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引き続き、
第4章を投稿いたします。
どうか、よろしくお願いいたします。
進行の都合上、
極端に短い投稿になってしまいました。
まことに申し訳ございませんが、
ご容赦願います。
「あーしも、気づいたらベッドで寝てたんだけど~」
「お前は少し黙ってろ」
ノーミーが運んだのは、アキラだ。そもそも不審な点はないので、ブルーがしゃべらないようにノーミーにクギを刺す。
しばらくブーブーと言っていたノーミーだが、苛ついたブルーが睨み付けるとようやく静かになった。犬になっていても、さすがにドラゴンの貫禄か。
「手がかりがないな」
誰かが、サインの寝室に出入りしていたことは間違いがない。石版を仕掛け、サインをベッドに運んでいる。それが同一かどうかは断定出来ないのだが。
ただし、ここはサインの住まうところで、その場所に大精霊であるサインに気づかれずに石版を仕掛けている。人であっても勘の良いものであれば、自分の寝室に人の出入りがあれば、その痕跡に気づくものだ。しかし、サインは何も異常を感じなかったそうだ。あるいは、異常を感じる前に止められてしまったのか。
サインだけの証言では、仕掛けた者を想像すら出来ない。完全に手詰まりだった。
「確認だけど、サインが寝ているのではなく、止まっていると気づいたのは何故だ?」
「それは、そうでしょう。あーしは特別だから。大地の精霊だよ。リータやディーネと一緒にして欲しくないの」
農耕に縁が深いため、いち早く気づけたのだとノーミーは主張する。いずれは他の大精霊も気づいたはずだと。
一応は筋が通っているのだが、今回の件は大精霊だからといって、無関係とは断定出来ない。
そして、謎の石版だ。
直接触るとどんな影響があるのかは分からないため、アキラが手に分厚く布を巻いて掴みあげ、今はこの談話室のテーブル、アキラの前のテーブルに置かれていた。
「何か感じるか?」
「何も。もう効果は消えている、と思う」
アキラの質問に、どこか歯切れの悪い答えを返してくるブルー。
「効果が残っているなら、サインとノーミーに影響があるはずです」
そんなツキの言葉に、もっともだとアキラは頷き返す。
「砕いておくか」
そう言うなり、アキラは大太刀を抜刀して、柄頭で思い切りよく石版を砕いた。証拠として残しておくべきだろうが、形を残しておいて再び効果を現してはしゃれにならない。
「とりあえず、水晶をサインに奉納すればという話しは、謎の賢者の嘘だったな」
ライラとスノウは未だにサインの部屋にいるため、遠慮なしにアキラはそれを口にした。
「そうなら、その賢者とやらは、何が目的として水晶を手に入れ……。ん、どうした?」
話しを途中で止めて、ブルーがじっと見つめてくるサインに言葉をかけた。
「犬じゃなくて、ブルー?」
「そうだ、犬じゃない」
何故か胸を張るブルー。
「今度は犬。変なの」
「変て言うな!」
どうやら、サインとはかなりのんびりとした性格をしているようだ。いまさらその質問かと、アキラとツキは苦笑を浮かべるが、リーネはニコニコしていた。
「わんわん、可愛いよね!」
「うーん、可愛い?」
首を傾げるサインに、先の自慢げな様子も消えて、がっくりと肩を落としている。可愛いと言われたかったのかと、アキラとツキは気持ち引き気味だ。
その時、談話室の一角が一瞬白くなった。反射的に大太刀の柄を握るアキラの手をツキが抑えた。
空間が形を作り上げ、シルが部屋に出現してきた。
「?どうしたの怪訝な顔して。私、変?」
「突然現れたんだ、警戒するだろ、普通」
柄から手を放したアキラが、全身の力を抜いて椅子の背もたれに身体を預けた。
手近な椅子に腰を下ろしたシルは、サインに微笑みかける。
「戻ったんだ」
「うん」
サインの短い返事を聞いてから、シルはテーブルの上で砕かれた石版の破片に視線を移した。
「良く見つけられたね」
その言葉に、アキラは身体を硬くする。シルの言葉は、石版が隠されていた事を知っているかのようだ。
知らず、無意識にアキラは柄に手を再びやり、ツキがシルから距離をとり、背後にリーネをかばった。そのリーネの指先には小さな魔方陣が浮かんでおり、いつでも攻撃ができるように構えていた。
ブルーが鼻にしわを寄せ、牙をむき出しにした。
「何を知っている?」
「ごめん。その石版の事を知っているし、サインが意識を失って裏返っても何もしなかった。ただ、見ているだけだった」
アキラの質問に詫びるシルだが、その表情には欠片も悪いとは思っていない表情を浮かべている。
「ちょっと、結界に細工はさせて貰ったけど。近くで観察するのに、裏口は必要だろ?」
「全部知っていたんだな。それじゃ、誰がこんなことをしでかした。誰が水晶を手にしたがっている?」
「内緒」
そのシルの言葉に、アキラは反射的に鯉口を切るが、ブルーが前に立って踏み込みを遮断した。
「古き盟約だな」
そのブルーの言葉に、シルの顔に一瞬だけ影が差したのをアキラは見逃さなかった。
シルが望んではいない盟約。一体誰と交わしたものか。
「話してくれ」
「駄目、話さないのも盟約に含まれているから」
シルの言葉に、ブルーまでもが頷いている。
「ブルーまで盟約に縛られているのか!」
「いや、俺は盟約は交わしていないし、内容も知ってはいない」
「知らずに、殺そうとする私を守るのか」
「ドラゴンは死にやしないからな」
ブルーがにやりと笑いかけ、シルの足下に近づき、脛に身体をすり寄せた。
そんなブルーに跪いて抱きしめるシル。
顔を伏せ、ブルーを抱きしめたシルが、振り絞るような声を上げた。
「古き盟約に従い、アキラ、そしてブルー。あなたたちを殺します!」
「馬鹿な、何を言っている?」
アキラは殺せはするだろうが、一体どうやって不死であるドラゴンを殺すというのだ。それとも、何かの手立てがあるのか。
もしかして、リセットされているブルーを狙ってのことか。
「そして、新たな盟約、帝国との盟約を履行。これから帝国すべては私が支配する」
それはシル、いやシルとシルに率いられたモス帝国からの宣戦布告だった。
第4章はこれで終わりとなります。
少々短いです。
次回から第5章になりますので、
よろしくお願いいたします。
次回、明日中の投稿になります。




