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三位

 ここまでの戦い、フェンデルはずっと喧嘩スタイル。

 相手を煽る様に両腕をだらんとぶら下げて防御はナシ。


 だがそれを撤回―――今、初めて構えた。

 

 股を割って深く腰を下ろし、秋臥に左膝を向ける様な姿勢で半身に。

 前方に出た腿に左腕を乗せ、空いた右腕は腰付近にセット。


 秋臥の攻めを待つ姿勢だ。


 それを見て、後手に回らされる事は無いだろうと秋臥も理解。

 なんの警戒もナシに無造作にフェンデルの間合いへと侵入し、ジャブで仕掛けた―――この着位祭初使用、零秒の攻撃だ。


 秋臥が放つと心に決めた瞬間放たれていたソレを、フェンデルは回避―――普通の早いだけの動き。

 だが、速度差はフェンデルの持つ才能と経験で埋めた。

 秋臥が零秒のジャブを放つよりコンマ一秒早く、回避の動作を開始。

 ジャブが放たれた瞬間、既にフェンデルは攻撃の機動線上から逸れていたのだ。


 腰を深く下ろした事により、精密性などなく大きくのけ反っただけの回避でも体幹は安定。


 そこから放たれた鉄拳は、腕全体を大きくしならせながら秋臥の顔面へと向かう。

 紙一重の回避―――だが、風圧だけ頬が切れた。


 攻撃の勢いで体が流れた所、合わせる様に秋臥はハイキック。

 前に出た軸足を回転させる事で、流れる体を逸らしハイキックを回避したフェンデル。

 一瞬で耐性を安定させると、右のストレートを放った。

 秋臥は耐性整う寄りも先に、完璧なタイミングでのクロスカウンターを放ち。


 首の回転だけでそれを受け流したフェンデルが、クロスカウンターで自分の腕周囲を回る秋臥の腕を掴み―――力一杯放り投げた。


 空中で回転しながらも、冷静に対処する秋臥。

 薄氷の壁を五枚程用意し、勢いを殺す壁にしようとするが効果なく。

 結局は身体強化を施した状態で、観客席に繋がる壁へ足を突き刺す状態で着地する。



「よっこら………………っしょ!」



 老人臭い掛け声と共に壁を蹴り突撃―――フェンデルに向かい、勢いの乗り切った飛び蹴りを叩き込んだ。

 眼前固められた両腕の防御に衝撃が突き刺さる。


 着地せず、蹴りの追撃。

 フェンデルが攻撃を弾く勢いで空中に止まりながら、防御に使われる腕の疲労を待つ。


 通常、防御で腕が疲れるなどフェンデルとしてはあり得ない話―――だが、今や秋臥の打撃は聖七冠レベル。

 しっかりと魔力強化を帯びた一撃一撃が、フェンデルの腕に疲労を蓄積させて行く。


 このまま続けば、いずれ強固な防御を打ち破り、決定打となる一撃が入るであろう。



「んな、つまんねえ事させねえぞッ!」


「こっちとしては必死なんだよ…………っ!」



 両腕を勢いよく広げ秋臥を弾き飛ばすと、今度は即着地。

 二人の視線が交差した―――ここまでの攻防で、疲労狙い、小細工、小技は通じないと検証済み。

 決着を付けるには、会心の一撃が必要だ。



「いい気分だなァ―――そろそろ決めるか、どっちが強えかをよお」


「ああ頃合いだ―――最後は、単純に行こう」



 二人揃って、右腕に魔力を集中。

 可能な限りの身体強化を施した所で、互い間合いに入り拳を握った。



「気合い入ってっか?」


「今に分かる」



 防御に回す魔力は零。

 全身に身体強化を施したわけではないので、今の秋臥に零秒の攻撃はない―――つまり、完全に対等な戦いである。


 お互いノーガードで殴り合おうというのだから、一見気合の入った喧嘩に見えようが、その本質はガンマンの決闘に近かろう―――僅か一手、一瞬の勝負を制したものが勝つ。


 攻撃の予備動作を隠す事は無い―――よーいドンと一緒、足並み揃った攻撃の開始だ。

 

 深く踏み込み、腰を捻り、全身の力を拳へと伝達―――次の瞬間響いたのは、打撃音よりも破壊音と呼ぶに相応しい、人の肉が爆ぜる音であった。


 この決着は、観衆が見た―――拳王に真っ向より、殴り勝つ男が居た。


 勝者、加臥秋臥―――聖七冠、三位確定である。


(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

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