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弟弟子

新章スタート!!!

「ルー坊…………ああ、ルークさんの…………!」


「なんだ、聞いてねえのか? アイツお人好し星人だからな―――なら帰るか、先生役とか面倒臭えからな。おいベネティクト、呑み直すぞ!」


「いや、聞いてます! 話を通しておいて下さると聞いてます…………っ!」


「なんだ、聞いてんのかよ―――聞いてんなら聞いてるなりの態度見せろ」


「は、はあ………………」



 押され気味になりながらも答える秋臥。

 一応その話を聞いていた香菜も納得しながらも、若干表情に不服さを残している。



「そんじゃあ、秋臥借りてくからな」



 言うと、秋臥の首根っこを掴んで馬車より飛び出したアリス―――それを見た香菜は即座に手綱を引き、馬車の方向を転換する。



「追いかけますよ、グリ………………えっと…………」



 だがここで、グリフォンをなんと呼ぶか僅かに思考。

 グリフォンじみた名前を見つける為に、記憶を探る―――そして見つけたのは、秋臥が学友に勧められて読んでいた漫画に登場したキャラクターの名前であった。



「グリフィス!」



 命名、グリフィス―――漫画を一瞬覗き見ただけの香菜としてはその名前の元となった人物がどんなキャラクターかすらよく分かっていないが、グリフォンの嘴に似た頭をしていた記憶はある。


 グリフォン改めてグリフィスは、一瞬急加速して馬車を揺らす事で、中から自分の背へと香菜を飛ばして乗せる。



「グリフィス、承知した―――行こう(あるじ)よ、(あるじ)を追おうぞ!」


「呼び分け方、考えましょうね」



 馬車と、その中にいるベネティクトを残してグリフィスは飛び立つ―――超速で駆けるアリスと、首根っこ持たれたまま無抵抗の秋臥を追いかけ、全力で天翔る。



「なんだあ? 随分とやる気もりもり熱心女だな…………お前、小僧の癖に良い女連れてやがるじゃねえか」



 言うと、秋臥を思いっきり投げ飛ばしてから木刀を腰の収納用魔道具より取り出したアリス。


 追いかけて来た勢いそのままで爪を振るうグリフィスを、片手で握るそれ一本で止めて見せた。



「お〜気合い入ってんな―――気合いあるやつは好きだぞ。俺が面倒臭えと思ってる事を進んでやってくれるからな」



 軽く木刀に力を込めて、グリフィスと香菜を再度宙へと―――それから放り投げた秋臥の方向目掛けて駆け出した。



「ついて来たけりゃついて来い―――家事ぐらいはさせてやるよ」




 ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘




「あ、お帰りなさいせんせー。もっかい行ってらっしゃーい」


「帰って早々どこ行くんだ。安心しろ炊事洗濯は終わりでいいぞ」



 三日三晩走り続けたアリス。

 たどり着いたのは、森深くの開けた土地に建てられた平屋―――そこには気怠げな表情の、秋臥より少し年下であろう少年が一人。


 アリスの事を、先生と呼んでいた。



「これから暫くは、この女がやる―――ああ、勘違いすんなよ、俺は家事は女の仕事なんて前時代的な考えは持っちゃいねえ。ただ面倒臭えから誰かに任せる、秋臥は俺が鍛えるから家事なんてやってる場合じゃあねえ、ガレッジもずっと家事当番だったからいい加減離れさせてなんなきゃ可哀想だ。だから、お前にやらせんだ」


「……………………お姉さん、変な人について来ちゃダメだよ」



 二人順番に香菜へ言う。

 今のアリスの言葉からして少年の名はガレッジ―――黒髪に一箇所赤いメッシュの入った、ライブハウスでバンドでもしてそうな容姿である。


 

「安心しろ、俺はフェミニストだからな―――飯が不味かったりしたらしっかり甘やかさずに文句言ってやる」


「せんせー、それなんか違う…………ん? 違くないのかな? まあいいや」



 言うとガレッジは建物の中より、木刀を取って来た。

 素材は普段アリスの使うものと同じ、神樹―――決して練習用の木刀として軽々しく扱って良い素材ではない。



「ずっと家政婦みたいに働かされて散々だったんだ―――せんせー、久しぶりに相手してよ」


「俺じゃねえ、こっちの秋臥が相手する」


「秋臥…………? 誰ですか、その人」


「弟弟子だ」



 アリスが元々持っていた木刀を秋臥へ。

 その意味は、三日間首根っこ掴まれて引きずられた結果不眠不休によって若干衰弱している秋臥にも理解出来た。



「魔力の使用一切なし、取り敢えず打ち合って見せろ―――それで、俺が面倒臭え思いしてまで面倒見てやる価値があるか、未来があるかを見極めてやるよ」



 木刀を杖のようにして起き上がる―――既にガレッジは準備運動をしながら、秋臥を待っていた。

 

 僅かに見える掌はまめが出来ては剥がれ治してを繰り返した剣士の掌。

 体につく筋肉のバランスも良く、無闇矢鱈に鍛えているだけの者とも違って見える。



「えっと…………秋臥さんだっけ? 疲れてるところ悪いけど、さっさと終わらせちゃうから、ごめんね」


「加臥秋臥―――よろしく」


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