数持ち
浮遊城が近づき、皆が戦闘開始のときを待っている。
城の正門がうっすらと目視出来るようになった頃、それは飛来した。
「足止めにも、限度があるだろうがァ!!!」
「五月蝿いわねえ………………」
叫びながらやって来る魔人族に対して、マリーは冷静に対処。
しゃがみ込むと、そこから地面を引き抜く様に手を振るった。
大地の槌が魔人族を打ち、そのまま浮遊城へと押し戻す。
同じ様に大地の搥を左右に二本ずつ生やしてラクルスへと目配せ―――ラクルスは一度大きく息を吸ってから、演説以上の声量で叫ぶ。
「――――――突撃ッ!!!」
合図と同時に、大地の搥改め浮遊城へと続く架け橋を兵と冒険者達が駆け上っていく。
それぞれ先頭のマリー、ベネティクト、リーニャを援護しながら、次々と襲いかかる魔人族を蹴散らして。
「ややっ! お師匠あれは殺意が高いのでは?」
「仕組みとしては僕達のと同じかな―――じゃあ、やろうか」
浮遊城から向けられた、高密度の魔力を放とうとしている無数の大砲。
ベネティクトとリーニャ、銃手の二人が魔銃魔力の溜まり具合から優先順位を決めて、砲口へと発砲―――魔力砲には魔導銃だ。
魔力の圧縮中に他の魔力が混じったことで、魔力砲は内側から破裂。
百メートル程の距離があるにも関わらず、ただ一つの外れ弾は存在しない。
「楽勝ですねっ!」
「全部の歓迎が、このレベルだといいんだけどもねえ………………」
「そうも行かないみたいよ」
マリーの言った瞬間、浮遊城より新たに三つの影が。
それぞれ道を塞ぐ様に、皆の前へと立ち塞がる。
「むむっ、貴方はどこかで………………」
「久しぶりだなァ、今回の俺は全力で殺れるぜ」
リーニャの前に立つのは、金髪で三白眼の獣人―――かつてエルフの森へと向かう前、秋臥達の前へと現れた人物である。
それが今新たな牙を携えて、再度この街へと現れた。
他二つの道も同じ。
それぞれナンバーズの番号持ちである幹部が道を塞ぎ、進行は停止状態。
すかさずマリーが新しく分岐の道を用意して、他冒険者や兵を先に行かせる事を選択した。
それに対する足止めは無く―――敵の狙いは、主戦力である三人の足止めだ。
「今度は最後まで殺って良いとのお達しだ―――面白おかしく、踊って見せろッ!」
リーニャ対、ナンバーズ、3―――ライオット・レザー。
ベネティクト対、ナンバーズ、4―――シャルロット・メルソン。
マリー対、ナンバーズ、5―――ベルサイユ・バミューダ。
敵は皆国際指名手配の、超弩級犯罪者である。
相見え、そろい踏み、今互いに牙を抜く。
⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘
「………………もう始まってるな」
「では少し急ぎましょう。出来ますかグリフィス?」
視界を遮るものの一切ない平野の中、一台の荷馬車があった。
それを引くは魔物グリフォン―――車内からの問いに黙って頷くと急加速。
四人を乗せた荷馬車は、激しい土埃を上げながら突き進む。
平均速度三百九十七―――この世界から見て異世界の、カーレースにて残された世界最速記録と同等である。
(更新状況とか)
@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)




