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着位祭

 イベリス達が隠れ潜む中、世間は同時多発した話題で賑わっていた―――とある戦場に、突如として巨大な壁が現れた。

 国境に沿う様に厚さ二十メートル程の、巨大な壁が。


 如何なる攻撃をも弾き、瞬時に戦場を隔ててしまったその壁は赤く、まるでその戦場で流れた血が迫り上がったかの様。

 それを気味悪がって、戦場の兵達は侵攻を停止した。


 また、世界各地で強力とされている魔物が多数狩られる現象が勃発した。

 ドラゴン、リヴァイアサン、クラーケン、バジリスク、キングワーム、メドゥーサとetc。


 どの冒険者ギルドにもそれらの魔物が持ち込まれた記録は残っておらず、冒険者や傭兵による仕業ではないと推測。

 魔物を刈る新たな魔物が現れたか、無名の達人が魔物を倒して回っているのか―――どれにしろ、人々は新たな脅威の出現か心強い英雄の誕生か、と口々に噂を広めた。


 それ以外にも世界各地で魔道具の数が激減していたり、空が歪んでいたりと、話題には事欠く事ない日々が続く。




 ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘



 クロニクル、空中要塞花園(スカイアヴァロン )―――そこに聖七冠の二位から六位までの面子とクロニクル総裁であるルーベルトが揃っていた。


 魔法によって不自然に形成された樹木の木に腰掛ける七名の表情は戦場にいるかの様な真剣なもの。

 それもその筈―――本日ルーベルトに呼び出された案件は、並の国家転覆などよりもよっぽど重要なものなのだから。



「今回諸君に集まって貰ったのは他でもない―――聖七冠(セブンクラウン)七位、聖女セリシア並びに一位、剣聖ルークの、脱退に関してだ…………!」



 二人揃い、提出された脱退届け―――既にそれは受理されており、二人は冒険者を引退。

 ただの剣士と聖職者の身分となった。


 つまり、現在聖七冠の一位と七位は空席。

 冒険者であれば、皆喉から手が出るほど欲する席であろう。



「脱退した二名より、枠埋めの推薦がされている―――まず一人目はサレン・メノスティア、エルフの女王だ」


「実力に不足はないんじゃないかな―――寧ろ、僕達が劣るぐらいだ」



 ベネティクトが言う―――だが、その劣るという言葉は軽く。

 かつての様な、自分の老いによる引け目ではなく、ただの軽口として放たれた言葉だ。

 


「劣るかは他として、クロニクルとしても不足はないと考えている―――そして二人目だがルークより、加臥秋臥を聖七冠へという提案が為された!」



 瞬間、秋臥と戦いを共にした者以外が皆一斉に驚愕して見せる。

 以前は敵対したとて問題にもならないと評価された男が、聖七冠にとルーク・セクトプリム直々に推されるまでとなった。


 実物を知らぬ者達からすれば、驚いて然るべきであろう。



「こちらも実力は聖七冠に不足ないと考えている―――だが、一位と成れば話は別。諸君この中に、加臥秋臥に負けると自負してる者は居るか?」


「無いわね」


「どうだろうね」


「舐めんな」


「まだ負けたくないね」


「あり得ん」



 即答する聖七冠の面々―――それに満足した様子で微笑むルーベルトは「そこでだ」と前置きをして、皆が囲むテーブルを拳で強く打った。



「加臥秋臥及びサレン・メノスティアの着位祭を行うッ!!!」



 着位祭―――それは祭りとは名ばかりの聖七冠が出揃う勝ち抜き戦。

 新たに聖七冠へと成る者が一番下の順位から最上位まで勝ち抜き戦を行い、着位する順位を決定するというもの。


 近年の聖七冠就任者というのは、ルークやマリーの様な極致に至った者が先代からその位を譲られたものばかり。

 故に着位祭が行われるのは、聖七冠の面々として血湧く久々の腕試し開催と同義なのである。



「所で聞きたいのだけれど………………その推薦された二人、聖七冠就任を承諾したの………………?」


「まだ確認は取っていないが、双方冒険者ギルドの登録をしている。拒否権は無いようなものだ」


「ボス、貴方時々バカね」



 マリーは無気力に言う―――その言葉には、ルーベルトも眉を顰める。



「もう聖七冠にルークは居ない………………以前ならばとも知れず、今ではボスの勝手に起こったサレン女王を止めれる者が居ないのよ。少し、剣聖ルーク・セクトプリムというぬるま湯に浸かり過ぎたんじゃないの?」


「私としてはそのような考えを持つことはないな」


 

 テーブルを打った拳を、そのまま握りしめて自身の眼前へと運ぶ。

 一切魔力を纏う事のないソレを見せつけた所で、一般ではただの思い上がりに過ぎないであろう―――だが、それを今言うのは他でもないクロニクル総裁。

 聖七冠を知り、その頂点であるルーク・セクトプリムを知る彼の言葉だ、思い上がりの可能性など万に一つもあり得ない。



「私が居る―――クロニクルが君達より前の時代より聖七冠を束ね、指揮してきた全ての所以だ。エルフの女王を相手取ったとて、実力で劣る事など決してあり得はしない………………! が、そうだな。君の言うことにも一理ある。呼べるか?」


「ええ、もう居場所の探知は済ませているわ」



 マリーは黒い空間の切れ目を開く―――そこからすぐに現れた。

 

 サレンと秋臥の双方、何故かかつてない程にキレていた。

 

ジャンプ+にあった読み切りの濾過、カッコ良過ぎない?


(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)


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