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盛り上げ上手

英霊騎士(サーヴァント・ナイト)英霊巨盾サーヴァント・ウォール英霊騎槍(サーヴァント・ランス)英霊弓手サーヴァント・アーチャー英霊術師サーヴァント・ウィザード………………数は、これで足りるかしら?」


「敵の戦力が分からねえ事には何ともな………………これは冒険者達と連携取れるのか?」



 浮遊城の飛来が近い頃、街から離れた平原に魔法によって兵が生成される。

 マリーに同行したラクルスはその数に驚くでもなく、冷静に戦力の確認を。

 


「ええ…………全個体に私が指示を送り動かすから、必要とあれば連携も可能よ」


「個別操作か、保つのか? というか細かい操作無理だろそれ」


「並列思考の魔法があるわ…………私自身の戦闘をこなしながらの操作ならば、この数までは普通の人の様に動かせる」



 英霊召喚の魔法を使い、五百の魔法兵を生み出す。

 元は田舎町の農家が使っていた固有魔法である英霊召喚( サモンサーヴァント)だが、一眼見た魔法を完全再現するマリーの固有魔法、全知全能マリー・ザ・オールマイティによってここに見参。

 元の使い手である農家は一日一体、一時間の召喚が限界であった所を、マリーは魔力の消費零によって軍の生成を可能にした。



「いやあ、毎度壮観だねえ―――でもこれ、メイス君の専売特許じゃない?」


「彼のとは一体ずつの質が違うわ…………私の騎士と彼の騎士を戦わせたら、きっと時間稼ぎにしかならないもの………………」


「メイス君泣くよ」



 医療布によって、ある程度治療の進んだベネティクトが出て来て言う。


 聖七冠、三位―――冥王メイス。

 彼の死霊魔術は過去生きた戦士の死体を利用して発動される、代々墓守の一族に伝わるものである。

 確かにマリーとメイスが騎士を一体ずつ召喚し戦わせたならばメイスの騎士が勝つことにはなるが、問題は勝負にはなると言う点と、マリーの召喚には媒介を必要としないと言う点。


 態々一対一で戦わずとも、一体の騎士に対して三体以上の騎士で当たればまず苦戦はあり得ないのだ。


 無論死霊魔術の中でも上位に当たる個体を召喚すれば、英霊召喚を蹴散らすこと自体は可能である。



「………………そろそろね」


「僕達も、ぼちぼち支度を始めようか」



 英霊召喚により、突如として顕現した無数の魔力。

 それに気づいた冒険者達が街の外へと集まり出した頃、当初十時間程の時間稼ぎが目的であった状態より大幅な強化を経た結界を、一晩かけて破壊して来た浮遊上の姿が見え始める。


 雲を割り、大気を裂き、飛ぶ鳥に道を開けさせ突き進むその姿は絶望を目視可能にした様なもの。

 

 単純な大きさ、質量もさる事ながら、その内側に居るのが全て金級冒険者並みの力を持つ魔人族。

 その長、魔王パルステナともなれば元騎士団長ベディヴィア・ハーシュマイン、現役の聖七冠四人と、元剣聖という面々との戦闘を経てなお生存という偉業を達成―――それが全て、あの城に居るのだ。



「それじゃあリーダー、あとは任せたわ………………」


「ったく、似合わねえ仕事請け負ったなあ」



 マリーが大地を操り、ちょっとした舞台を生成。

 今回の作戦のリーダーであり、エルモアース領、領主のラクルスが上がる。



「あ………………今日集まった皆に、先ずは感謝する―――敵は強大だ。先の王都襲撃の際復活した魔王パルステナと、他魔人族共。今日集まったお前達の中にも、あの日王都に居た奴が居るだろう」



 整列したラクルスの私兵と冒険者達。

 その中には、王都で魔人族の脅威を見た者も少なからず居る。


 にも関わらず、今エルモアース領を護るためと立ち上がった者達へ、ラクルスは何を言えば良いかと考えた。

 激励か、感謝か―――戦えぬ自分には、何が出来るかを必死に考えたのだ。



「三十年前、我々は既に敵を淘汰しているッ! かの剣聖、若き頃のアリス・セクトプリムの手によってだ! 今ここに、あの聖戦を再現するぞ…………!!!」



 騎士達が一糸乱れぬ様子で敬礼。

 それだけを見れば見事なものだが、全体を見渡せば士気は低いだろう。


 当然ラクルスはそれを予期していた―――ので、演説を終え舞台を降りる途中、一瞬足を止めて再度口を開く。

 今度は力を込めた声でもなく、ただ伝え忘れを解消する様に。



「この戦いが終わったら今ここにいる奴らで、親父の酒蔵開けようぜ」



 瞬間、冒険者達が雄叫びを上げた―――ラクルスの父、つまり先代当主は大の酒好きで有名。

 地下に広がる酒蔵は、世界で名の知れたコレクターも目を輝かせる程だ。



「その酒蔵ってのは、僕もご相伴に預かっていいのかい?」


「お前ら主戦力にやる気出させねえ程馬鹿じゃねえよ、俺は」



 舞台を降りたところ、これまた酒好きで知られるベネティクトが待ち構えていた。

 彼は銃の腕がなければ酒と女に溺れたダメ男だとまで評される人間―――ラクルスの今の言葉を聞いた心情は穏やかではないだろう。


 士気は最高潮まで高まった―――浮遊城もすぐ側だ。


 戦いが、始まろうとしている。

(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)


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