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悪虐の豚

感想をいただきました、ありがとうございます!!!

 エルモアース家―――名の知れた侯爵家である。

 先代当主の実績と信頼、そして少し変わった性格を評価され、領民達からの呼び名は奇士。


 先代当主は厳格であり聡明であり策略家であり、騎士の様な人間でありながらもふざけた思考回路を待つ―――そして、この様な呼び名を付けたとても怒ることなどない偉い貴族だと、親しみを持って付けられた名だ。


 その当主がつい先日息を引き取った―――そして直前、後継者に次男のラクルスを指名。

 それに怒った長男は、家とは無関係な私兵を総動員し、ラクルスの抹殺へと動いた。



「そんで、この依頼だ」


「つまり、僕達に身を護らせて貴方の兄を襲撃―――依頼の報酬資金は、当主の座に付けばどうとでもと?」


「その解釈で良い―――どうだ、悪い契約ではねえと思うぞ」


「いえ…………それではまだ、吊り合いません」



 秋臥は視線を香菜に向ける。

 そして目が合った―――香菜は静かに微笑む。

 

 彼女のスタンスとしては、交渉は秋臥に一任。

 何か相手が手を出す様ならば、即座に自身が動くという考えだ。



「例えば貴方が死んだ場合、僕達は当主争いの戦場ど真ん中に敵勢力として残される事となる。そのリスク、決して無視出来るものではないかと―――――」



 言い終える直前、秋臥の首筋に一本の刃が添えられた。

 香菜が残した馬車の運転手をしていた騎士―――ラクルスの従者と思われる者が握る剣だ。



「発言を慎めっ! このお方の死など思うだけでも不敬と知れっ! 次その様な事を口に出す様ならば―――」


「リーニャッ!」



 ラクルスは、自身をこのお方と呼び敬う騎士をリーニャと呼び、怒鳴り声で制す。

 その声には注意と言うには力の込められており、黙れと言う命令の籠った一言であった。



「リーニャ、こいつらに俺の立場は関係ねえし、お前の忠誠も関係ねえ。今ここで、何を成すか決めるのは俺でもお前でもねえ、コイツらだろ―――だから、それ以上喋るなら俺は一秒先のお前の命を保証しねえ」


「ラクルス様、何を…………っ?!」



 そこまで言って、ようやく騎士リーニャも気づく。

 自身の鋼鉄の鎧に、細く強靭な糸が当たっていること―――そして、その糸が鎧の頭部分と胴部分の隙間に入り込み、繰り手の意思次第では即座に自身の命を奪えるという事に。



「っ…………非礼を詫びます」


「香菜、糸を引いて」



 リーニャの首は糸から解き放たれた。

 だが―――明確な攻撃意志を見せたことにより、香菜からの印象は最悪へと。



「俺からも非礼を詫びる―――その上で、アンタの考えは早計だと言わせてもらおうか」


「その意は?」


「当主となれば、俺にはある程度の地位がある―――そして、このリスクを負って仕事を受ければお前は新当主就任の立役者。何で生物学者なんて嘘ついたかは知らねぇがその立場、お前としても悪くねえんじゃねえか?」


「分かってたんですね………………」



 看破されていた―――従者の行動により、自身にも向けられる香菜の敵意をものともせずに言ったラクルスは、確かなメリットを秋臥達へと差し出した。


 侯爵家の名があれば、本来の目的である世界の調整任務で動き易い―――危険と吊り合う。



「…………わかりました、この護衛依頼受けましょう」


「交渉成立だな」



 秋臥とラクルスは握手を交わす―――これが、異世界初交流であった。



 ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘




 エルモアース領中心部―――領主の住居兼、領民を護るための要塞として作られた屋敷を、ただ私利私欲に消費する肥えた豚の様な男が居た。


 名をゴルシア・エルモアース。

 ラクルスの兄であり、エルモアース家長男である。



「やはり不安事項は最悪のツマミであるな…………奴が生きていると思うだけで、貴様が一生勤勉に働こうと手に入れる事は叶わないであろう美酒が酷く不味く感じる」



 ゴルシアは、暇つぶしで領地より攫ってきた女に語りかける。

 口に布を噛ませ話さないように―――手と足を縛り、部屋には鍵をかけ。

 この女に今出来る事は、ただ従順にゴルシアに従い機嫌を取ることのみ。



「お前は良いな―――騒がず、逃げ出さず、己の立場を理解した行動を取る。儂は己の立場を理解する人間が好きだ―――誰が上で誰が下か、己のプライドを律し、上の者に付き従える人間が、大好きであるぞっ! その点お前は優秀だ…………気に入った、褒美をやろう」



 言うと―――ゴルシアは椅子から立ち上がり、縛る女へと近づく。

 女の頭を掴むと俯く顔を無理矢理上げさせ、口に噛ませた布を飲んでいたワインで濡らす。


 グラスが空になり、布全体にワインが染み渡ると、今度はビンを持ち出す。


 そして、女の目に指を掛けた。



「目に、酒を流すとどうなる―――痛むのか? 酔うのか? あまりにも馬鹿馬鹿しくて、案外試したことが無い。どれ、やってみるか」



 ビンを逆手に持つと、勢いよく振り下ろした。

 頭蓋骨に辺りビンは砕け、破片が眼球を潰しワインを流し込む―――屋敷には、女の絶叫とゴルシアの笑い声が響いていた。

 

読んでくださりありがとうございます!

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(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)


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