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来訪

今日は月曜日、BLEACHだよ!!!

「立てそう、大丈夫?」


「すみません、少しふらついてしまって…………」


「水分不足だね。ほら水」



 ベッドに横たわる香菜を片手で起こし、水を渡す。

 疲れたのか若干朦朧とした意識の中、両手でしっかりとコップを掴んで水分を摂取。


 少し経てばすっかり調子も戻り、体を濡れたタオルで拭いた後ベッド傍に置いてあった服を着た。


 

「夕飯………………は、揃って準備する元気なさそうだね。食べ行く?」


「メイドさんが用意してくれますよ」


「ああ、そうだったね。暫く慣れなそうだ」



 少し気恥ずかしそうに言うと、秋臥は濡れたシーツを見る。

 これをメイドに洗濯させるのは少し恥ずかしいなと思い、どうしたものかと考え頭を悩ませていると香菜が部屋の外のメイドに声を。

 なんの恥ずかしがる素振りもなくシーツの交換と洗濯を頼んでいた。



「凄いね…………恥ずかしかったりとかないの?」


「女性同士ですし―――まず、恋人でもない相手に何を見られても恥ずかしくはないですよ」


「そんなもん?」


「そんなものです」



 メイドがシーツを交換していく。

 丁寧に礼をして、洗濯カゴを持ち退室―――まだ疲れが取れないのか香菜は静かにベッドに横たわり、秋臥は何をするわけでもなく窓から外を眺めていた。


 すると、ある事に気づく―――空に黒い穴が空いているのだ。

 秋臥は窓を開けると、そこから飛び出る。


 庭の開けた位置に着地すると、足元から自身を押し出す様に氷の足場を生成。

 穴の位置まで真っ直ぐ突き進む。


 ソレは、あの日森で見た魔物を放つ穴と酷似していた。

 その穴の先の空間はどこに繋がっているのか分からず、そこで空間が途切れている様な錯覚を覚える特異性。


 門の検問も通らずに現れたソレは、敵を危険に晒す何かだろうと判断したのだ。



「へえ、謀反が起きたなんて言うから無法の地かと思ってたけど………………思っていたより綺麗ね」



 穴より、一人の女が現れた。

 腰まで伸ばされ、綺麗に切り揃えられた長い黒髪。

 首から下の体を全て覆い隠す様な黒いローブ。


 箒の上に座る姿は、容姿こそ若くとも絵本の魔女のものであった。



「申し訳ないですけど、検問受けて出直してくださいな…………っ!」


「あら、貴方―――」



 女へ向かい、氷の足場から跳ぶ秋臥。

 上空、自由落下の数秒。


 女から感じる充分な魔力を踏まえ、防御は勝手に出来るだろうと魔法発動の準備。

 戦うにしろ何にしろ、ひとまず女を街の外に押し出そうと氷を放った。



「――――――紅炎(プロミネンス)



 女が一言唱えた―――瞬間、放った筈の氷は一切消滅。

 溶けた結果現れる筈の水すら蒸発し、そこに残ったのは炎だけ。


 氷の表面積とちょうど同じ程度の大きさの、女が放った炎。

 その温度は名の通り、太陽に浮かぶ雲が如き紅炎(プロミネンス)に匹敵する程―――秋臥の目の前には、太陽があった。



「安心しなさい、この炎が焼くのは触れたもののみ―――近くにいるだけじゃ、暑いだけよ」



 秋臥は普段攻撃に使う氷を飛ばす要領で、円形の氷を作り出して浮かせては、その上に立ち足場とした。



「自分の魔力制御は殆どマスターしているのかしら、優秀ね」


「それはどうも………………」

 


 初手で、魔法の火力差は見せつけられた。

 迂闊に攻めてはやられる―――少し距離を取り様子を見ていると、地上から謎の視線を感じた。


 戦闘に対する恐怖や興味とは違う―――見定めるような、観察の視線を。



「ああ、やっぱりそうだ。お〜い、マリーちゃ〜んっ!」


「ん…………? ああ、ベティーね」



 地上へ目を向けると、そこにはクリーム色の髪と少しの髭を蓄えた、優男がそのまま歳をとった様な中年男と、その横に並ぶリーニャ。


 秋臥が二人を見つけたとほぼ同時、女が箒に乗ったままゆっくりと降下を始める。



 地面に到着すると、秋臥にも降りてくるよう手招きを。

 リーニャがいるのだ、もしかしたら信頼して良い人物だったのかもしれないと思い、秋臥は足場の氷を消して二十メートル程の落下をして着地。


 リーニャが昼頃家にやって来た件とも何か関係があるのだろうかと思いながらも、一応軽く会釈をする。



「見覚えある黒い穴から出て来たので取り敢えず攻撃してしまったんだけれども…………もしかして、お知り合いで?」


「ええっ! こちらの男は私のお師匠ですっ! 申し訳ございませんが、こちらの女性ははじめましてですね…………っ!」


「ほら、さっき言ってた子だよ。マリーちゃん」


「ああ、先程お師匠のおっしゃっていたっ!」


「そ〜う、そうそうそう! あのマリーちゃんが、このマリーちゃんね」



 中年男が嬉しそうに言う。

 それから秋臥の方へと振り返って、懐より取り出した一枚のカードを見せる。

 冒険者ギルドの、登録証であった。



「ベネティクト・カマンガー、聖七冠(セブンクラウン)の五位ね。どうぞよろしく。そしてこっちの可愛い子が――――――」


「同じく聖七冠(セブンクラウン)の二位、マリー・ジェムエルよ。移動が面倒だから最近手に入れた魔法を使ってみたのだけれど…………判断ミスだったみたいね。ごめんなさい」



 少し申し訳なさそうに―――それ以上に眠そうに、彼女は言った。


 以前に続き、突然の聖七冠(セブンクラウン)二人来訪―――この街の治安は、またも暫く安定期へと入った。


(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

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