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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第5章 St. George And The Dragon
95/219

5-5

引き続き、

第5章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

蒼龍の守護地スカイドラゴンフィールド ログハウス

 守護地(フィールド)に戻って幾日かを経て、昼間の作業も終わり、夕食と入浴を済ませて、野外に置かれた大テーブルに皆が集まっていた。ただ、皆といってもディアナとペノンズは、作業場に籠もりきりで、ここにはいない。

 ツキの方針で、アルコール飲料が守護地(フィールド)にはないため、それ以外で各々好みの飲み物を手にしている。

「ディアナとペノンズの作業も捗っていると聞いている。ログハウスの作業も順調だ」

 一応は、この守護地(フィールド)の主であるため、ブルーが先ずは口を開いた。各作業の進捗などを皆に報告しているのは、守護地(フィールド)に到着してから、全員で集まるのは久しぶりであったから。

 ログハウスの作業が順調だと聞いて、リーネとノーミーが胸を張る。この一人と一体は重機代わりに大活躍をしていたからだ。

「いま、作業はブルーの言ったとおり順調だが、情報も集まってきたから、帝国への対策を話したい」

 ブルーの言葉を引き継いでアキラが口を開いた。サインとノーミーがブルーに味方することに決め、それを筆頭族長であるサイモンが公表したため、協同国の世論は一気にドラゴン守るべしとなった。正しくは、協同国だけではなく、獣人のほとんどがドラゴンを守ると決意していた。

 情報を得るために、毎日のようにサインはフロレンティーアでサイモンと打ち合わせており、そんな中で意外な情報を持ち帰っていた。

 人虎のフォイルが種を挙げて、アキラの下でブルーを守ると宣言していた。スノウが前に予測していた事ではあるが、まさか直接アキラの下につくとは思わなかったので、サインからそれを聞かされたアキラは大いに驚いたものだ。ノーミーがそれを側で聞きながら、脳筋だーと笑っていたが、断っても絶対に聞かないと言われ、アキラはしぶしぶ受け入れるよう、サインに返事を託したのだ。

 人狐については、一応はサイモンに賛成の意を伝えたものの、最初は動きが消極であったため、ツキからの伝言をサインを通じて送ってみたところ、サイモンが驚くほどに積極的になったという。

 ちなみに、伝言の内容はアキラは知らされておらず、ブルーも知らないようだ。

 王国は静観すると、ディーネからブルーに連絡があり、財団(ファウンデーション)は国境での紛争が続いているため、そちらが片付き次第、判断したいとリータから連絡があった。

 商人である、この場にいないローダンは、協同国を支援すべく、必要な物資を川の流れの如く、協同国へ送り始めており、陣頭指揮をとって奔走している。

「俺たちの勝利条件はブルーを守り抜くこと。帝国やシルに勝つことではない。消極的だけど、いまはそれ以上は思いつかない」

 そう言いながら、アキラには一つ気がかりがあった。第三者、水晶(クオーツ)を手に入れようとしている賢者とやらの存在である。これが、横から殴りかかってくる可能性を絶対に忘れてはいけない。

 そんな時に、首を傾げていたリーネが元気よく手を挙げたので、話すようにアキラが促した。

「だけど、わんわんって死なないよね」

「そうだ、わんわんは死なない!」

 テーブルに前脚をついたブルーが、リーネの言葉に胸を張ってどや顔を晒す。

 いらっとするアキラだが、ここは置いておくことにする。

「そうだよな。シルは何か考えがあるのかな」

「あのう、もしかするとですけど、ブルーではなく、アキラさんを殺すのが目的で、ブルーはついでではないでしょうか」

 おずおずというように、スノウが片手を挙げて口を挟む。

 それを聞いたブルーの機嫌がみるみる悪くなっていく。慌てたスノウが、自分の前で両手を打ち消すように左右に振った。

「ついでではなく、先ずはアキラさんを狙うのではということで」

 しどろもどろである。そして、ものは言いようである。

 そうならばと、ブルーの機嫌が戻る。

 普段の様子では面倒見が良くて、器が大きそうなのに、時折その器がとてつもなく小さくなるのは何故であろうかと、アキラは首を捻ってツキに視線を送って尋ねるが、ツキも苦笑を浮かべて首を振るばかりであった。

「俺を真っ先に狙うっていうのは分かるけど、それもブルーを殺せる算段があってのことだろう」

 アキラは心当たりはあるかと、ブルーに尋ねたいところだが、そうそう自分の弱点を語ることはないだろう。

「ドラゴンよりさ~、強いのがいればいいじゃん。母さんとかさー」

 ここでノーミーが語る母親とは、星の精霊ティターニアである。すべての大精霊を、精霊達を作り上げた母親だ。ブルーは気易げに、ニアと呼んでいるが。

「馬鹿言うな。ニアと戦うのならば、俺の制限が外れるぞ。そうなったら確実に俺の勝ちだ」

 言い切るブルーに、皆が、いやライラだけはすました顔だが、驚きの視線を向ける。いま、ブルーは言い切ったのだ、自分はティターニア以上の存在である事を。

 ドラゴンとは、生きとし生けるものすべて、大精霊でさえもその詳細を知ることのない、謎の存在なのだ。誰が作り、何のために、誰のために守護地(フィールド)を守っているのか。

守護地(フィールド)をドラゴンは所有しているわけではないと聞いたことがある」

 ぼそりとライラが呟いた。それに頷くブルー。

「秘密でも何でもない。俺はここをニアから預かっているだけだ」

「何のために?」

 驚きよりも、好奇心が勝ったのだろう。勢い込んでスノウが尋ねた。

 だが、ブルーはあっけらかんと答えを返す。

「それはニアに聞け。俺は古い友人に頼まれただけだ」

 答えを言ったわけではないが、ブルーはティターニアを友人と呼んだ。

 ドラゴンは精霊であるか、そうではないという論争は古くからされているものだが、答えは未だに出ていない。だが、獣人であるライラとスノウは、ドラゴンに信奉を捧げるのは間違っていなかったという思いを噛み締めていた。

 知らずライラとスノウの目から、涙がこぼれ出す。

「泣くこたー、ないだろう」

 狼狽えたようにブルーが姉妹を慰めると、二人ははいと頷いて涙を拭った。

「ここで悩んでいても、シルの考えが分かるわけじゃない。出来る事をしていこう」

 場を改めるようにして、アキラが提案を行う。先ずは、守護地(フィールド)を守るために何かをしようと。

「リーネ、守護地(フィールド)の境界すべてに結界は張れるか」

 その言葉にぎょっとした表情を浮かべるスノウ。いかに優れた魔術師であっても、それは不可能であろうと。ただ、即答せずに、こめかみに人差し指をあてて唸るリーネが不気味であった。

「この前に、島で結界があったよね」

「ああ、サインの島の結界か?」

 アキラが頷き、スノウがまさかという表情になった。

「精霊が、あれなら真似出来るよって」

 常識外れだとスノウは叫びたかった。あれを斬ったアキラもそうだが、見ただけで、精霊に真似出来ると答えさせるリーネも同じだった。

「姉さん、驚くのは止めにします」

「なんだ、私はとうに驚きなど捨てているぞ」

 そうだったとスノウは肩を落とすのだった。


脳筋虎:「俺はやるぜ!」

社畜男:「そりでも牽くのか?」

わんわん:「溝にはまったんだが」

社畜男:「溝にはまりやすい犬種だっけ?」

いや、ホントにはまりやすい犬種なんですよ。

脳筋虎は活躍します。

ホントだよ。

だいぶ先の話だけど。


次回、明日中の投稿になります。

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