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本命

 放たれた矢はイベリスの眉間目掛けて一直線―――だが当たる寸前に、砕けた。


 イベリスが何かした訳ではない。

 秋臥の鍛錬不足―――矢を作る際に、扱い慣れない神力を注ぎ過ぎたが故の自壊だ。



「焦ったじゃあないか…………!」


「まだ焦っていいぞ」



 続けて、同時に三本の矢を放つ。

 一本の矢ならば過剰な神力により自壊してしまうが、その神力を矢三本に分割すれば問題はない。


 しかし力の分散された矢は砕けずとも、簡単に叩き落とせるものであり。

 即対処され、距離を詰められた。


 弓よりも剣の方が強い間合い―――戦闘経験の拙い者であれば武器を切り替えるか、無理な間合いで戦い続けてしまうであろう。

 だが秋臥は冷静に、弓本体を棍棒の様にイベリス目掛け振るった。


 法防の魔剣により、刃周りに結界を張り防御力を底上げした状態で防がれ。

 弓は宙へと弾き飛ばされた。


 イベリスは左手に深光の魔剣を、右手に終失の魔剣を持って超攻撃体制へと突入―――だが、秋臥も本領はここから。


 一撃の殺傷力で言えば武器を持った秋臥が勝るが、最終的な勝利を見た場合は素手の秋臥が強い。

 無駄な重みを捨て、その身一つで敵へ挑む―――その軽やかな殺意こそが、秋臥をここまで連れて来た。



「さあ、ここからだ…………!」


「いいや、ここまでだよ」



 例え必殺の威力を持とうとも、不治の傷を残そうとも―――魔剣である以上剣以上の使い道は叶わぬ。

 振れなければ、棒切れ以外―――秋臥はイベリスの行動の起こりを全て見切り、魔剣を振るうより先に両腕を突きで砕き。

 零秒にて、貫き手を以て心臓を貫いた。


 吐血し、傷口から血が溢れ出し―――秋臥の腕を汚す。



「強い奴は、零秒の対策が整ってる―――お前もそうだ、先に防御を置く事で、攻撃を潰して来る。いきなり初動が零秒のルークさんと違って、僕やベネティクトさんには零に至るまでの加速がある―――だから、そこに合わされているんだろう」


「防御を置くより先に両腕を砕いてしまおうというわけかい…………なんとも、乱暴だね………………


「一番実用的だっただろ」



 胸より腕を引き抜き、血を払う。

 イベリスは仰向けに倒れ込み、その姿から生気が消え―――完全に死している。


 次の敵はエティシア―――いよいよ本命だと秋臥は気を引き締め。


 次の瞬間――― 全身を氷の盾にて全身を覆った。



「何だ、引っかからないのかい」


「引っかかったさ…………だから、無理な防御をした」



 秋臥を包み込む氷の盾に、不知火の魔剣が喰い込んでいる。

 氷が砕けると、秋臥の肌表面が所々剥がれてしまう―――それを見たイベリスは、わざとらしく痛々しい物を見た表情。

 全身の傷は、無かったかの様に完治している。



「もう一度言おうか―――さあ、ここからだよ」


「ゆっくり…………とは行かないが、とっとと原理を突き止めてもう一度殺す」



 拳を固め、再度イベリスと向き合う。

 テンション冷めやらぬまま、戦いは再開される。




 ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘



「戦場が傾き始めた…………仕方ありません、私も動くのですよ」



 言うと、エティシアは魔人族の軍隊を蹴散らす巨神の元へと向かう。

 大地の大精霊、ガイア―――ドラグの命を贄に一時的ではあるが神力を手に入れ、他の追随を許さぬ暴力を振るっていた。



「大精霊が神力を手に入れる贄と認めるレベルの生命力、天晴れと言って良いのですよ―――でも、格が違う」



 宙を歩くエティシアに向け、巨神は拳を振るう―――大地に生える都市を一掃出来る一撃。

 それは、巨神の腕の消滅という形で全くの被害を生ずに、防御の手段を失うという深傷を負った。



「新しい世界を作るにも、魔人族(住人)が居ないんじゃあ意味がないのです―――だから、貴方はここでお終い。よく頑張りました」



 巨神の胸に掌が触れた―――それだけで土塊により構成された肉体は崩壊。

 轟音轟かせ、大地に還る。



「第二波は貴方達ですか―――まあ、敵ではないのですよ」



 続いて現れたのは、パルステナとの戦いをガレッジに任せこちらへ向かったベネティクトとメイス。

 体力を多く残した状態で、本命を攻めにやって来たのだ。



「いいでしょう、認めてあげるのですよ―――貴方達を、前菜とね」

読んでくださりありがとうございます!

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(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

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