表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/194

唐揚げ

「と、いう事で―――加臥秋臥の容体はそれ程深刻でもなく。来週には訓練の復帰とまでは行かずとも、日常生活程度ならば支障無く行える様になるそうです」


「そうですか、ご苦労―――因みに、現在の状況は?」


「現在は総司様直々に休暇を与えられ、隊舎のお部屋にて休養を取られております」


「分かりました、では今日の予定は全てキャンセルで―――いえ、この先二週間の予定は全てキャンセルです」


「なっ! お嬢様、それは流石に無理があろうかと………………!!!」



 突然行われた香菜の暴挙―――本日の護衛の者が声を張り上げ驚くも、最近少し強かになった、人間性が増したと評される香菜は耳を塞いで知らん顔をしていた。



「無理ではありません。どうせお食事会だとか対談だとか、私から父の情報を聞き出したい者達ばかり。元より父が断り溢れていた仕事なのですから、私が続けて断った所で支障はございませんよ」


「しかし、二週間ともなるとお父様が…………総司様がお許しになるはずが…………!」


「父は何も言いませんよ。私に対しての興味など、既に消え失せている筈―――その証拠に、私はかれこれ五年間、仕事以下で父の顔を見ていませんもの」



 しまった―――そう思い眉を顰める護衛を他所に、香菜は部屋から出かける支度を。

 人生で初めて、己の意思で、日中の自由行動を始めようとしていた。



「秋臥の元へ行きます―――今から私の言うものの手配を、すぐにです」




 ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘




「という経緯で、来てしまいました」


「な、成る程………………それで、その手配した物がこれと………………一体、何を作るつもりで?」


「唐揚げです…………!」



 香菜が秋臥の元に行くと、未だ傷は痛むだろうに、既に立ち上がり部屋の掃除をする姿が。

 慌てて座らせると、少し遅れて来た護衛の者が持って来たビニール袋を見せつける。


 中には鶏もも肉と、既に色々と調味料の混ざった唐揚げの元や、油などが。

 鍋や箸は秋臥の部屋にあるものを使おうという事になり、特に用意はない。



「作り方は調べて来ました…………! キッチンは私に任せ、どうか秋臥はお休みください!」


「…………分かったよ、任せる。火の扱いは気をつけて」


「ええ…………!」



 鼻歌混じりで支度を始める香菜。

 ボウルに唐揚げの元を入れて水と混ぜ、鶏もも肉を入れて絡める。


 鍋に油を入れて火にかけると、沸々と沸騰し始めるのを楽しそうに待っている。



「香菜、料理の経験は………………?」


「ありませんが、キッチリと調べて来ましたので!」


「そっか、そっか…………」



 立ち上がり、秋臥もキッチンへ。

 痛む腹を押さえながらも、収納より揚げ物バットを取り出し、油吸収用のキッチンペーパーを引いてから網を重ね。

 その側に箸とは別で、網杓子を添えた。



「揚げ終えたのはこっちで掬い取って、滴る油を少し鍋に戻してからこっちの網の上に置いとく。料理は材料とか調理も当然大事だけど、途中態々焦らないための準備も大事だよ」


「成る程、私の調べた記事には書いてありませんでしたが…………書く必要もない基礎の段階にはこの様なものもあったのですね」


「まあそうだね。結構前提の話かも―――でもここまでの工程は順調だし、問題ないよ。何か見逃しとかあるかもしれないし、もし良ければ隣で見てても?」


「私としては助かりますが…………しかし、傷が痛むでしょう? あまり無理なさらないでください」


「じゃあ椅子を持って来るよ。座ってる分には幾分かマシだからね」



 そうして、キッチンに二人並んで調理はスタート。

 その後の工程においては情報の取り残しがなかった様で、順調に唐揚げが揚げ物バットに積み上がって行く。


 初めての料理に唐揚げはハードルが高いのではないかと思っていた秋臥だが、香菜は器用な人間である。

 大体の物事は人以上に熟せ、唐揚げ作りも例外ではない。


 香菜の料理初体験は秋臥監視の元、無事最後まで安全に行われた。



 

(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ