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創世神話

 各国、自前の兵と冒険者達の戦力を保って被害は最低限に抑えられた―――ただ一国、サレスティアを除いては。


 聖七冠の不在、主戦力スアレーの重体、城下町の壊滅と、トラオム幹部二名の攻撃による兵力の低下。


 そしてもう一つ―――イベリスは去り際、大きな爆弾を残していった。

 或いは、攫って行った。


 王城地下牢に投獄されていたナンバーズ幹部の解放―――それは、一度失われた筈の恐怖を世界中に甦らせたのだ。



「あ〜私様ったら肩が凝りましたわ! ずっと硬い床で寝て不味い飯喰って、地獄の様な日々でしたわ〜!」



 ナンバーズ4(フォー)、メルソンが甲高い声で言う。

 同じくナンバーズの5(ファイブ)であるベルサイユを四つん這いにならせて椅子として。



「ねえベルサイユ? お前、私様の肩を揉みなさいな」


「で、では一度降りてください…………」


「はぁ? 私様今、地獄の様な日々だったと言いましたよねぇ?! にも関わらず椅子から降りて立てとは、随分とお偉い身分になられた事で、ええ?!」


「しかし、今確かにメルソン様が肩を揉めと…………!」


「何ですの? 私のせいとでも言いたいので? お前は黙って、四つん這いのまま背に座る私様の肩を揉む方法を考えなさいなッ!」


「そんなのどうやればいいんですか!」


「人に聞いてばかりいるんじゃあねェですわ!!!」



 叫び、ベルサイユの尻を叩く。

 衝撃は尻より腹まで届き、ついベルサイユが身を震わす。


 それを気持ち悪がったメルソンはすんなりとベルサイユの背より降り、周囲を見回す。


 多様性など死んだかの様に、トラオムの経典を唱えながら二人を取り囲むトラオム信者。


 最上位吸血鬼(ヴァンパイヤ・ロード)であるメルソンにとって、この様な使い潰せる手駒が無限にいるシチュエーションというのは理想に近い。


 世界の辺境に作られた、魔力探知遮断の地のドーム内部。

 復権せし吸血鬼のお嬢は、静かに反撃の機会を狙っていた。

 自身を捕らえた、あのいけ好かない男―――ベネティクトに対する反撃の機会を。



「ところでベルサイユ? 私様は一体あとどんだけ待ってればいいんですの? ぼーっとするのも、お前を叩くのも、飽きましたわ」


「そこに時計がありますよ、メルソン様…………あと、大体十六時間と言ったところでしょうか」


「十六ぅ?! あっきれた―――そんな長い間私様が待てるわけないでしょうにッ!」



 背から血の羽を生やし、羽ばたく。

 ベルサイユの頭上を二、三周回ってから、トラオム信者達の頭上を飛び行き待機場から一人脱走。

 

 エティシアすらも想定外の自由行動―――ある意味で、快挙である。




 ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘




「剣聖ルークと、先代のアリス―――戦力補給の基盤となる聖女セリシアも、冥国にて孤立状態。迎えに行ったであろう魔導王アリスも始末したし、不安材料は残っていないだろう」


「姉の空間移動方も対策は済んでいるのです。敵の戦力は残り僅かな聖七冠程度―――しかし、油断は禁物なのですよ」


「勿論、理解している―――ここまで万全の場を整えたんだ。僅かなミスも、許容し難い」



 エティシアとイベリスの二人が、小高い丘よりどこまでも続く様な平原を眺めて言う。


 フルゲシュタインの膝下と呼ばれる土地であり、その大地に籠った魔力量から古くは竜脈などとも呼ばれる、トラオム的には聖地としての役割も持つ。


 平原には魔物より絞られた大量の血で魔法陣が刻まれている。

 その術式は、転移魔法―――全世界を対象として、厳選された人々をこの地に呼び出す魔法だ。



「日が頂点まで登りましたね―――そろそろ、始めるのですよ」


「ああ、ラストステージの開幕だ」



 取り出した魔剣は、地魔反戈(どまのさかほこ)―――イベリスから見て異世界の国日本の、高千穂峰山頂部に存在する天魔反戈と対を成す魔剣であり、神によって作り出された一振。


 それを地面に突き立てると、矛先がこの土地の魔力と繋がり魔法陣へと魔力を流す。


 この地へ呼び出すは、世界各国の戦士達―――己らの国を護らんとする兵や、傭兵、聖七冠を含めた冒険者などなどを、纏めてこの地へと呼び出したのだ。



「さあ、始めようか―――創世神話の十二時間を」

 

読んでくださりありがとうございます!

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(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)


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