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「あ、あれ……ここは……」


「うむ、起きたか少年」


 目を開けると空にいた。

 そう言うと変な言い方かもしれない。

 しかしそれほどまでに、周囲全体に大空が広がっていたのだ。


「えっと……」


 そして目の前には白いヒゲを蓄えた何やら偉そうな老人が。

 俺たち二人は、どこまでも続く湖のような足場に乗り対峙していた。


「戸惑うのも無理はないかもしれんな。まずは自己紹介からいこうか。儂は俗にいうところの神じゃ」


 目の前の男は神と名乗った。

 毅然とした態度はまさかに神のそれ……と思えなくもない。


 俺は一度冷静になり考える。

 ……や、やばい、これマジでどういう状況?


「すみません、ちょっと僕混乱してるみたいでアレなんですけど、まずここはどこなんですか?」


「ここは天界じゃよ。ちなみに質問権は今回の邂逅において三回までと決まっている。お主は今貴重な一回を消費したのだ」


「いやこの状況下で三回だけって少なすぎませんかね! もっと貰ってもよくないですか? しかも一回使ったことにされた!?」


「ゴタゴタ言うでない。儂ら神々も日々忙しいのだ。お主だけにかまけている時間はないのじゃ」


「えぇ……」


 そう言われてもこんな状況で混乱しない方がおかしいと思うんだが……でも何やら続けて説明してくれそうな雰囲気だし、とりあえず黙って聞くしかないのか……


「儂はとある理由でお主をここへ呼び寄せた。地球にて死亡したお主はこれから異世界転生を果たさねばならない。これはもう神託会議で決められたことなのだ」


「やばい……聞きたいことが五個くらい浮かんでくる……」


「まずはお主が転生する異世界の実情を説明しとかねばならんだろうな。その世界はシャルデロン=ディアという世界なのじゃが、地球とは違い『魔素』という素子が世界全体に蔓延しておってのう。生物はその魔素を用いて『魔法』やその他強化を行い日々に活かしておる。また何十種もの種族が生活しておるのも地球とは違う点じゃ。今回はその種族というところで問題が発生しておってのう……それら種族を大別すると『魔族陣営』と『人間陣営』とに別れるのじゃが、この二陣営間の均衡が崩れてきておるのじゃ。実は魔族陣営に強力な魔王が誕生しおってのう。こいつが歴代の中でも稀にみる最強クラスのやばい奴で、近年とうとう人間陣営へ侵略を開始し始じめたのじゃ。一応善戦はしておるがこのままだとほぼ間違いなく人間陣営は滅んでしまう。それでは世界のコンセプトが崩れてしまう為どうにかしたいところなのじゃが、神々のルールにより儂らが手出しできることは限られておる。そこで、そんな数少ない方法の一つを今回とったという訳じゃ」



「…………」



「さぁ、木下きのした良道よみちよ。お主は神による魔改造を受け入れられる千年に一度の人材じゃ。それも儂が見てきた中でもとびきりのぶっちぎりの逸材じゃ。お主が勇者となり異世界に転生し、破滅の危機にある世界をその手で救うのじゃッ!」



 神と名乗る男は力強く言い切った。

 ばばーんという効果音が出ている気もした。

 たぶん雷も鳴っている。


「さっ、という訳なのじゃが、ここまでで何か質問はあるかの?」



 切り替わった様子でしれっと男は尋ねてくる。


 ……うん、俺にどうしろと?


 ちょ、ちょっと待てよ。待ってくれ、落ち着け。

 とりあえず理解を追いつかせるんだ。

 えーっと、まずはなんだっけ、俺は何かしらがあって地球で死亡して、どういうわけか異世界とやらに転生しないといけなくなって……



「なければ早速転生の儀に移ろうかと思うのじゃが――」


「ハイッ! どうして僕は死んでしまったんでしょうか!」



 ヤケクソで叫んだ。

 とりあえずそこは間違いなく一番肝心なところだ。



「ああ、それは落石事故によるものじゃな。お主山道を車でドライブしておったじゃろう? その際に運悪く落石が走る車に激突したのじゃ」


「え……」


 俺は思い出す。そうだ、たしかに俺は親戚のおじちゃんと、その息子さんとキャンプに向かう途中だった。おじちゃんが運転していて、俺はその子と仲良く話していて……駄目だ、最後どうなったかが朧気だ……


「まぁほぼ即死だったみたいじゃからのう。覚えておらんでも無理はない」


「嘘だろ……ち、ちなみに他の二人は……」


「それは三つ目の質問ということでいいか」


「それぐらいまけてくれてもよくない!? 俺にとって大事なところなんだ!」


「しょうがないのう。ええと……うむ。共に乗車していた二人は無事だったようじゃ。まぁ小さい子の方は潰れたお主を見て精神崩壊しておったようじゃが」


「やめてくれ! それ以上聞きたくない!」


「お主が言い出したんじゃろう……」


 ああ、そこまで生前の状況言い当てられては流石に信じるしかないのかもしれない。

 この人は神様……そして俺は本当に死んでしまった……


「まぁそう落ち込むでない。むしろ最強の存在として転生できるのじゃからラッキーでしかないじゃろ。儂だったらそう思うがの」


「……地球に転生はできないんですか」


「それが最後の質問ということで――」


「いや、やっぱりやめときます。どうせできないんでしょうから。


 俺はふぅっと呼吸を整える。

 ああ、マジで俺死んじゃったのか……そしてどういうわけか神様に呼び出されて転生なんかする流れに……それも訳の分からない異世界に。


 でもようやくちょっとずつだが状況が飲み込めてきた。

 とにかく死んだことはどうしようもない。

 後で色々後悔とかするんだろうけど……今はとりあえず前のことだ。


 異世界転生……正直二時間くらいは質問しまくりたい。食べ放題の質問バージョンを決め込みたい。

 でもどうやら向こうのご都合でそれは無理らしい。

 まぁいきなり異世界とかじゃなくて、こう一つ説明が入るだけまだ有り難いのか?


 そう思えばいくらか気は楽だった。


「どうした、質問はもうよいか」


 最後の質問……どうしようか、逆に思いつかない。くそ、もうなんでもいいこうなったらヤケクソだ!


「じゃあ質問! どうしたら僕は異世界で幸せな最後を迎えることができると思いますか!?」


「うむ、それは人によるじゃろうな」


「ですよねー!」


「ならば早速転生の儀にさせるとしよう。準備はよいか? いくぞ! ふまばはま、まっくもーま、はばららもらっらはばぼぼぼーおおおおん!!」


 謎の言葉とともに、俺の視界は光に包まれていった。

 ああ、俺の異世界転生、ほんとに始まっちゃうんだ。

 それも世界を救う勇者として。


 これからどうなっちゃうんだろう……



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