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それはまるで―――

「設置された監視カメラにより、犯人は護衛についていた男と判明―――ここより一キロ程離れた箇所に隠していたバンに乗り逃走。現在は八名の追跡班により行動を逐一報告出来る状態となっています」


「分かった、車を用意してくれ―――俺も出る」



 報告に来た骨互裏に言う。

 進む秋臥を止めようとやってくる数名の、総司の私兵を容易く撃破しながら、施設外に置いてある車へと乗り込む。

 運転は、年齢的に無免許が確定している骨互裏。


 彼女曰く、運転出来るの一点張り―――どこで身につけた技術なのかは一向に話そうとしなかった。



「隊長、任務の動向に私を選ぶこと多いですよね―――もしかして狙ってます? 惚れてます? 私としては強い男性が好きなのでアリ寄りのアリなんですけれども、少し年下すぎるって言うか――――――」


「実力があるから―――あと今回は運転が出来るからだ。

それ以上も以下も無い」


「何ですか、照れ隠しですか? 私とてまだ年齢としては女子高生―――憧れてしまうのも仕方はありませんよ」


「……………………もういい、好きにしてくれ」



 呆れ、思考を投げる―――骨互裏の戯言に一々付き合っていてはキリがないと理解したのだ。


 骨互裏のことを無視しながら三十分程。

 いつしかすっかり木々には囲まれておらず、舗装された道を進んでいた―――街中を抜け、再度木々に囲まれた道を進み。

 ようやく停車したのは、下方に廃旅館の見える展望

 確かに廃旅館の裏には、黒いバンが停まっていた。



「ここより少し進むと、その廃旅館の側に出ます」



 車を降りると、広場の柵沿いにて骨互裏が廃旅館を見下ろし言う。

 柵の先は急な崖になっており廃旅館へと向かうならば、曲がりくねった下り道を進むのが唯一の道だ。


 

「では、再出発いたしましょうか――――――」

 

「いや、いいよ」


「そうですか…………では、私はあとから向かいますのでお気をつけて」



 骨互裏は秋臥を展望広場に残して車に戻ると、そのまま出発。

 一人秋臥は廃旅館を見下ろしているかと思えば突如柵を越え、百度近い崖を駆け降り始めた。


 重力の力を借り、絶壁を地面とし踏み締め、加速に加速を重ね地上十五メートルの地点、跳ぶ―――着地地点として狙ったのは、廃旅館三回の窓。


 その中僅かに、動く人影が見えたのだ。


 崖から窓まで、その距離十メートル程度の飛翔。

 今、突入する。




 ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘



 ここ最近、彼に出会ってから―――これまでの人生を帳消しにする様に私の日々は輝いていました。


 彼は私の知らない外の世界の話を沢山してくれ、知らない感情を沢山教えてくれ―――少し我儘な、私の知らない私を教えてくれ。

 かけがえのない時間というのはこの事を言うのかと、身に沁みて実感させてくれました。


 でももう、それも終わり―――そう私は思ってしまいました。


 初めて外の世界に出たのは、思いがけぬ護衛による誘拐。

 どうせ父が私の捜索をする事などありません―――現状手負いの秋臥に出動を許す事もないでしょう。


 それ以外で誰か、私を助けに来る者がいるわけでもない。


 よって私に待っている未来は、何も動きを見せないトラオムに痺れを切らした誘拐犯に殺される―――それだけだと思ってしまったのです。


 どうかお許しください―――貴方を信じる事の出来なかった愚かな私を。


 それはまるで絵本に見る王子様の様。

 窓ガラスを破って現れた貴方の姿に、私の視線は釘付けです―――誓いましょう、最早二度と、貴方を信じぬ事はないと。


 如何なる危機、窮困がこれより私に訪れようと、貴方の事だけを思い続けると。



「秋臥………………!」


「もう大丈夫だ、香菜―――一緒に帰ろうッ!」

(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

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