4-17
引き続き、
第4章を投稿いたします。
どうか、よろしくお願いいたします。
進行の都合上、
極端に短い投稿になってしまいました。
まことに申し訳ございませんが、
ご容赦願います。
手の平の魔力の光が消えたスノウが、サインの脇に崩れ落ちる。それをライラに任せてリーネがアキラに向かい、抱きつこうとするが、それをブルーが阻んだ。
「アキラに触るな!身体がずれて、この世界に戻ってこれなくなるぞ!」
荒げた言葉を、すぐに柔らかくして、アキラとツキはすぐに戻ってくるから、ちょっとだけ待っていろとリーネを諭した。
「すぐだよね?」
「ああ、本当だ」
リーネがブルーの首筋に抱きつき、アキラを見つめ、すぐに視線をツキに移した。ツキは表情を消し、目蓋を閉じて、ただ立っていた。
ライラがスノウの身体をサインの脇に、改めて寝かせる。そして、サインとノーミー、そしてスノウの様子を調べていたが、やがて緊張が解けたかのように床にへたり込んだ。
「大精霊が呼吸を始めている。スノウも気を失っているだけだろう」
その言葉をきっかけにしたかのように、鞘を握ったアキラの手がピクリと動いた。それを見たリーネが、更に力を込めてブルーに抱きつく。ブルーは話したそうに口を開けたり閉めたりしているが、リーネが首筋を強く圧迫しているため、声が出せない。
不意にアキラが頭を上げ、ツキが床に崩れ落ちた。
「どうなった?」
「覚えていないのか?」
「ツキが何か言おうとしているのは覚えている。それからは、分からん」
「……記憶を置いてきたか」
ブルーは恐らくは、何かの代償として記憶を奪われたと解釈した。アキラはそう言われても、記憶がないので首を傾げるばかりだ。ツキも同じような状態で、口を開いたところまでは記憶にあるものの、それ以降は覚えていない。
「とりあえずは何とかなったんだ、それで納得しておけ」
その言葉にも、アキラとツキは首を傾げるばかりだ。
そんなアキラの胸にリーネが飛びついて抱きしめた。
「帰ってこないと思った……」
はらはらとリーネは涙をこぼし、アキラを放すとツキの胸に飛び込んでいった。
「ホント、何があった?」
「ずれたんだよ、お前。一瞬だけど、お前とツキの周りだけ、他の世界だったんだ」
その世界までは分からないとブルー。まぁ、戻れて良かったなとアキラの肩に前脚を乗せる。にやにや顔を向けてくるブルーに苛ついたアキラは、ぽんとその前脚を払い、立ち上がってサイン達の眠るベッドへと向かった。
それを見送ったブルーは、床の穴に前脚を入れて、石版を突いた。
「……もしかして、いや、そうなのか……」
そのつぶやきは誰の耳にも届かなかった。
ベッドの脇に跪いて、スノウの手を握っていたライラに声をかけるアキラ。
「どんな様子だ?」
「……呼吸は平常で、スノウは顔に赤みが戻っている。おそらくは大丈夫だ」
そのライラの返事に、ほっと胸をなで下ろしたアキラは、サインとノーミーにも視線を向けた。
部屋に入った時とは、明らかに様子が変わっている。今は、ただ眠っているように見えた。
気が抜けたように、アキラは床にへたり込んだ。ぼんやりとツキに抱きつくリーネを見ていた。
「どこか、懐かしい声を聞いた気がするんだけどな」
「私たちには、ツキが壊しなさいと言ったことしか知らない」
「それはうっすらと覚えているような気がする」
覚えていないのかと、ライラが苦笑いを浮かべる。
その時、ライラが握っていたスノウの手が握り返してきた。
「スノウが……」
気だるい身体に鞭を打って、アキラはライラと並んでスノウを覗き込んだ。
ゆっくりとスノウの目が開いていく。
ライラが握りしめていた手に、力を込めた。
「……痛いわ、姉さん」
「ああ、すまない」
慌ててライラが力を抜くが、それが可笑しかったのかスノウがクスリと笑った。
「ごめんなさい、姉さん。心配かけて」
「いいんだ、大丈夫だったんだから」
その言葉に、スノウが上半身を起こしてライラの首筋に抱きついた。
「……何があったの?」
「……ちょー変なんだけど」
むくりというように、大精霊の二人が起き上がった。
サインとノーミーが目を覚ました、いや、止まっていたから動き出したが正しいのか。とりあえず、ノーミーがうるさい。スノウが見た目は大丈夫そうなのだが、一応ベッドで休ませており、ライラが困った顔をしているので、ライラにスノウを任せて、他の部屋へと移ることにした。
幸い、談話室なる椅子とテーブルがたくさん置いてある、応接室のような部屋があったので、そこを使う事にした。
「部屋に入ったら、ベッドに寝ていた」
アキラはサインの言葉の意味を考える。
つまりは、寝室に入ったところまでは覚えており、先ほど気づいた時には何故かベッドの上にいた。
「そんなところか?」
こくこくと頷くサイン。
そうなると、サインは自分ではなく、誰かの手によってベッドまで運ばれたことになる。この誰も知らないはずの部屋に、正体不明の何者かが入ったことになるのだ。
幼女もどき:「わんわんだよ」
幼女もどき№2:「わんわん、可愛くない」
わんわん:「ぐぎぎ……」
可愛いと言われたいのか、駄目なのか、どっちだよ。
次回、明日中の投稿になります。