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騎士団

「さあ、おかけになって―――(わたくし )、あなた達の事が凄く気になっていたのよ」



 薔薇の園で囲われたガゼボにて、ティーカップを持ち優雅に待ち構えていたメリュジーナは言う。


 彼女はただ優しく微笑む―――威厳や凄味の一切を纏わず、ただ少女の様に微笑んでいた。

 無論、容姿は美麗とはいえど三十九の年相応。

 肌は陶器の様に白く、髪はミルクティーブラウンの長いものを後ろで大きく編み込み纏め。

 柔らかい目元と、常微笑んでいる口元は人に、怒った事がないのではないだろうかと印象を持たせてしまう。



(わたくし )ね、人の持つ独特の気配を見分けるのが得意なんですよ―――秋臥さん、香菜さん。貴方達の気配は独特ね」



 言われた通りにガゼボの席へ着いた二人に対し、メリュジーナが言った。

 人の持つ気配―――言い換えればオーラや氣であろう。



「独特ですか…………?」

 

「ええ―――香菜さんの気配は、刃物の様ね。あまりに可愛いお姿とかけ離れていて驚いてしまったわ。似た様な気配だと、戦場に赴く前の騎士団長かしら。なにか琴線に触れて仕舞えば、即座に切り捨てられてしまいそうな。そんな気配ね」



 なんともスピリチュアルな話である―――ここが魔法のある異世界でなければ、相手が一国の女王でなければ、くだらないと雑にあしらってしまう程。

 無論人のなんとなくの気配はあるが、それは態々見えるのだと自慢する程特異な能力ではない―――何となく乱暴そうだ、几帳面そうだと見る程度の、子供でも出来る話なのだ。



「秋臥さんは…………少し怖いのね。とてもなだらかに見えて、表面は鑢…………いえ、竜の鱗の様だわ。その手で、多くの人を殺めたのでしょうね。野盗から身を護るためなどではなく、我を通すために」


「…………………………」



 秋臥は何も言葉を発さない―――ただ若干の、気持ち悪さを抱えて無言だ。

 そこまで見透かすのかと、苛立ちを孕んだ気持ち悪さだ。



「でも、貴方に気に入られた人は幸運ね。その竜の鱗も、内側には無い―――その力は我を通すためだけでなく、内側の誰かを護るためにあるんですから。きっと、貴女はその内側に居るのでしょう」



 そう言ってメリュジーナは、香菜へと視線を向ける。

 聖母じみた微笑みが、二人の中では気味悪さを帯び始めた。



「そうでした、忘れてたわ―――今日は貴方達の気配を見たかったのもあるのだけれど、もう一つお話があるのだったわ」



 ふと思い出した様に、手を叩いて言う。

 それによって、渦巻きの様な気持ち悪さが二人から離れた―――何かに取り憑かれていた様な、そんな感覚であった。



「秋臥さん、式典までの期間で良いのです―――騎士団の、特別講師として雇われてはくれませんか?」


 


 ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘

 



「と、言う事で………………特別講師の、加臥秋臥です。どうぞ宜しく」



 女王の話から二十分後、話はとんとん拍子に進み騎士団訓練場。

 秋臥の真横には騎士団長―――そして眼前には、本日訓練中であった騎士五百七十三名が一斉に揃っていた。


 騎士達は皆、懐疑の目―――自分達よりも随分と若い男が、突然現れては鍛えてやると言い出したのだ。

 そうなるのも無理はない。


 秋臥もこうなるのは分かっていた―――だから、一つ事前に仕込みをした。


 皆の知る力を秋臥の力に。

 騎士団長、ベディヴィア・ハーシュマインとの手合わせだ。



「え…………今の状態で素直に従ってくれるとは思いませんし、まずは僕の実力を見てもらいましょうか。従うかどうかはその後で」



 秋臥は立っていた位置から助走無く飛翔―――整列する騎士達の中へと飛び込み、中心に割り込んだ。


 

「さあ、喧嘩騒ぎでも見る様に真ん中開けて。整列なんて崩して」



 その言葉に従う様に、騎士達は自分らで円形の空間を―――秋臥vsベディヴィアのリングを作り出した。



「それじゃあベディヴィアさん、こちらへ――――――」



 あとは軽く手合わせでもして見せれば―――そう思った瞬間、秋臥の眼前に身の程の大剣が飛来し地面に突き刺さった。


 

「ベディヴィア団長が出るまでもねえッ! この私が相手しようッ!」



 その声と共に、一人の女性が騎士の列をかき分けやって来た。

 彼女の名はスアレー・ジェムエル。


 この騎士団の、副団長である。



「いつも美味そうな敵は団長様に持ってかれっちまうんでな―――今回ばかしは、譲っておくんなッ!」

(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

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