蒼の閃光
神力による身体強化は、魔力による身体強化と一線を画す。
その効果は四から八倍。
秋臥は魔力と神力による身体強化を切り替えながら戦闘を行い、攻撃の威力や速度の差、そして魔力に対する神力の絶対的な防御力でイベリスを撹乱した。
しかし、イベリスとてただ押されるだけではない。
身体強化が魔力に切り替わった瞬間、深光の魔剣と不知火の魔剣による攻撃を叩き込み。
零秒の攻撃に対しても、初動を深光の魔剣による神速の斬撃で抑える事に成功している。
「あの余波は、秋臥の元ですね………………」
総司を殺した香菜が、遠方より戦いの様子を窺う。
戦いに駆けつけたくとも、攻防の余波により近寄り難いのだ。
「秋臥…………もう、貴方を一人で戦わせたりはしません…………! もう、私以外が貴方を傷つけるだなんて事、決して………………」
僅かながら、香菜は前進する。
余波を糸で編んだ盾により後方へと流しながら、一歩ずつ確実に。
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「疲れが見えるね―――成る程、君にはあのルーク・セクトプリムとは違い、零秒に長く潜り続ける実力は無い様だ」
「そうでも思わなきゃ、この殺し合いを続けられそうに無いか?」
「真っ当な事実を言ったまでだよ」
互いにそう余裕はない―――僅かでも相手が苛立ち、決着を早まればと煽りの含んだレスポンスを返し合い。
その最中、戦況は僅かながらイベリスへと傾いていた。
「――――――氷槌」
「回帰の魔剣…………!」
秋臥の足元より、氷の槌が現れイベリスを打ち飛ばす。
空中で崩れた大勢のままイベリスは傷を癒やし、地上へと目を向けて―――既に元の位置には秋臥が居ない事に気づいた。
「蒼燕剣っ!」
「防法のっ…………!」
防法の魔剣を出して、結界を展開してでは間に合わないと判断して、手に持つ回帰の魔剣で攻撃を受ける。
だが、これは戦闘用に作られた魔剣ではないが故に耐久力はそれ程高くなく。
刀身は呆気なく砕け、その使用を不可能とした。
「これもまあ、深傷だな」
「っ…………無傷だよ」
体に傷こそ無いが回復用の魔剣を失った。
それ即ち、イベリスの戦闘続行能力は激減―――これを深傷と呼ばず、何と呼ぶのか。
だがそれでも、やはり天秤はイベリス側へと傾く。
零秒の連続使用により体力を多く失う秋臥に比べて、事前に備えた防御を置くイベリスの体力には余裕が残り。
見せた魔剣の脅しと、見せていない魔剣のストックもあって、精神的な余裕も僅かにイベリスが勝るのだ。
「蒼燕剣」
「二本目? 何のつもりで――――――」
新たにもう一つ作り出された蒼燕剣。
その使用用途を疑問に思い、呟いた瞬間―――ソレは投じられた。
イベリスは身を低くして回避―――だが、次の瞬間には素手に戻った秋臥が間合いに入っており、息継ぐ間も無く激しい攻防が開始される。
零秒を五回ほど挟みつつ、十秒ほど攻防を行い、直後イベリスの背後より投じられた筈の蒼燕剣が再度襲い掛かり。
普段秋臥が移動手段として氷の円盤を浮かせるのと同じ要領で、魔力操作により戻って来たのだ。
「転換の魔剣」
瞬間―――秋臥とイベリスの立ち位置が入れ替わる。
飛来する蒼燕剣はイベリスに対しての脅威から、秋臥に対する脅威へと。
だが、秋臥はそれをものともせずに二本の蒼燕剣を空中で手に取った。
「――――――は?」
「遅い」
互いの位置が変わった直後、僅かに崩れた体制―――次の瞬間など無く、零秒で、二本の両剣が振るわれた。
イベリスが気づくのは、蒼の閃光が煌めいた後。
鮮血が、撒き散らされた。
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