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最強のふたり

 ルークは考えた、この状況の打破方法を。

 神力を扱えないルークが自力にて秋臥にダメージを与える事は不可能。

 

 ならばどう勝つか―――毒をもって毒を制す様に、秋臥をもって秋臥を制す。

 神力にて作られた氷への激突は、秋臥の防御を貫いて衝撃を与える。



「ハーリット無しで戦うっていうのも、中々どうして」


「スリルですか?」


「経験値だよ」



 ルークは腕を大きく伸ばし、子供の喧嘩の様に勢いよく振るった。

 いつ拳を前に突き出すか―――その瞬間に合わせてカウンターを決めようという算段の秋臥を裏切って、腕はそのまま秋臥の胸を打ち、ラリアットという形で体を打ち飛ばした。



「経験値、ねえ…………!」



 打ち飛ばされながらもダメージは無く、空中で体制を整えながら次の攻撃に意識を向ける。

 打撃戦には不慣れな筈が、戦闘経験と天性の才能により放たれる想定外の攻撃―――戦いが長引けば、秋臥という経験値を喰らい、ルークは徒手でも最強となり得る。



「楽しみ過ぎで忘れちゃあいませんか…………? 実は貴方の方が、極上の経験値だって事を」



 秋臥は拳を開く―――指を揃えて伸ばし、固め。

 手刀でルークへと挑む。


 足場に着地し再度突撃―――通常の戦闘経験が多い程度の相手ならば、守備対象のサイズが変わるというのはそれだけで厄介。

 ただの拳が縦拳になるだけで防御の隙間をすり抜けてやって来るその差に、対応が遅れるのだ。


 だが今秋臥の戦っている相手はルークだ。

 戦闘中、相手の攻撃手段が変わる機会など幾分にもあった。


 並大抵のハッタリでは、まるで意味を成さない。



「お手並み拝見っ――――――とお?」



 突撃のタイミングに合わせて放たれたルークのカウンター。

 その拳を紙一重で回避した秋臥はルークの手首をチョキにした指二本で挟み、力を利用し投げ―――気づけば宙に放られていたルークは驚きの声を上げながら着地をするが、それにタイミングを合わせて氷の刃が足場より飛び出した。


 半歩身を引いてルークは回避―――だが、間髪入れずに間に立つ形となった刃ごと突き破る蹴りを秋臥が放つ。


 空中に薄氷が舞う―――秋臥はその瞬間気づく。

 剣聖に、刃を与えてしまったと。



「――――――秋臥君、失態だね」



 舞う薄氷を一枚掴み、ルークは秋臥目がけ一閃。

 こちらも紙一重で回避するが、次の瞬間秋臥は蹴り飛ばされており―――失態の焦りとこれからの動きに頭を回すあまり、着地地点を誤る。


 着地し、砕けた氷―――その先には、白い剣が突き立てられていた。


 神剣ハーリット―――それを覆い護っていた氷を、秋臥自ら着地によって破壊したのだ。


 そして新たに氷を張り直すより早く、ルークは駆けた。


 神剣ハーリットを掴み、地面から引き抜君動きで居合い術の様な加速を。

 この一瞬が好奇と、秋臥の首を真っ直ぐ狙う。


 ルークにしては焦りの混じった行為だ―――普段のルークならば、ここでフェイクを挟む。

 しかしここまでの戦いによって溢れた高揚と、敗北の危機というシチュエーションがルークを焦らせた。


 秋臥はその軌道を読んだ上で、これまた決着のカウンターを狙う。

 一撃を回避してからルークの心臓に向かい貫手を放ち、勝利―――秋臥もまた、ここが好奇と決着を急いだ。


 互いが必死に放った一撃は、全くの同時で命中―――ルークの刃は秋臥の首を落とし、秋臥の貫手は心臓を貫き。

 零秒差―――僅差すら入り込む余地のない決着となった。


 最強は塗り変わらない―――ただ、双璧が立ち上がる。


 戦闘開始時の約束を有耶無耶にしながら、戴冠は幕を閉じる。

読んでくださりありがとうございます!

もし面白いと思ってくださった方は、レビューや感想、ブクマなどもらえると嬉しいです!


(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

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