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無双

「首を揃えて並んで―――漸く出れた外の世界にはもう飽きたのかい?」


「馬鹿抜かしてやがりますわね―――良いこと? ゾラは私様達にお前を任せた。それ即ち! 私様達でお前をぶっ殺せるって事でしてよ!」


「流石はシャルロッテ様、お見事なご慧眼でございます!」



 牢獄より脱獄したナンバーズ幹部の三名、ベルサイユ、シャルロッテ、ライオット。

 揃い踏み、未だ尚世界最強の男の前へと立ちはだかる。


 聖七冠元一位、ルーク・セクトプリム。


 その腰に神剣ハーリットは差さっておらず、どこにでもある様な鈍の剣が代わりに装備されていた。



「ライオット・レザー、君だけには真剣味があるね―――仲間二人を引き連れて、まだ不安なのかな?」


「不安? 馬鹿言うんじゃねえよ…………俺ァ楽しんでんだぜ、次の瞬間首が飛ぶかも知れねえ、次の瞬間仲間が全滅してるかも知れねえ、そんな絶体絶命と言えるこの状況をよォ…………!」


「そうかい―――杞憂じゃあないよ」



 次の瞬間、ライオットの右腕が斬り飛ばされた。

 身体強化特有の、動き出す直前僅かに見られる魔力の揺らぎは一切無し―――揺らぎが起こると同時に動き、斬り飛ばし。

 零秒にて、初動は放たれていた。


 それに気づいたライオットは、一つ舌打ちを漏らしながら地面を蹴る。

 その衝撃を起点として魔力を電気に変換―――体に纏い、自身の行動速度を極限へと高める。



「速さ比べは、嫌いじゃァねえぜ!」


「いいよ、やろうか」



 そう言い終えた頃には、ライオットの首は地に落ちていた。

 次の標的はベルサイユ―――戦闘中に逃げられでもしたならば、この戦いの行く末を大きく変えるカードになりかねない存在だ。



「味噌っ滓、やりますわよ……!」


「はい、強奪(ジャック)!」



 シャルロッテの作り出した血の槍を、ベルサイユが強奪(ジャック)―――シャルロッテはシャルロッテで新たに血の槍を作り出す事で、同じ魔法を扱える人数が単純に倍となった。


 槍は次々と生成され、ルークに対して一斉掃射。

 だが一撃掠る事すら無く、全て回避か弾き落とされるか。


 一歩一歩歩みを進めるルークにより距離は縮められ、攻撃の手を尽くすベルサイユは抵抗する事すら無く上半身と下半身を切り分たれた。

 逃亡は許されない―――ベルサイユに於いて、行動の一はシャルロッテ。

 シャルロッテがやると言えばやる、逃げろと言わなければ逃げない。

 それが、彼の人生であったのだ。



「よくも私様の金蔓をッ!」


「ベネティクトさんに負ける時も、そう言ってたらしいね」



 シャルロッテの体が十六分割にされたが、そもそも通常の斬撃は無効。

 体を霧化させる事で、無傷にてルークの攻撃をやり過ごしたかの様に見えた。



「前のカスみてえな私様特攻はねえてえですわね! スカしたツラして、無様ったらしいわ!」


「一人は生け捕りにと言われてるんだ」



 シャルロッテの体より、拘束具が飛び出す。

 体内に仕込む事で、魔力源と身体両方を縛る魔道具だ。


 金具がガチャガチャと音を鳴らし、艶やかな漆黒の生地が白い柔肌を締め上げ赤い締め跡を残す。

 目隠しと口枷により一切の意思表示は許されず―――ただ、身を捩らせる事しか叶わぬ女が出来上がった。



「ナンバーズ制圧完了―――さて、次が本命かな」


「――――――どこへ?」



 ルークの背後より、声が。

 瞬間刃が振るわれるが空振り―――紙一重の位置には、見覚えのない男が立っていた。

 だが情報としては知っている容姿である。



「巴山総司だね?」


「ふむ、顔見知りだったかな?」



 戦場に現れた総司は、普段と変わらぬ様子で飄々と。

 それは実力に裏付けられた様子では無くただの驕りであり、今ルークがその気になれば斬り落とされる首である。


 だがルークがそれを実行しないのには理由がある―――何の理由もなく、敵が総司をこの場へと送り出したものか。


 その考えが、ただ一撃を躊躇わせた。


 結界術や魔法の攻撃に対する万全な防御策となる神剣ハーリットは今この場にない。

 慎重にでもこの敵を斬るにはどうしたものかと考え始めた頃、その考えは即座に撤回された。



「どうかしたかね? 今お前の目の前に居る男は、間違いなく敵だよ」


「僕が相手するまでもないね―――どうやら、役者が出揃ったみたいだよ」


「お前、私を馬鹿にするつもり――――――!」



 言い終えるより先に、総司は異変に気づく。

 頭のてっぺんから足の爪先に至るまで、体が全く動かないのだ。


 よく目を凝らせば、全身が極細のワイヤーによって固定されている。


 そんな事が可能なものは、総司が知る限りただ一人である。



「また私の邪魔をするか、この愚か者がァ…………!」


「まだ馬鹿な自尊心に溺れているのですね、お父様」



 ただ一言交わされた会話―――だが、ルークはこの戦場が自分達に傾いた事を確信する。


 総司をお父様と呼ぶ存在―――つまりは香菜がこの場に来たということは、足止めしていたイベリスへの対応を終えたということ。

 実力差を見る限り、香菜がイベリスに打ち勝つことは不可能だ―――ならば、導き出される答えは一つ。


 秋臥が、目を覚ましたのだ。



「香菜さん、任せて良いかな?」


「ええ―――秋臥からも、任されましたので」


「嬉しそうだね」



 言い残すと、拘束したシャルロッテを持ってルークはこの場を去る。

 一つの戦いが終わり、また新たな戦いが始まり。

 戦火は今、最高潮を迎えようとしている。

読んでくださりありがとうございます!

もし面白いと思ってくださった方は、レビューや感想、ブクマなどもらえると嬉しいです!


(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

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