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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第4章 ワンダフル・ワールド
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4-15

引き続き、

第4章を投稿いたします。

どうか、よろしくお願いいたします。

 日の光が届かない洞窟の中は当然のごとく真っ暗だ。ブルーが言うには、大精霊によっては、物を見るのに光に頼らずともよい者もいる。聞いたことはないが、サインもそうなのかもしれないと。

 とりあえず、人と獣人の集団であるため、光は必要だと、呼びかけに応える精霊も数が少なく、リーネとスノウは苦労して照明の魔術で周囲を照らしていた。

 ぼんやりとした照明が、洞窟の壁を浮かび上がらせる。壁は岩で出来ていて掘った跡は見当たらずにゴツゴツと角が至る所に残っていた。また、地下水がしみ出しているのか、岩肌は濡れており、魔術の照明を反射させて怪しい雰囲気を醸し出していた。

 ツキやライラは大丈夫として、一見すれば普通ぽいリーネやスノウに怯えの色が見えないことがアキラには驚きだった。それだけ自然が自然である事になれているのだろうか。

 床も壁同様に人の手が加えられた様子がないため、でこぼこがあり、注意しないとつまずいたりして転けると大けがを負ってしまいそうだ。

 そういえば、ブルーは裸足だが、地面にある岩の角で怪我でもしないかと、アキラがブルーの足下を見るがなんともないようだ。

「面の皮並に足裏も厚いのか?」

「なんだ、何か言ったか」

 前方に注意を向けていたブルーは、アキラのつぶやきを聞き逃したようだ。繰り返しても仕方ないので、アキラは何でもないと返すのだった。

 途中、足下に注意を向けていたリーネが、上から垂れ下がった石柱に頭をぶつけたり、スノウが泥濘に足を取られて転けそうになったりしたが、前方の行き止まりを前にして洞窟の終わりを知ることが出来た。

「行き止まり、ではなさそうだ」

 壁を手で探っていたライラが、妙に平坦ではないかと言い出した。その言葉に、アキラもじっくりと行き止まりの壁を手で触り、視線を巡らせてみた。

「偽装した自然ってとこか?」

 アキラの言葉に、ライラはそうだと頷く。

 耳を押し当て、壁を叩き始めたアキラに、邪魔にならないようにと、ライラは自らも後ろに下がって皆に同じようにと促していた。

 こつこつと音が響く中。アキラは音が変わる場所を見つけることが出来た。

「ここが扉だろう」

 よほど注意して見ない限り、扉と壁の境目が分からないほど、巧妙精緻に偽装されている。それだけに、隙間に何かを入れて、強引に開くことは出来そうになかった。 扉と壁の境界線を、アキラは丁寧に撫でて、どこかに違和感がないかと探ると、地面と壁に接した、扉の下の部分がくるりとひっくり帰って、取っ手が現れた。

 振り返って、全員を見回したアキラ。

「開くから、下がっていてくれ」

 アキラ以外の全員が、万が一に備え、扉と思しき壁から距離をとった。それを見届けたアキラは、ゆっくりと扉を開いた。

 先ずは、細く開けた隙間から中を覗く。すると意外な事に、中は煌々光が灯されていた。壁のくぼみに置かれた光る石が照明の役割を果たしているようだ。

 扉のすぐ向こうは、ホールになっており、奥へと続く廊下があった。

 怪しいものも見当たらないため、アキラはゆっくりとだが、完全に扉を開けた。すぐには中に入らず、死角となる扉脇に何も隠れていないことを確認してから、中へと入った。

 しばらくホールの中央で佇み、何も起こらないことを確認して、皆を中へと招き入れるのだった。

「普通の邸宅のようだな」

 周囲を見回していたライラのつぶやきに、全員が頷く。洞窟から入ってきたこを除けば、周囲の光景は窓だけがないだけで、一般の住宅のようだ。

 奥へと続く廊下を一行はアキラとブルーを先頭にして進み、ドアを見つけるたびに中を覗いていくが、談話室や図書室があるばかりで、人影を見つけることが出来ない。

 最後の扉となった、廊下の行き止まり。

 両開きの扉の片側だけを開けたアキラは、中に大型、ダブルベッドが一つ据え付けられているのを見つけた。ベッドには天蓋があり、レースのカーテンが緩やかに巻き上げられていた。

 ベッドの中央には、小さな人影があった。それをサインと見たアキラが中に入ろうとするのを、リーネが腕を掴んで止めた。

「気をつけて。この部屋には精霊がいないから」

 他の廊下やホールにはいたはずの精霊が、この部屋だけは見つけることが出来ないのだと。

「わかった、注意するよ」

 腰の大太刀の鞘を握り、周囲に気を配りつつ、アキラはベッドへと近づき、ベッドの真ん中に横たわる少女を覗き込んだ。

 息をしている気配がない。

 ノーミーは止まっていると表現したが、まさしくその通りだ。死体にしては、血色が良すぎる。

「サインだな」

 ブルーがベッドに前脚をかけて覗き込み、ベッドの少女がサインだと確かめた。

 詳しくサインの状態を調べたいアキラだが、まさか止まっているとはいえ少女の身体のあちらこちらを触るわけにもいかず、ツキとリーネを呼び寄せて頼むと、ベッドに背を向け、戸口で立っているライラとスノウへと歩み寄ろうとする。

「ブルーも来るんだよ」

「何でだ?」

 こいつマジかと、呆れたアキラは、ブルーの背中に括り付けた水晶(クオーツ)を包んだ布を掴んで引きずっていく。

 ずるずると横倒しで引きずられるブルー。

「おい、犬虐待だぞ!」

「都合の良いときだけ、犬を主張するな!」

 近づいてくるアキラと引きずられるブルーを見て、ライラは無表情であったが、スノウはどう対応してよいものかと、おろおろとして困ったような表情を浮かべていた。

 ぽいっとスノウの足下にブルーを放り投げるアキラは、哀れみを乞うようにスノウにすがりついたブルーを指差す。

「ノーミーに連絡してくれ。大精霊のノーミーなら、何かを気づくかも知れないからな」

「あいつと話すと、頭痛くなるんだよな」

「我慢しろよ」

 アキラに言われ、しぶしぶとノーミーに連絡を取ったブルーは、意外とばかりに返事をアキラに聞かせる。

「すぐ、来るってよ」

「えっ、そうなの?」

 返事が早かったから驚いたのではない。返事が短かったから驚いたのだ。

 アキラの返した言葉が終わらぬうちに、すっとノーミーが部屋の真ん中に姿を現した。

 しかし、完全に実体化した瞬間だった。

「えっ、ちょー変……」

 すべてを言い終わらぬうちに、ノーミーの身体は床に倒れ込んだ。

 あわてて駆け寄ったアキラは、ノーミーの上半身を抱え上げる。

「止まってる……」

 先ほど、ベッドの上で見つけたサインとそっくりの状態にノーミーも陥っていた。

「大精霊を止める……。ここには何かの仕掛けがある」

 ブルーも床から立ち上がって、アキラに駆け寄るとノーミーの顔を覗き込んだ。

 止まったノーミーを抱き上げ、ベッドのサインの横に寝かせたアキラはライラとスノウに振り返った。

「部屋を調べるんだ。壁や床を見てくれ。俺は天井を調べる」

 そのアキラの言葉にライラとスノウはすぐさま反応して、壁と床に手を当てて調べ始める。アキラはティーテーブルに付属していた椅子の上に立って、天井へと腕を伸ばした。

「ツキとリーネはベッド周辺を見てくれ。ベッドの下も頼む」

 その言葉に、リーネが素早くベッドの下に潜り込んだ。

 ブルーは床に鼻を押しつけ、匂いをかいで異変がないかを調べていた。

J○?:「えっ、ちょー変……」

社畜男:「(じー)」

わんわん:「(じー)」

大太刀:「興味ないのでは?」

幼女もどき:「(そっと直して隠す)サイテー」

どこを直したんでしょうか?


次回、明日中の投稿になります。

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