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伝説の終わり

 ドロシーの扱う魔法は差異。

 薬品(ポーション )を作り出す通常の工程に魔法の行使を挟む事で、作り出される薬品の効果を変えてしまう魔法だ。

 変わった結果というのは火を吹く薬品であったり、大波を瞬間凍結させる薬品であったりと、超常的なものばかり。


 故にドロシーが作った薬品の内半分、通常の工程に魔法を挟んだものは市場への流通を禁じられているのだ。


 そんな危険物の中で、一際危険とされる薬品がある。

 名を猫の雫―――彼女が魔女の名を独占する所以であり、かつて屈強な魔王軍ですら恐れた薬品。


 イベリスを捕らえて離さないドロシーの双眸は黄金で、正に猫の目が如く―――その効果は、至極単純なものであった。



「猫に睨まれた鼠とはこの事ね―――恥じる事はないわ。魔王もコレ苦しんだのだもの」


「少し展開が早すぎやしないかい…………? まだ前戯だよ」


「前戯で果てるなんて堪え性のない人なのね」



 指先一つ、イベリスが己の意思で動く事は叶わなわず。

 視界に入れた全ての生物を拘束する魔眼―――かつてサレンの瞳に宿っていた力を抽出し、ドロシーの体が耐えれる程度に希釈。

 百五十年の研究を経て量産に成功し、目薬型の薬品としての取り扱いを可能とした。


 

「貴方ハイヒューマンね―――これで絶滅と思うと惜しいけど、これも世界存続のため。許さなくてもいいわ」


 

 新たに出した明らかに毒々しい薬品を持って、ゆっくりと箒を前へ進める。

 イベリスの顎を指先で引き上げ、軽く口を開かせると薬品を流し込んだ―――濃縮された魔瘴と、魔物八百種類の毒肝、ドリアードの卵子によって作られた薬品。

 聖女セリシア以外では解毒が不可能と言われるソレを瓶一本分飲ませ切ったら、イベリスの腹の中で魔力が発生するのを確認して離れた。



「魔剣の対策―――慣れていない子達は態々、その効果によって変えるらしいわね。でも結局は剣なのだから、振らせなければ良いだけなのよ」



 魔瘴と魔物の毒に全身が蝕まれるイベリスの腹を突き破り、荊の繭が発生。

 全身が包み隠された頃、漸くドロシーはイベリスを視界から外した。



 「本当の事を言うとね、魔王討伐の手柄を奪われてしまった事凄く悔しかったの―――だから、今回は名誉挽回ね」



 それだけ残して、箒で立ち去ろうとするドロシー。

 死体の回収をどこに任せるかなどと考えながら飛行し、クロニクルにやらせれば良いかなどと思いついた瞬間であった。


 背後より、赤い刃が胸を貫いた。



「――――――不知火の魔剣。エティシアからの報酬として作らせた、僕の持つ最強の三振りが内一振りだよ」


「貴方、どうして………………!」


「どうして? 今から死ぬ君に教える必要があるとは思えないなあ」



 刃を引き抜くと、バランスを崩したドロシーは海へと落下。

 海面に浮きながら、回復用の薬品を取り出そうとポシェットへ手を伸ばし、瞬間肩から先を切り落とされた。



「さようなら、魔女ドロシー―――伝説に終止符を打つことが出来て、光栄だよ」




 ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘



 自宅でフェルト人形を作っていたマリーの元に、一匹の黒猫が現れた。

 日々強固に重ねられた自宅を囲む結界全てをすり抜けて、ワケなさげな様子で。


 小さなカバンを背負っており、開けると中には魔力の籠った手紙と地図、そして一本の薬品(ポーション)が。



「ドロシー叔母様………………無駄にはしません」



 家の中から空間を割いてワープゲートを生成。

 地図に記してある位置は強固な結界に包まれた完全密室―――マリー以外では察知ですら出来ぬ様な地下深くにある、ドロシーの研究施設であり、少女時代からのマリーの遊び場。

 すっかり見慣れた地下空間へと踏み込むと、ドロシーの金庫へと真っ直ぐ向かう。


 魔力認証―――これまた強固な結界に包まれており、ドロシーとマリーにしか開く事の出来ないもの。


 中には一つの義眼―――マリーが初めて作った魔道具であった。

 

サクラローレルめちゃくちゃ可愛いな

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