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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第4章 ワンダフル・ワールド
89/219

4-17

引き続き、

第4章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。


進行の都合上、

極端に短い投稿になってしまいました。

まことに申し訳ございませんが、

ご容赦願います。

 手の平の魔力の光が消えたスノウが、サインの脇に崩れ落ちる。それをライラに任せてリーネがアキラに向かい、抱きつこうとするが、それをブルーが阻んだ。

「アキラに触るな!身体がずれて、この世界に戻ってこれなくなるぞ!」

 荒げた言葉を、すぐに柔らかくして、アキラとツキはすぐに戻ってくるから、ちょっとだけ待っていろとリーネを諭した。

「すぐだよね?」

「ああ、本当だ」

 リーネがブルーの首筋に抱きつき、アキラを見つめ、すぐに視線をツキに移した。ツキは表情を消し、目蓋を閉じて、ただ立っていた。

 ライラがスノウの身体をサインの脇に、改めて寝かせる。そして、サインとノーミー、そしてスノウの様子を調べていたが、やがて緊張が解けたかのように床にへたり込んだ。

「大精霊が呼吸を始めている。スノウも気を失っているだけだろう」

 その言葉をきっかけにしたかのように、鞘を握ったアキラの手がピクリと動いた。それを見たリーネが、更に力を込めてブルーに抱きつく。ブルーは話したそうに口を開けたり閉めたりしているが、リーネが首筋を強く圧迫しているため、声が出せない。

 不意にアキラが頭を上げ、ツキが床に崩れ落ちた。

「どうなった?」

「覚えていないのか?」

「ツキが何か言おうとしているのは覚えている。それからは、分からん」

「……記憶を置いてきたか」

 ブルーは恐らくは、何かの代償として記憶を奪われたと解釈した。アキラはそう言われても、記憶がないので首を傾げるばかりだ。ツキも同じような状態で、口を開いたところまでは記憶にあるものの、それ以降は覚えていない。

「とりあえずは何とかなったんだ、それで納得しておけ」

 その言葉にも、アキラとツキは首を傾げるばかりだ。

 そんなアキラの胸にリーネが飛びついて抱きしめた。

「帰ってこないと思った……」

はらはらとリーネは涙をこぼし、アキラを放すとツキの胸に飛び込んでいった。

「ホント、何があった?」

「ずれたんだよ、お前。一瞬だけど、お前とツキの周りだけ、他の世界だったんだ」

 その世界までは分からないとブルー。まぁ、戻れて良かったなとアキラの肩に前脚を乗せる。にやにや顔を向けてくるブルーに苛ついたアキラは、ぽんとその前脚を払い、立ち上がってサイン達の眠るベッドへと向かった。

 それを見送ったブルーは、床の穴に前脚を入れて、石版を突いた。

「……もしかして、いや、そうなのか……」

 そのつぶやきは誰の耳にも届かなかった。

 ベッドの脇に跪いて、スノウの手を握っていたライラに声をかけるアキラ。

「どんな様子だ?」

「……呼吸は平常で、スノウは顔に赤みが戻っている。おそらくは大丈夫だ」

 そのライラの返事に、ほっと胸をなで下ろしたアキラは、サインとノーミーにも視線を向けた。

 部屋に入った時とは、明らかに様子が変わっている。今は、ただ眠っているように見えた。

 気が抜けたように、アキラは床にへたり込んだ。ぼんやりとツキに抱きつくリーネを見ていた。

「どこか、懐かしい声を聞いた気がするんだけどな」

「私たちには、ツキが壊しなさいと言ったことしか知らない」

「それはうっすらと覚えているような気がする」

 覚えていないのかと、ライラが苦笑いを浮かべる。

 その時、ライラが握っていたスノウの手が握り返してきた。

「スノウが……」

 気だるい身体に鞭を打って、アキラはライラと並んでスノウを覗き込んだ。

 ゆっくりとスノウの目が開いていく。

 ライラが握りしめていた手に、力を込めた。

「……痛いわ、姉さん」

「ああ、すまない」

 慌ててライラが力を抜くが、それが可笑しかったのかスノウがクスリと笑った。

「ごめんなさい、姉さん。心配かけて」

「いいんだ、大丈夫だったんだから」

 その言葉に、スノウが上半身を起こしてライラの首筋に抱きついた。

「……何があったの?」

「……ちょー変なんだけど」

 むくりというように、大精霊の二人が起き上がった。


 サインとノーミーが目を覚ました、いや、止まっていたから動き出したが正しいのか。とりあえず、ノーミーがうるさい。スノウが見た目は大丈夫そうなのだが、一応ベッドで休ませており、ライラが困った顔をしているので、ライラにスノウを任せて、他の部屋へと移ることにした。

 幸い、談話室なる椅子とテーブルがたくさん置いてある、応接室のような部屋があったので、そこを使う事にした。

「部屋に入ったら、ベッドに寝ていた」

 アキラはサインの言葉の意味を考える。

 つまりは、寝室に入ったところまでは覚えており、先ほど気づいた時には何故かベッドの上にいた。

「そんなところか?」

 こくこくと頷くサイン。

 そうなると、サインは自分ではなく、誰かの手によってベッドまで運ばれたことになる。この誰も知らないはずの部屋に、正体不明の何者かが入ったことになるのだ。

幼女もどき:「わんわんだよ」

幼女もどき№2:「わんわん、可愛くない」

わんわん:「ぐぎぎ……」

可愛いと言われたいのか、駄目なのか、どっちだよ。


次回、明日中の投稿になります。

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