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痴態

「隊長…………これ! 腕!」


「砕けたな、だったら何だ?」


「少し困ります」



 演技でもおふざけでもなく、本当に困った様子。

 左腕で砕けた部分を触りながら、五秒ほど熟考する。



「隊長を殺すときも、隊長に殺されるときも、全力でハグをして密着しながらにしようと思ってたんです―――でもこれじゃあ無理そうなので、今日は撤退しようかと」


「逃すか…………!」


「隊長ったら、熱烈」



 骨互裏が嬉しそうに言った瞬間、最初に破壊した筈のドラゴンの骨で作られた蛇腹剣が一人でに動き出して秋臥を襲う。


 氷の壁を生み出して止めようとするが容易く破壊―――その先、盾の様に構えられていた蒼燕剣と激しい押し合いを演じ、数秒の拮抗の後に押し勝ち、秋臥を十メートル程後退させた。



逆垂氷柱(さかだるつらら )ッ!」

 


 地面から生えた氷柱にて、今度こそ蛇腹剣を破壊。

 これから追おうと骨互裏の居た位置へと目を向けると、既に姿はなく撤退を成功させた後であった。


 下唇を噛み締める秋臥の周りに流れた静寂―――だが、戦いが終わったのかと辺りの住民がチラホラと姿を見せ始めた事で完全な静寂とはならず、展開は俄然動き続けていた。


 突然現れて街を荒らしたのだ、秋臥はこれから自分が行うべき行動を模索。

 逃亡か弁解か―――そうしている内に、元々昼食に寄った蕎麦屋の店主が面白いものを見た様な表情で近づき、肩へと手を置く。

 そこに恐れ、警戒は一切込められておらず、スポーツの試合を終えた選手に対する態度の様であった。



「街とお店、突然すみませんでした」


「火事と喧嘩は冥の花―――この程度、冥国にとやかく言う奴は居ねえよ。そうだろお前ら…………!!!」



 瞬間、辺り一面の大歓声が沸き起こった―――何が起きているのか理解が及ばず、秋臥は目を点にして棒立ち。

 男共が片付けの前にと酒樽を運び出し、女衆は無事な家で飯を作り。

 あっという間に戦闘跡が、宴会場へと早変わりしているではないか。



「驚いたじゃろ―――国の者達は我が子も同然。この程度の戦いじゃあ乳飲子も目を覚まさんわ」


「ラジェリス…………!」



 唖然としている内に戻ったのだろう。

 ラジェリスはイカ焼きを右手に、左手に杯を持ち語りかけて来た。



「ヌシ、酒はイケる口か?」


「好んで呑みはしないけど、まあまあ」


「なら呑め―――ヌシが巻いた種じゃろ? 付き合いと思って、行って来るのじゃ」



 両手が塞がっているからと、秋臥の背を蹴って祭り騒ぎの中へと突き飛ばす。


 騒ぎが収まったのは、それから八時間も後の事であった。




 ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘




「という事で、向こうに居場所がバレてる」


「当たり前じゃろ」



 骨互裏が現れたシチュエーションと、その後の状況を事細かに説明。

 それをラジェリスは、小指で耳をほじりながら聞いていた。



「当たり前…………? どういう事だ?」


「姉妹じゃぞ、互いの居場所ぐらい知っとるに決まっとるじゃろ」


「互いの…………? じゃあ向こうの場所も分かってるのか?」


「大方の。もうこの話よくないか?」



 詳しく説明する気は無し。

 ただ単に情報が足りていないわけではなく、解説する必要を無いと判断したのかと秋臥は考え、これ以上追求する事は無く。


 ラジェリスに足りていないのが情報ではなく考えという筋は考慮に入れていない。



「さて、では本題とするかの―――これより、通命(つうめい)の儀を行う」



 冥国の中心に位置する城の最上階―――ラジェリスと秋臥のみが居る密室で、事は行われようとしていた。

 秋臥の魔力を入れ替える為に行われるソレは、二人の命を重ねる事で達成される儀式。


 多くの魔導士の中で実際に行われ、その効果を実証されたものである。



「………………先に、何するか説明を。場合によってはこのシチュエーション、かなり不味い」


「ヌシには今から、儂を抱いてもらう」


「お家に帰らせてもらいます」



 部屋の中には布団が一つ敷いてあった。

 抱くというのがハグ方面でなく、性行為たというのは決定的だろう。



「帰らせんぞ、強くなるんじゃろ!」


「嫌だ、家に帰る…………! 帰るったら帰るんですよ…………!」


「馬鹿餓鬼抜かすなッ! 神様を抱ける二度と無いチャンスじゃぞ!」


「そんなチャンスいらない…………!」



 既に着物を脱いだラジェリスが、城から逃げ出そうとする秋臥の袖を掴んで引き留める。

 逢瀬と言うには余りにも馬鹿馬鹿しい、色気のかけらもない性交渉であった。



「俺は香菜以外とは………………!」


「あの娘から、既に承諾は得ておるわッ!」


「――――――へ?」



 次の瞬間、秋臥の周囲にある酸素以外の成分が消滅。

 意識を一瞬で刈り取ってしまった。



「随分と悩んでおったが、ヌシの気絶済みという条件下での」



 これ以上の抵抗は許されず―――無意識下にて、儀は密かに執り行われた。

最近シモ関連の話多くない?

(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

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