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引き続き、
第4章を投稿いたします。
どうか、よろしくお願いいたします。
「族長、そう自分を責めるな。無様を晒したのは人狼とて同じ。遠縁とはいえ、縁続きの者に乗せられて踊らされた我が身の屈辱よ」
「とにかく、諸悪の根源が、その賢者であることは確定だ」視線をアキラはブルーに向ける。「でだ、さっきの続きだけど、ゴサインは眠っている。それならば協同国に縁のあるもう一人の大精霊ノーミドに相談するのはどうだ」
アキラの言葉に、ブルーは渋い表情を浮かべる。もちろん、その表情を読み取れたのはアキラと巫女姫二人だけだが。
ブルーの表情もそうだが、リーネとツキも浮かない顔をしている事が気になるアキラだった。
「何か問題でも?」
「あー、ノーミーはいい精霊だよ」
「なんでリーネは棒読みなんだ?」
首を捻るアキラに、仕方ないとばかりにブルーが説明をする。
「とにかく、面倒くさいんだよ」
どうやらノーミドという大精霊は、今まで会ったことのあるローダン達とは、また違うのだと。とにかくうるさい、ウザいのだと。獣人達にとっては、恩ある大精霊であるから、特になんとも思っていないようだが、しがらみのないブルー達にとっては非常に絡みづらい性格をしているのだ。
「古い精霊のくせして、ちょっとは落ち着いたらいいのにな」
アキラはブルーは結構面倒見が良いと思っていたが、それでも持て余すような存在なのかと。
とにかく、ブルーに頼み込む形でノーミドに連絡を取って貰うが、帰ってきた答えが「っさいなー、あーし、ちょー忙しいから、話すのもヤダ」とのことだ。
「ほんとだ、何かイラッとする」
僅かに返事をブルーを経由して聞いただけなのに、アキラの精神はささくれ立っていた。
「まあ、ノーミーだしな。だけどあいつ、話しを付け加えていたぞ。サインは起こしておいた方が良いって」
「何でだろう?」
「知らん!」
つまり、ノーミドは今現在では手伝う気も話すこともないが、アキラ達はやることはやっておいた方がいいよということか。
レインを早く元に戻してやりたい気持ちは大きい。しかし、なぜかノーミドの言葉を聞いてアキラの心がざわついていた。
まだ、必要とする機材は集まっていない状況だ。とりあえず、ローダンに連絡して、ペノンズには守護地に戻ってもらい、ディアナと一緒に出来る事は進めてもらう。あればあった方が良いのだろうが、水晶が特に必要な訳ではない。検品に使用していたが、必要あればペノンズとディアナなら他の方法も考え出すだろう。
「ライラ、サインの居場所は遠い?」
「……少し距離はある」
そのアキラの質問は、ライラにとっては答えにくいものだった。自分達の同胞にすら秘匿してきた情報なのだから。
「それは悩むな……」
シルなどの大精霊に頼めればよいのだが、ローダンは財団支店の後片付けに忙しそうだし、他国に住まう大精霊に頼むのは、どこか筋違いに思える。
ならば、こちらからノーミーの居る場所へと出向くというのはどうか。
ブルーがアキラに言われて連絡を試みる。
徒労に終わったようで、ブルーが顔をしかめている。
そんな様子にミッチェルが見かねたように声を上げた。
「幸い、ノーミー様が良く利用されます館が、この町にあります。恐らくはいらっしゃらないと思いますが、覗いて見るのも一手かと」
なんら進展がないなら、それも良いかとアキラは頷いた。
精霊馬の運動も兼ねて出かけることにしたアキラ達に、ミッチェルは息子ラルセルを案内につけると申し出た。
出会った時の偉そうな態度はどこへやら、犬の姿のブルーがスカイドラゴンであり、人質として捉えていたツキと攻撃を仕掛けたリーネが巫女姫と知り、今や平身低頭、そこまで卑屈になれるのかというラルセルがへこへこと頭を下げていた。
「忌み色などと言ってしまい、申し訳ない」
「巫女姫の一人は髪色が黒だというのは、有名らしいけど?」
「面目もない……」
ラルセルを軽薄で気の短い男だと思っていたアキラだが、こうやって会話をしてみると、極めて理知的な部分があることに気づいた。教養もありそうなので、ふと思い立ってアキラはたずねてみることにした。
「王国や帝国の王子は知っているのか?」
「俺の一つ上の先輩になります」
やはり、帝国で人質政策の一環である高等教育を受けているようだ。ただ、財団のミュールも併せて考えると、やはり一段落ちる印象は拭えない。逆を言えば、あの三人が優秀過ぎるのか。
「先輩と知り合いですか?」
「いや、聞いてみただけだ」
それよりも、そのノーミーの館とやらへ、さっそく向かおうとアキラは一行を促し立ち上がるのだった。
ラルセルの案内で着いたノーミド、つまりノーミーの館は意外にもこじんまりしたもので、リータの庭園を見た後では、ここに大精霊がたまに訪れて生活しているようには見えなかった。
ただ、こじんまりとしていると言うが、それはブルーの崩れたログハウスなどに比べてというだけで、一般の住宅からすると、十分に立派なものであった。
恐らく、清掃なども定期的に人狐がしているのか清潔で、庭の手入れもしっかりとしており、花壇なども荒れたような気配はなかった。
玄関の前に立つアキラ。その後ろにはラルセルが控えており、大精霊の館ということで緊張しているのか、身体を硬直させて立っている。さらに後ろにはリーネやツキ、ライラとスノウがどうするのかと、アキラを見つめていた。
いきなり合図もせずに中に入るのもためらわれる。ただ、中に誰もいないと思われるので、ノックするのも間抜けなようで、それもためらわれる。
すると、何を思ったのか、ギクシャクとラルセルが動き出した。何をと思い、アキラは脇を通り過ぎるラルセルを見ていたが、いきなりドアを開いた。
当然、玄関のすぐ前に立っていたアキラは、館の中が良く見えた。
後方で「あーあ」というリーネの言葉と、ツキの「あらあら」という言葉を聞いたアキラ。
視線の先には一糸まとわぬ女が、タオルで髪を拭いていた。
しばし時が止まる。
静寂が訪れる。
女とアキラは視線を交わすが、言葉は交わさない。
現実感がない中で、大きくもなく小さくもなく、未成熟ぽいが形はキレイで先っちょはピンクが可愛く、くびれも見事であり、垂れてはおらず、きゅっと上がって引き締まっており、全体的になかなかのものとアキラは心の中で評価していた。付け加えるなら小悪魔系の顔立ちに髪型は桃色ポニーテールかと。そしてとどめには背中の薄い緑の羽があった。
ドアを開けたは良いものの、そのドアに遮られて中を見ることが出来ないラルセルが、静寂を破る。
「さぁ、どうぞ中へ」
五つは魔方陣が浮かび上がったであろうか。
抜き手も見せず、アキラは飛来する石弾を大太刀で向かい撃ち、すべてを地に叩き落とした。
更にと魔方陣が輝きを増す。
向かい撃つべく、アキラは大太刀を下段に構えた。
すると、その脇を一つの影が通り過ぎ、アキラと女の間に立った。立ったのか?四つ足で。
「待てノーミー、アキラも刀を納めろ!」
間に入ったのはブルーだった。四つ足で立っているために、前脚で手の平を双方にかざそうとしても出来ぬもどかしさ。
「あー、やっぱブルーじゃん。久しぶり~」
ぱっと、髪を拭いていたタオルを投げ出して、ノーミーはブルーの首筋に抱きついた。
「今度は犬じゃーん。可愛いね」
「挨拶と感想はいいから、服着ろ、服を!」
「あー、そうだった。あーし、ただで見せちゃった」
その言葉の次には、すでにチェックのミニスカートに白いブラウス、紺色のベストを着たノーミーがいた。
アキラにとっては、どこか見慣れた服装だ。内心で、日本の都会にこんなのいたなと思い出していた。
「でさー、ブルーも見たよね?」
ノーミーはブルーに抱きついたまま、こてんと首を傾げた。
J○?:「……見た?」
社畜男:「見たけど、大きいのが好きだから、興味ない」
わんわん:「見たけど、犬だもの」
J○?:「殴っていい、あーし殴っていいよね!」
コメント差し控えさせてもらいます。
次回、明日中の投稿になります。