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三時間

 王都到着より五日―――式典に向け、衣装の下見を。

 秋臥達は王都に着き次第良い店を紹介してもらおうと思っていたが、女王メリュジーナ曰く、城に幾つか貸し出せる物があるとの事。

 城の一角にある衣装室へ行き二人別々に、使用人付き添いの元自分達に会う衣服を吟味した。


 何のアクシデントもなく選び終えると、その後昼食―――この日午前中は騎士達への特別指導最終日というのもあってメリュジーナ、ベディヴィアと共に。

 ここ数日で何度か顔を合わせる機会があったとはいえ、こうも並ばれると秋臥とて緊張せざるを得ないメンバーであった。



「秋臥さんの講師はどうでしたか? ベディヴィア騎士団長」


「想定以上、と言う他無いでしょう―――十七歳の子供と聞いたときには不安でしたが、彼はこの短い期間で、我々に新たな力を与えてくれました」


「堅物のベディヴィア騎士団長にそこまで言わせるとは…………余程のものなのでしょうね。秋臥さん、感謝しますよ」


「いえ、大したものではありません…………元々騎士団の皆さんの地力があったからこそのものです。あの水準でこの国全体の騎士を纏めるベディヴィア騎士団長にはお見それしました」



 秋臥の与えた力は二つ。

 一つ目は元々ある騎士の軍としてある力をより生かす(すべ)

 魔法の存在により、意外にも広まっていなかった―――この先必ずしも世界中に広まるであろう力である。


 二つ目は短期的―――秋臥が心中危惧する、エルフの森にでアスターが放った、手始めという言葉から推測される次の攻撃や、ナンバーズの幹部であるメピュラス確保による裏社会の亀裂へ対抗するための力。


 期間さえあれば用意出来るものの、短期的に繰り返し使うにはコストパフォーマンスの悪い、騎士個々の能力を活かす力だ。



「エルフの森に現れた男、アスターや、メピュラスを取り戻そうとするナンバーズにより、近々必ず国に対する攻撃があるでしょう。その際彼等の力は、大いに活躍してくれる筈です」


「…………秋臥さんは今言った他にも、攻撃の予感となる何かしらの情報をお持ちなのですね?」


「ええ。僕と香菜はそれに対処すべく動きます―――日がくればお話致します。それまでどうか、悪しからず」



 秋臥が危惧するもう一つの予感―――それは、自身らがこのタイミングでこちらの世界に導入された意味である。

 現在行った仕事は、バグアイテムの破壊。

 ゲームで言うところのデバッグ役であろう。


 だが与えた仕事はあくまで、神様のサポート役なのだ。

 バグアイテムの破壊はそれに含まれた業務の一つ―――秋臥は別に何か、本命となる仕事があると考えていた。



「戦う事をなりわいとする騎士団長の前で言うのも何ですが、争いというのは嫌なものですね―――明日の式典がそれらの戦いに関わらぬ。平和なものである事を(わたくし )としては願うばかりです」


「陛下、一つ訂正をお許しいただきたい」



 メリュジーナの言葉に、ベディヴィアが言う。

 今までの穏やかな表情とは違い、騎士団長に相応しい真剣な眼差しで。



「我々の剣は、敵を斬るためではなく国を守護するべく振るわれるもの―――私の仕事は決して戦いでは在らず。騎士団長である私の仕事、騎士である我々の仕事は、この国の安寧を―――民の健やかなる日々を継続させる事です…………!」


「…………そうでしたね。そんな貴方だから(わたくし )は、貴方に騎士団長を任せたのでした」



 少し嬉しそうに微笑む―――ベディヴィアの言葉は確かに、メリュジーナの心に届いた。



「二十一年前、貴方に―――ベディヴィア・ハーシュマイン初めて出会ったあの日より、その言葉の通り尽くしてくださった事感謝します。貴方の存在は、或いは王である(わたくし )よりも重く、尊く。この国に於いて他に類のない財産でしょう」



 時間は丁度十三時三十分―――給仕の者が空いた食器を下げ始めた。

 メリュジーナは静かに立ち上がる。

 食事の時間も終わり―――また新たな国務に向かい、動き始めるのだ。



「騎士団長、これからも宜しく頼みます―――秋臥さん、この度はお付き合いありがとうございました。式典までのお時間、ゆっくりとお休みください」



 それだけ言うと退席―――式典は今より三時間後。

 

 既に会場での支度は進んでおり、騎士達も各国重鎮達の身を護るため要警戒体制。


 この世界が始まってから四十五億年と少しの歴史の中で初の、正式なエルフ族世界政府入りの瞬間が迫っていた。

 

今日はちゃんと臥ます!



(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

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