座って下さい。仲良くやってるみたいだな。」
武「おかけ様で。地獄の日々から救い出してくれてありがとうございます。」
さよ「ちょっと。先生?」
弁護士「分かってる。武さん。申し訳ない。」
武「えっ!何で?」
弁護士「会った時は知らなかったんだがな。会社の状況などを調べていた時に知ってしまったんだが。。武さん。あなたは私の子なんだ。」
武「えっ。。」
弁護士「私は仕事で有名になることに気をとられ、家庭を顧みなかった。気づいたら家族を失っていた。私はそれに後悔して表舞台から消えて、この村で暮らすようになったんだ。人間社会に疲れてしまった。ある日を境に妻とは連絡が取れなくなった。どうすることも出来なかった。会社を辞めさせるためにいろいろ調べていて、連絡が取れなくなった理由が美雪さんの両親の亡くなった事故に巻き込まれていたのだと初めて知ったんだ。私はあなたに何もしてやれなかった。不幸にしてしまった。これは謝るしかない。許されなくて当然だ。だが、さよはこれには関係ない。人間として生きるために他に方法がなかったから養子にした。」
武「私は、覚えてはいませんので悪感情はないです。新しい父も良くしてくれました。あの事故は憎い。でも憎いのはそれだけです。父の情報は母で止まっていました。母が亡くなったら、居場所を知る手はありませんでした。どこかで元気ならいいなって思ってた。けど、お父さんはあの会社から僕を引き離すために、かなりの危険を負ってくれたのは分かります。弁護士としての力の凄さも理解したつもりです。警察や労働基準局にも圧力かけて。もうあの会社は壊滅的でしょう。どうなろうと私は知りません。私は殺されかけた。あれを救った覚悟は弁護士の覚悟じゃない。親の覚悟。ですから謝ることは何もありません。」
弁護士「今まですまなかった。私がもっと早く気づいたなら、こんな苦労はさせなかったはずだ。」
武「でも、そんな道だったら、さよさんと会ってはいないです。だから最良。。」
さよ「どうしたの?」
武「いや。。」
さよ「大丈夫。実子と養子は結婚出来る。」
武「そうなの!だったら最高ですよ。ありがとうございます。お父さんか。身内がいるって初めて。いいもんだな。」
さよが泣き出す。
さよ「良かった。。みんな。。幸せになれる。。」
武「何も恨みもない。むしろ嬉しいよ。しかし。。雄太と亮太には両親はいない。言うべきか。。」
弁護士「そこまで気は回らなかったな。。どうだろうな。。3人の長い生活の全てを知らないから、どちらが正しいのかは分からない。」
武「誰が知っているのですか?」
弁護士「私達は運命共同体だから、3人以外には年末に話した。さよだけは、知った時に話したというか、一緒に調べている時に知ってしまった。私達は運命共同体の仲間には隠し事はしない。代わりにそれ以外には決して話さない。美雪の命を守るため。これは美雪の両親。つまり、かけがえのない友人の子を守るためだ。」
さよ「ただ、美雪さんは。。誰でも倒せるし、宇宙を滅ぼせるけどね。」
弁護士「今はな。高校入るまではかなり悩ませたんだ。あまりの妖力で。。人間にバレてはいけないと思ってな。我が子も可愛がることが出来なかった人間なのにな。これでも、ずいぶん反省したんだ。それに村の生活は理想だった。先生と美雪のお父さんと3人の絆は深かった。いつしか今の関係になった。」
武「運命共同体に参加させていただくなら、弟達に言わないとね。これをクリアーしないでみんな幸せになれない。」
さよ「私は足が不自由でずっと死んだような人生だった。1年前に美雪さんが治してくれた。みんな傷を持って集まったのかも知れない。これからみんなで幸せになればいいと思う。」
武「最高の仲間に加えていただいたからには、精一杯貢献するつもりです。」
さよ「じゃあ。いいわね。今日は楽しくいきましょう!」
食事や酒は適当に、3人の今までの知らない生活を話し、聴くことがメインとなり有意義な1日を過ごした。
さよ「私、今日は先生の家で1人で寝るから、2人で寝てね。」
弁護士「鍵かえよ。スマホは近くに置いて、何かあったらすぐに連絡しろよ。」
さよ「分かりました。お父さん。」
すごく幸せな気持ちで病院のベッドで眠るさよだった。
※※※
翌日、武は弟達に話をしたが、全く気にしないどころかむしろ喜んでくれた。
運命共同体の結束はより強固なものになっていった。