05 アルビ
本当凄いね、イオちゃん。
魔物って言うんだよね、あの怖い生き物。
出会ったヤツ全部瞬殺だもん。
「アマツさんの安全を最優先とすると、瞬殺が妥当かと」
うん、ありがとね。
でも不思議だよね、確かにイオちゃんのおかげで安全なんだけど、俺みたいなヒョロ男がこんな森をこのペースでスイスイ歩けてるなんてさ。
「私とパーティー登録されているアマツさんは、こちらに来てからそれなりにレベルアップしています」
「疲れ知らずなのはそれが原因かと」
おっとつまり、イオちゃんが倒してる魔物の経験値が俺にも入ってるんだ。
えーと、パワーレベリング、だっけ。
どんだけ強くなってるのかを、自分でステータスを見て確認出来ないのが、ちょっともどかしいかな。
でも、なんだか申し訳ないね、俺だけこんなに楽しちゃってさ。
「たくさん頼ってもらえると、嬉しいです」
優しくて可愛くて強い、
本当に良い嫁さんもらっちゃったよ。
ちゃんと神様に、お礼言っといてね。
「リアルタイムで見ている可能性が高いので、お礼の言葉も聞こえていると思われます」
あー、もしかして、アノ時のアレも覗かれてた?
「神様が気を利かせてくれましたので、覗かれてはいません」
「"空気を読む"という表現が近しいかと」
……ありがとね、神様。
ーーー
ちっちゃな集落に到着。
アルビっていう村だって。
街道沿いのお休み所って感じの規模かな。
なんかみんながチラ見してくるけど、
俺たちのこの格好って、もしかしてここの世界観から浮いてる?
「召喚者という概念が存在する世界ですので、周囲からはそのように認識されているものと思われます」
なるほど、その召喚者って、こっちの世界ではなんか不都合とかある?
「珍しい存在ですが、差別や迫害の対象ではありません」
「比較的裕福だったり、特別なチカラを持っていたり、世間知らずだと認識されておりますので、悪党からはカモにされる可能性が高いです」
うわっ、ヤバいね、それ。
じゃあ、目立たないような着替えとか、とっとと用意した方が良いってことだね。
「あちらの商店で、必要な物品を購入することをお勧めします」
「ここに来るまでに倒した魔物の素材がありますので、それを売れば購入代金の方は問題無いかと」
ーーー
魔物素材とやらは結構高値がついたけど、店の方で持ち合わせが足りないってんで、商品と現物交換することに。
イオちゃんは、自分はこのままでも大丈夫って言ってたけど、目立たないように冒険者服にお着替え。
うん、何を着ても可愛いね、イオちゃんは。
武器は、ここでは一般的なモノらしい短めの片手剣。
イオちゃんの戦闘スタイルは、基本は魔法でスッパリまっぷたつなんだけど、
ちゃんと普通の冒険者っぽい格好してた方がいいよね。
俺の方は、冒険者服ひと揃いと、短剣。
武器を使いこなせるなんて全く思ってないけど、
手ぶらで女の子の後ろに隠れてるヤツって思われたくないし。
いやまあ、そのまんまの事実なんだけどさ。
一緒に買ったこまごました雑貨をリュックに詰めたら、ホクホク顔の店員さんに挨拶して次の場所へ。
イオちゃんが使ってる『収納』魔法は、めっちゃ何でも入っちゃうんだけど、
さすがに全くの手ぶらってのもなんだし、格好だけでも普通の冒険者っぽくしないとね。
で、次はどうしよう、イオちゃん。
「そちらの仮設冒険者ギルドで、冒険者登録すべきかと」
「身分証明証は、旅暮らしには必須です」
はい、了解。
でも、身元不詳の俺みたいなのでも、簡単に登録出来る?
「署名のみの仮登録、血液情報から登録される本登録、どちらもすぐに出来ますが、出来れば本登録が望ましいです」
「冒険者カードは、ギルドにて記録・管理された依頼達成情報などで、冒険者としての身分を保障するためのものです」
「魔導判定により偽造は難しく、とても有効な身分証明手段となりますので、取得しておくべきです」
はい、じゃあ行きますか。