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第17話 獰猛ヘイティンの発生源は......?

 現実は非情。


 ヘイティンは、赤子の手でも捻るかのように、俺の手をがっちり掴んだ。


 手が、離れない! こいつ、このまま握り潰すつもりだ!


「調子に乗ってんじゃっ! ないわよっ!」


 俺に気を取られたヘイティンの後頭部に、これまた痛烈な跳び蹴りをかますマイ先輩。


「アアァアアアッァアアッァアアッ!」


 ――タタタタタタ。


 マイ先輩の強力な急襲を受け、慌てて距離を取るヘイティン。


 いとも簡単にジャンピングキックを命中させたが、針の穴を通すくらいタイミングがシビアであった――経験値も大きいだろうが、誇張抜きで、マイ先輩は紛れもなく天才だ。


「調子に乗ったヘイティンの鼻っ柱をへし折る、一級品の蹴りでした」


 不快になるような発言ではないはずだが、何故かマイ先輩は頬を膨らませていた。


「調子に乗ってるのはミナトくんじゃない!」


「え? 俺ですか?」


「どう考えたってそうでしょ! なーにが『知ってるか?』よ」


 戦いの最中の発言を、冷静にツッコまれたら、羞恥心で死にそうになるんだが……。


「そ、れ、にっ! 何よ、『命取りになるんだぜ!』って。説教しておきながら、五秒後にはひれ伏してるじゃない」


「うん、はい、お願いします。これ以上言わないでください」


 心がもたないから、泣くよ? 今ここで。


 ……ひとまずこの件は脇に置かせてもらうとして。


「今回のヘイティンは、常軌を逸した戦闘能力がありますね。骨が折れますよ」


「骨が折れるだけならいいけれど、骨折り損になるかもしれないわね。これほど獰猛なヘイティンを発現させたのは、一体全体どんな人なのかしら」


 インターネット利用者の憎悪や孤独など、マイナスの感情が肥大したことが原因となって誕生する魔物――ヘイティンを、発現させてしまった人間に悪意はないし、責めるべきではない。大抵の場合、いじめや仲違いといった人間関係の縺れによって、心が汚染されていきヘイティンが生み出される、という複雑な経緯があるからだ。


 あくまでインターネットを利用していなければ、ヘイティンを発生させてしまうことはないのだが、生憎、現代はSNS最盛期。人々の生活に欠かせないツールだからこそ、負の権化は際限なく湧き出てくる。


 SNSが流行する前は、ヨシミ博士が自らヘイティンを退治してきたのだが、根絶どころか増加の一途を辿っている。この場に百戦錬磨のヨシミ博士がいれば、ヘイティンの動作を封じることは造作もなかったのかもしれないが、長年の戦闘で体を悪くしているため、残念ながら前線に加わることはない。ここ数年はヘイティン退治の役目を、マイ先輩とバトンタッチしている。


 ヘイティンを倒す方法は二通り。一つは、一定のダメージを与えると、『人型のヘイティン』――『コア状態』に変化するので、そこから心情に訴えかけ、闇を払拭してやることだ。もう一つは、ヘイティンを絶命させるというものだが、選択肢としては論外だ。前者は暗闇へと誘われた心を洗い流して、現世に連れ戻すことができる。しかし、後者を取れば、発生源となった人物も命を落とすことになる。それが明らかである以上、前者を選ぶことは必然だ。

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