魔導の王城
観客達は皆、無意識下で同じ考えを共有していた―――この祭を締め括るのに、お前では役不足だと。
しかし、砕けた落閻石を見てその評価は一変する。
この祭りの締めだけじゃない―――聖七冠の一位がこいつでもいいッ! 魔導王マリーの攻撃を一歩も動かず凌いだこの男であれば、最強を名乗って不足ない!
そんな考えが、皆の脳に刻まれ始めた。
「|疾風神雷《マスキュリンライジング 》」
「マリーちゃん、この魔法と一番コンビネーションを使ったのは僕だよ」
「……………………容易じゃないわね」
万雷を降り注がせる魔法を発動するも、数多もの雷を擦り抜けて魔力弾はマリーを襲う。
魔法精度に気を使えば回避が遅れ、回避に気を遣えば魔法の制度が落ちる。
聖七冠の中で最もマリーの扱いに最も長け、最もマリーとの仕事を熟しまベネティクト―――それ即ち、最もマリーの魔法を見慣れている。
一見空間を埋め尽くさんばかりの雷を降り注がせる魔法であっても、見慣れれば隙も見つかるというものだ。
案の定、放たれた魔力弾の回避に専念することとなったマリーは魔法の意地を諦め雷を停止。
ベネティクトはまたも一歩すら動かず、攻撃に対処して見せた。
「次は僕のターンだ」
「ッ………………神樹兵!」
マリーの視界に二発の弾丸が映る。
零秒で放たれたソレに反応する様に、マリーは二体の神樹兵を作り出して自分を追わせ。
ホーミングしてやって来る魔力弾と自身との間に飛び込ませる事で、マリーを守り抜く。
だがそれだけで防げる様な緩い攻撃を仕掛けるベネティクトではない―――敢えての、一秒かけた魔力弾を発射済み。
初発零秒で放った魔力弾と全く同じ軌道、魔力弾を魔力弾で隠す様に放ったのだ。
盾である神樹兵を破壊した後、第二波である魔力弾が空飛ぶ箒の尾を一部掠め。
バランスを崩したマリーは、地上への墜落を余儀なくされる。
「ヒット」
「砂獄………………!」
墜落より先に、破壊された神樹兵を砂に変えて床との間にクッションを作る。
「………………大魔樹林!」
砂のクッションと魔力による身体強化があるとはいえ、強く体を打った事で呼吸が苦しい筈の状態よりマリーが唱えた。
すると、フィールド一体に巨大な樹木が出現―――途端に戦場は、開けた平地より樹林と化した。
「砂獄、砂場の孤城―――紅炎、|疾風神雷《マスキュリンライジング 》、英霊騎士、英霊巨盾、英霊騎槍、英霊弓手、英霊術師」
「………………相変わらず、壮観と言う他ないね」
大魔樹林で樹林を作り出し、敵の視界を遮ると同時に質量を確保。
その樹林を砂獄で砂に変えて、それを砂場の孤城で城の形に形成。
作り出した砂の城に紅炎の衣を纏わせ、その上で降り注ぐ|疾風神雷《マスキュリンライジング 》で敵の侵攻を阻止。
その上でマリー本人と同等の防御魔法を施した魔力兵を生み出して、降り注ぐ雷の中でも戦闘可能とする。
怪物じみたレベルで均衡の取れたマリーの攻撃力と防御力を持ってして生成されるソレはマリー以外を護らぬ。
マリー以外の全てを殲滅する、無敵の要塞だ。
名を――――――。
「即席孤軍要塞………………!」
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