真夜中の犬
今回下ネタの多い回となっております。
というか、Y談ですね。
苦手だったり、キャラのイメージ崩したくない!って方は飛ばして大丈夫です。
「前、僕が前原さんからの仕事でアメリカ行ったときの事覚えてる………………?」
「ええ。一週間も一人留守番でしたので寂しかったです」
「………………あのとき泊まった部屋って、こんなだったよ」
秋臥と香菜の二人は、案内された―――王城の中、客室に。
暫くの間ここで寝泊まりする様にと手配されたのだ。
最近は家として渡された屋敷でも肝を抜かれ、暫くは驚かないぞと思っていた矢先の王城寝泊まり。
精々良い宿程度の話だと思っていた秋臥はひとまず落ち着きを取り戻してから、部屋の四隅と小道具の側面や裏。
ベッドの下などを見て回った。
「何をやっているのですか…………?」
「盗聴盗難が無いかをね。こっちの世界にも魔石だとか魔道具がある限り、その危険性を常頭に入れておいた方がいい」
一通り見て回って、一応の安全は確認。
所々に見当たった魔石も、部屋の壁などに広がる魔法防壁用であった。
荷物を広げて数日過ごす部屋の快適な空間づくりを始めていると、部屋の外より豪快な足跡が響く。
それからノックもなしに、扉が開かれた―――無論侵入者はスアレー。
満面の笑みで、突如秋臥へと飛び付いた。
「加臥秋臥ェ! ようやく見つけたぞ!!!」
「………………秋臥、この女は?」
飛びつかれ押し倒された秋臥の耳に、香菜の冷たい声が響く。
こちらの世界に来てからは初めての、キレた声だ。
「え…………騎士団の副団長のスアレーさん………………なんで、ここに?」
「おう、未来の旦那様にご挨拶をとな!!!」
瞬間―――スアレーの首にワイヤーが巻き付いた。
香菜が手を引くとワイヤーも同機して動き、秋臥を抑えるスアレーを首で宙吊りに。
外から見れば、首吊り自殺である。
「秋臥、どう言う事ですか? 浮気ですか? 私というものがありながら他の女の旦那様とは…………どういうおつもりで?」
「僕も、何も分かってない。スアレーさんとの関わりは、訓練見に行ったとき一回のしただけだよ」
「……………………そうですか。ではこの女の戯言ですね。変な女に押し倒されて…………可哀想な秋臥ですね」
「いやいや、戯言なんかじゃねえよ」
首を強く締め上げたつもりのスアレーがあまりにも自然と喋るので、香菜は驚き目を向ける。
ワイヤーは確かに、首に巻かれていた―――だがしかし、首の鍛え上げられた筋肉が気管にまでの締め上げを妨害している。
「戦士が戦士を下したんだ―――その上男女と来ればもう嫁入りしかねえだろ。私もな、元々自分を初めて負かした奴の嫁になろうと決めてたんだ。胸まで触ったんだし貰ってくれるだろ?」
「胸? どういう事ですか秋臥」
またも一つ、爆弾を投下。
香菜も当然それに反応して、視線を秋臥へと戻す。
「攻撃……! 心臓外から打つときにアレだっただけ…………! 僕はそういう、女性的なとかいう狙いとかでは断じてないから―――――――」
「でも、胸だったんですね…………?」
「…………はい、その通りです」
押し倒された状態から起き上がった秋臥の元に寄ると、優しく手を取る。
「どれくらい、触っていたんですか?」
「すぐ次の攻撃だったから、一秒未満だよ…………」
「でしたら、折檻は無しですね」
言うと、握った秋臥の手を自身の胸に押し当てる香菜。
大きさは決して、スアレーのPカップに届かないAカップの胸。
だが確かにあった、僅かな膨らみに手を押しつけたのだ。
「五回は揉んでください。それで上書きして帳消しです」
「ああ………………」
言われた通りに揉む。
香菜は最中嬉しそうに、少し赤面していた。
「なんだよ、お前らデキてんのか………………そしたら悪い事したな」
言いながら、スアレーは首のワイヤーを容易く千切った。
言葉通り、悪い事をしたと思っているのだろう―――バツの悪そうに後頭部を掻きながら、どうしたものかと悩む素振りを見せる。
「あ…………愛人とかでも、良いぞ」
「ダメです。秋臥が抱くのは私だけです」
「三人でってのも乙じゃあねえか? なに、戦う事しかしてなかったから私は処女だ。病気の心配なんかねよ」
「私達には関係のない話ですね」
「三人の方が、アイツを満足させてやれるんじゃねえのか? それに私のこの体―――訓練中野郎どもの視線を集めるんだぜ? 胸もケツもデカいからな」
「秋臥が満足…………?! そう、なのですか…………?」
言われた香菜が、少し悲しそうに秋臥の方へ振り向く。
あっち向いてこっち向いてと、忙しいものである。
「秋臥…………大きい方が、満足出来るのですか?」
「別に。というか誘って来てくれるのは香菜の方だし、もう一人増えたら僕死んじゃうよ」
「アンタ…………結構肉食系なんだな」
意外そうな顔で、香菜を見るスアレー。
香菜は見た目だけならば、奥ゆかしい美少女である―――それが晩に彼氏を誘い、もう一人増えたら死んでしまうとまで言わしめるとは、想像もしていなかったのだ。
「………………スアレーさん、あなた処女と言いましたね?」
「ん? ああそうだぞ。昔は病弱で男作りなんてしてる場合じゃなかったし、治ってからは一人突っ走ってたからなあ。恋人どころか、親と主治医以外じゃあ手繋いだ事すらねえよ」
「では仮に許したとして、私達の段階に合わせるのは過激すぎるのではありませんか…………?」
「過激だあ? 性行為の内容ぐらい私も勉強してるっての」
「お勉強ですか…………その程度ではダメそうですね」
少し優位になり始めたからか、香菜の表情に笑みが漏れ始める。
「………………何が、ダメなんだよ」
「では、お話しして差し上げましょう」
アホらしくなって来たと、秋臥は退室。
時間もまだ食事には早いし、王都の冒険者ギルドにでも行ってみようと街へ繰り出した。
「忘れもしません…………あれは半年ほど前でした。嫌がる秋臥に何日も頼み込んで、首輪を引いて貰ったんです」
「首輪…………? 首輪ってのは、あの首輪か…………? この国は五十年前から犯罪奴隷以外の奴隷を禁止してるんだぞ」
「奴隷なんかじゃありません、犬でした。外で裸になりリードを引いてもらい、深夜に犬らしくお散歩に連れて行ってもらったのです」
「なっ、外で裸だと?!」
スアレーの顔が赤くなる。
彼女は病弱であった頃、本ばかり読んでいた―――無論その中には、性描写の書かれたものもあった。
それによりスアレーは、露出などなどを含めた性知識は充分にある。
だがそれを実践した人物が目の前に居るとなった瞬間スアレーの脳内は、香菜が今言った通りのプレイを実践している姿で埋め尽くされてしまったのだ。
一糸纏わぬ姿で四つ這いになり、頬を赤らめ艶かしい声を上げる香菜の姿を、妄想してしまったのだ。
「あの晩の事を思い出すと私、今でも………………おや? スアレーさん、鼻血が出ていますよ?」
「あ……………………っ! きっ、今日は出直す! また来るからなあ〜!!!」
そう叫びながら、スアレーは部屋より逃げ出してしまった。
知識だけの、現実に耐性のない少女の様な精神では耐えられなかったのであろう。
「あら、やはり初心な方でしたね」
祝50話で猥談ってどうなん?
(更新状況とか)
@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)




