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あっさりと

「ねえ、あれって人間…………?」「一緒にいるのは警備隊長か? 何で通した、まさか負けたのか?」「隣のって、リーニャちゃんじゃない?」「警戒態勢は解かれたのか?」



 森の中、高い木々に沢山の家が建てられている。

 そこから大勢のエルフが四人を見下ろしては、警戒心を露わにしている。



「ツリーハウスですか、凄い数ですね」


「ああ、この森にある家は殆どがそうだ―――エルフは皆弓が得意だからな、敵襲の際は凄いぞ。木の上から一斉に矢を放つんだ」


「それは…………怖いですね」



 秋臥とリリスが話してる間に、目的地。

 この森の中枢、族長の住む樹木。


 特殊な魔法で保護された樹木の中身を丸ごとくり抜いて、築五千年もの間そこに君臨している。


 以下にエルフの寿命長し、森の歴史古しとはいえ、この家ほど古い建物は存在しないとされている。



「――――――入れ、許可する」


「許しが出た、入れ」



 どこからか響いた声を受け、リリスが扉を開く―――中は、広いロビーと冒険者ギルドの様な内装。


 武器を持ったエルフ達と、受付らしきカウンターなどなどがあるのみだ。



「この階は狩人組合だ、入れ」



 言われるがままに、一歩―――そのとき、足元に魔力が広がった。


 ロビーに一部引かれたラインの内側―――四人が立つ位置の床が上昇を始める。



「族長の魔法を仕込んだ床です。この森の木に宿る無尽蔵の魔力を使い稼働―――普段ならば傍にいる担当者が階を設定するのですが…………これは、族長が動かしましたね」



 森の技術が誇らしいのか、普段話す機会がないので張り切ってか、リリスが事細かく説明。

 二十秒程で階を八つ上り、停止。


 そこは、西洋に夢見る王の間を再現した様な部屋―――長方形に広がる木目の空間と、その中心に敷かれた赤いカーペット。

 左右の壁に添い並ぶ兵達と、最奥に鎮座する王座。


 誠に、壮観である。



「話は聞いた、同情も理解もした――――――が、不服である」



 ソファー型の横に長い王座に横たわる、長耳の童女。


 白い肌と金色の髪といい、耳以外も模範的なエルフである。



「私が生命の女王にてエルフの族長、サレン・メノスティア―――貴方達、不敬よ」



 瞬間、玉座の傍から木の杖が生える―――立ち上がったサレンがそれを手に取ると一歩二歩三歩と、階段を降りて四人と同じ高さに立つ。



「事情は心得たが、誠意が足りません―――貴方達の事情で破られた約束は、この森のエルフ達に夜も眠れぬ深い恐怖を与えました。貴方達が遅れながらもやって来た事は賞賛しましょう―――しかし、不足。それではまだ、エルフ達の恐怖を消し去るには到底足りません」


「………………それは、ご尤もです」



 族長、サレンの言葉を聞いた秋臥が一歩前へと出て言う。


 この言葉は、事前にラクルスが予期していたケースの一つに過ぎない。

 手札は、渡されている。



「無礼を承知でお聞きしたい―――それは、貴女ではなく族長として。全てのエルフを束ねる者の、立場としての言葉ですね?」


「無論です」



 ならば、交渉が出来る。

 サレンがもし感情でものを言う人物であれば、今回この森を訪れた三人はよくてお払い箱。

 最悪人間に対しての見せしめとして処刑されていてもおかしくはなかった。



「ならば、提案です―――この森は現在どこの国にも属さぬ独立状態。そこでどうでしょう、一つの国としてクロニクルに所属してはいただけないでしょうか? 今回の問題の解決と同時に、この森を一個の国だと世界的に確定させてしまうのです」



 国際組織、クロニクル―――世界に存在する大小合わせて百七十四国の内、百四十国が加盟する国際組織。


 それへの加入とはつまり、他加入国の百四十全てが、エルフの森単体を国と認める。

 そして、確かな人権の存在を世界へ向けて証明するのと同義なのだ。



「クロニクル、前々から話はありましたが…………良いでしょう、そちらの顔を立てましょう」



 エルフ達のクロニクル加入というのは、前々より各国の目標であった。

 それを果たせは国の―――ひいては、手引きしたラクルスの評価も上がるだろう。



「ですが、一つ条件を出します―――貴方達三人、三週間この森で暮らしなさい。情報のみで民の心は動きません。その身をもって、自身らが安全だと示しなさい」


「三週間…………リーニャさん、ラクラスさんから許された時間は?」


「最長五週間、余裕ですっ!」



 そう言って、リーニャが親指を立てる。

 久々の帰郷だ、暫く滞在出来るのが嬉しいのだろうというのは、誰の目からも明らかであった。



「決まりだな…………リリス、適当な住処を手配してやりなさい」


「はっ!」



 片膝をついて一声。


 秋臥達は思っていたよりもあっさりと話がまとまったので、少し拍子抜けしながらも安堵。


 一応は、話の終着を得た。

読んでくださりありがとうございます!

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(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

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