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最初の街

 目指すはエルモアース領。

 叶うのならば、ラクルス達はすぐに動き出したかったであろう―――だが、そうは行かない。


 秋臥達にも、事情と予定があるのだ。



「ラクルスさんも良ければ―――この時間なら、夕飯もまだでしょう」


 「気ぃ使わせて悪いな。リーニャ! お前もいい加減こっち来いッ!」



 呼ばれたリーニャは、叱られた犬の様にとぼとぼと歩きながら寄ると、秋臥に差し出された干し肉を受け取る。


 そして、鎧の兜を脱いだ――――――。



「すまない、いただこう」



 申し訳なさそうに言ったリーニャ―――()()は、耳が長かった。

 茶髪に灰色の瞳と、それだけでも珍しい身体的特徴ではあるが―――しかしそれらを差し置いて目立つ程、耳が長いのだ。


 

「ん? アンタどうした?」


「あっ…………いえ、鎧を着ていたのでてっきり男性かと」



 長い耳が特徴的な種族、エルフ―――その存在は、神様に刻まれたこの世界の常識と知っている。


 だか、これ程早く出会うとは思っていなかった秋臥は若干の驚きを見せた。


 しかしエルフという事に驚いてると悟られてはいけない。

 エルフの存在と共に覚えた情報として、その扱いがある―――僅か五年前まで、この国で人間以外の種族は奴隷とされていたのだ。


 もしエルフという種族に驚けば、悪印象を与えかねない。



「女じゃ、戦うのに不安か?」


「いえ、そんなことは―――失礼ながら、兜に声が篭って男性のように聞こえていたものですから」


「そうか」



 焚き火から少し離れた位置で、香菜は自身の魔法の糸を操り小石を持ち上げ軽く投げ、簡単な操作練習をしていた。


 しかし突然秋臥の方へと振り返ると、手招きをしながら声をかける。



「秋臥、少し良いですか?」


「今行く―――という事で、少しすみませんね」



 呼ばれた秋臥は、ラクルスに告げて立ち上がる。

 向かうと、香菜は小石を糸の操作で放る―――そして、同じ動きの繰り返しで作り上げた石の小山が崩れた。



「色々試しましたが、この糸の操作感覚は大方覚えました―――そして、判明した事がもう一つ。これも魔法でしょうか? どうやら、身体機能が大幅に上がっている様で」


「身体機能…………筋力が上がったってこと?」


「それもあるのですが、聴力視力、嗅覚などなども上がっております―――現在も、この距離からラクルス様方が食している干し肉の匂いを嗅ぎ取れる程度には」


「凄いな…………僕分かんないや」



 香菜とラクルス達の距離は、十メートル程度。

 焼いているステーキやそれにかけたソースの香りなどならともかく、干して乾燥した肉の香りなど、一メートルの距離でも分からないだろう。



「秋臥はまだ魔法を使えてないからではないでしょうか? その内同じようになるかと」


「そしたら、僕も戦えるね」



 二人言い合って、目を合わせて小さく笑って―――それから軽く食事をすると、横転して使い物にならなくなった馬車の扉などを分解してベッドに。


 翌朝に備え、早々に眠りについた。




⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘




「起きてください、秋臥―――まだ眠いですか? もう少し寝ますか?」


「え、あ…………は?」



 起きたら香菜が居る状況に、一瞬脳内の情報が錯乱する秋臥。

 だが即座に思い出す―――ここは、異世界なのだと。



「いや、起きるよ…………香菜、体痛くない?」


「ええ、大丈夫です」



 秋臥は馬車の壁を板にして敷いて眠った―――そのせいか、体の節々が痛むのだ。

 

 香菜の体は丈夫に出来ているなと思いながらも、秋臥は起床。

 昨晩同様干し肉を齧りながら、少し体をほぐす。



「塩っ気濃っ…………」



 秋臥は朝に強いタイプではないが、精一杯頭を回して今日のやるべき事を整理。



「よし、今日も大丈夫」


「何が良しだ?」


「…………っ?!」



 突然背後から聞こえた声に、秋臥は声も出ず驚く。

 やはり、朝には弱いのだ。



「ラクルスさん…………おはようございます」


「つっても、まだ深夜だがな」



 寝惚けて気付いていなかったが、辺りを見渡すと確かにまだ暗い。

 日の具合から見て、三時頃だと予測する。



「…………もう、動くんですね?」


 「暗い方が追手に見つかりにくいからな―――一応、リーニャが既に索敵を開始してるが、問題はねえだろうよ」



 ラクルスの言う通り、リーニャは間も無くして帰還。

 日が遠く登り始める頃、四人は行動開始―――街までの距離は、遠く見えて実はそれほど無いと言う。


 以前の当主が敵の侵入を防ぐために、木の配置などを工夫して距離を錯誤させるような仕組みを作り上たのだと、ラクルスは説明した。


 現に半日も歩けば、日がすっかり上がり切る頃に街へ到着。


 街へ入るための入り口に設置された検問の行列に並ぶにあたり、ラクルスとリーニャは道中馬車に乗った商人から購入したマントを深く被った。



「次、身分を証明できる物を―――そっちの二人は顔を見せろ」


「すいません、この二人ひどい傷跡が顔にありまして。その…………人に見られる事に、抵抗がありまして」



 自分達の順番が来たところで、検問を担当する兵に向かい秋臥が言う。

 街の兵士は皆ラクルスの兄、ゴルシアの息がかかっていると考えるのが妥当―――それに顔を見られては、すぐに捕まり殺されて終わりだ。



「悪いが同情でやる仕事じゃ無い―――顔を見せるか去るか、選べ」


「それじゃあ、仕方ありませんね」



 ラクルス達に、視線を向ける。

 二人は静かに頷く―――そして直後、駆け出した。


 兵の左右を通って街へ入ると、それぞれ別れて路地裏へと入り込む。



「まっ……待てっ!」


「貴方に処罰が下らないようにしますので、ご勘弁を」



 追おうとする兵へ言うと、その秋臥を軽々持ち上げて香菜も飛び出す。


 兵の動きを視認不可なレベルの極細糸で止めて街へ侵入―――羽が生えたように一っ飛びすると、乗った屋根を疾走。

 家々を伝い、道中事前に取り決めた待ち合わせ場所を探す。


 屋根の塗装があからさまに剥がれた家の側、三軒並んだ煙突のある家の、一番手前。



「見えました―――秋臥、ちゃんと私に捕まっていてくださいね」



 該当する家を発見すると、香菜は秋臥に対する警告の後急加速。

 風の如し―――大凡、人がただ走るだけで出せる速度ではなかった。

前書きか後書きで、キャラ紹介なんかやりたいですね


(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)


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