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ベディヴィア・ハーシュマイン

あけおめ〜!!!

 魔人族の身体能力は、超人的であった―――魔力による強化無しの身体能力で、身体強化をして更に防具を纏う冒険者達を千切っては投げと蹂躙しているのだ。


 魔王、パルステナ・イブリールを除いた魔人族は誕生直後というのもあって、魔力を扱えない。

 その姿こそ成人であれど、意識は未だ覚醒に至らず。

 半ば無意識の、狂乱状態で暴れているに過ぎない。



「…………クソがッ! 最優さんはまだ戻んねえのか!!!」


「もう少しかかるんじゃあないかな。ルークくんは女王様の護衛任務中だろう?」


「これだから貴族王族ってのは嫌えだ…………権力ばっか持って、自分の身すら護れやしねえ」


「まあまあ、いいじゃないの―――代わりにあの、族長サンが暴れてくれてるんだからさ」



 魔人族達を制圧しながら、ファンデルとベネティクトは話す。

 彼らともなれば、狂乱状態の敵に手こずる事はそうそう無い―――だが、厄介なのは数である。


 雛姫は絶え間なく魔人族を産み続け、敵は減るどころか増える一方。

 聖七冠(セブンクラウン)でも随一の殲滅力を持つマリーは、現状パルステナに付きっきり。


 今出来る事は、敵の増える速度を緩やかにする程度であった。



「どうだい、フェンディル―――いっそ、奥の手でも使ってみるかい?」


「いや、必要ねえ。こっちも数は足りる様だぜ」



 言うとフェンディルは、王城の方角を指差す―――見えた、聞こえた、馬の群れと跨る騎士の姿。


 ただの騎士ならば、戦力どころか足手纏いであろうが、今回は違うと確証を持てる。

 なんせ先導するは騎士団長、ベディヴィア・ハーシュマイン―――個人の戦力もさることながら、彼が無策に敵陣を駆ける様なことはあり得ぬと、世界の強者達は知っているのだから。



「さて、どんなお土産引っ提げて来たのか見せてもらおうじゃないかい」




 ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘



「同胞達が減っている…………? 何があったのだ…………」


「我々騎士団が出張ったのだ、みすみす蔓延らせてなるものか」



 マリー対するパルステナの元、ベディヴィアが合流。

 魔人族の命が消えてゆくのを感じ取ったパルステナは怪訝な表情を見せて、僅かに不快感を露わとした。



「人間よ応えろ。奴らのあの姿はなんだ? あれが今の時代の装備なのか?」

 

(シルバーズ・)(オーダー)―――今を生きる若者によって与えられし、我らの新たな力だ。人間は日々鍛え、進化する生き物―――この三十年眠っていた貴様らに容易く砕かれる程、軟弱な作りはしていないぞッ!!!」



 騎士達の纏う、透き通った銀の鎧。

 秋臥の用意した、騎士達個々人の戦力を底上げする為の力である。


 その効果は目に見えて強力―――攻撃威力は素の打撃を魔人族と同レベルまで引き上げ、各々の身体強化と合わせれば凌駕する程。

 防御力も申し分なく、魔人族の攻撃を喰らえどヒビ一 一つ入る気配がない。



「貴様はあの鎧を着ぬのか?」


「性分だ―――(シルバーズ・)(オーダー)を着た誰かに、或いは私は負けるやも知れんが、アレを着た私よりも今の私が下回る事は決してない」



 ベディヴィアは剣を抜く―――僅かに細身の刀身である。



「魔導王よ、ここは私に任せて他所へ()け」


「無茶よ。貴方では出来て足止め…………いえ、それすら叶わないわ」


「問題ないッ!」



 瞬間―――ベディヴィアは駆け出し一閃。

 鋒はパルステナの瞳直前を通過して、結果空振り。


 この動きだけでは、一見紙一重で行われた余裕の回避。


 だが何かがあると、パルステナの驚愕に満ちた表情が物語っていた。



「貴様、まさか…………!」


「ご名答ッ!!!」



 続けて一閃振り上げた刃を返して振り下ろす。

 パルステナは空間を捻じ曲げて、刃の射程をずらす事で回避―――だが表情には、強張りが見て取れる。



「貴様、魔力を持たぬな…………?!」


「その通り―――私は世界でも数える程しか居らぬ奇病、魔欠(まけつ )患者の一人だ」



 刃は銀に輝き、一切の濁りを見せず―――一切の身体強化や魔法を扱えぬ、圧倒的なまでのマイナスを抱えながらも鍛錬により手に入れた技量のみで騎士団長にまで上り詰めたベディヴィアを体現する様な姿である。


 バックステップで少し距離を取り、剣の間合いから外れたパルステナの首元に、次の瞬間には鋒が突き付けられている。



「恐ろしいか、魔の王よ―――私はお前達の目となり鼻となる魔力の探知には捉えられない。世界から、抜け落ちたようであろう」


「ならば貴様の領分に並ぶまでよ」



 言うと、一定空間の色が反転―――それを掴むと、軽く振ってみせた。


 

「空間を裂く刃だ―――その剣で、受け切れるか?」


「気になるならば試してみろ…………ッ!!!」



 敵との戦いに没頭してしまえば、最早(もはや)口では語らず。

 その背で、剣で、雄弁に語って見せるのだ―――ここに自分以外の戦士は要らぬ。

 他所へ行け、そこに貴様を必要とする者達がいると。


 所詮は勝ち切れぬ戦いと分かっていながらも、彼はそう語るのだ。


 それが、民を護るための最善と信じて。

(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

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