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【帰還篇完結】黒い月と銀の月  作者: 河井晋助
第3章 Reach
61/219

3-12

引き続き、

第3章を投稿いたします。

よろしくお願いいたします。


今回の投稿は、

話しの進行上の都合から、

かなり短くなっております。

ご容赦のほどをお願いいたします。

 ザロは街灯が照らす大通りを避け、暗い小道を選んで歩いていた。さきほどのアキラを睨んでいた険しい表情は消えている。どころか、商談に失敗、いやその入り口にもたどり着けなかったというのに、足取りは軽い。

 ただし、周囲への警戒は怠ってはいない。角を曲がる際には、自分の後方からついてくるものがいないかと確認し、時折は立ち止まり、懐の中を探すような振りをしてみせる。目にとまったのは野良犬らしきものだけ。

 一つの建物にたどり着いたザロは、左右を見回してから階段を上る。

 建物中の各部屋は、事務所として貸し出されているようだ。一部の部屋には明かりが灯っているが、多くはすでに仕事を終えているのか暗い。

 二階から三階へと登り切ると奥の一点に目をやり、廊下を歩いて一つのドアの前で鍵を取り出した。一つではない、三つの鍵でドアを開けたザロは素早く中に入ると、鍵をかけた。

 獣人の性なのか、ザロはワイシャツを脱ぎ、薄いシャツ一枚の姿になった。

 テーブルに用意されていた水差しからグラスに中の液体を注ぐ。

 勢いをつけて椅子に座ったザロがため息をついた。

「言われたとおり、買取は持ちかけた。結果は分かってたがよ、仕方ねーてもんよ」

 そこでグイッとグラスを呷って、一気に飲み干す。

 自分の腕で口を拭い、周囲を見回した。

「ここも引き払うか」

 少ししかない荷物を見て呟く。

 その時、ドアがノックされる。

 まるで分かっていたかのように、ザロは鍵をいじりドアを開いた。

 人目を避けるかのように、開いたドアの隙間から、大きなマントにフードを被った人影が中に入る。

「廊下で待たれるのは困ります」

「そうか、気をつけるとしよう」

 声は女のものだった。フードを取る事なく、仕草でザロを促す。

 意図を悟ったザロが、精霊に呼びかけて、遮音の魔術を発動した。今までザロをいろいろと助けてきた魔術だ。

「結果はどうだった」

「駄目でございました。申し上げましたとおり、一切手放す様子はございませんでした」

 フードの影から、ギリときしむ音が聞こえた。

「では、次の方法、私のやり方で動きましょう」

「……分かった。ただし、私たちも同行する。いいな」

 ザロは一瞬迷う様子を見せるが、フードの影からの視線の鋭さを感じ、やむを得ないように頷く。

「承知いたしました。世界の頂におられる方の腕前にご期待申し上げます」

 そのザロの言葉に、フードが軽く揺れた。


「と言うわけで、中の様子は一切分からんかった」

 ザロの後を()けてきたブルーが宿の一室に戻ってきた。事務所のような部屋へと戻り、人影が一つ中に入るのを見ただけで、中の様子は遮音の魔術で分からなかったそうだ。聴音の魔術を使えば、精霊が戸惑い、外部からの干渉が露見したことだろうと。

「後で入った人は見たのか?」

「見たわけではない。気配を感じただけだ」

 あれは気配が漏れたんではなく、隠しきれぬほどのものだと、ブルーは逆に感心するほどであった。

 その後、フードの人影は出て行ったが、ブルーは自分の気配を察知されるのを恐れ、そのまま帰ってきたのだ。

「怪しい点はなさそうだけど、情報が漏れて、さっそく接触してきた奴がいる。ペノンズは一応警戒は強化してくれるかな。商会を当てにせず」

「分かった。何かあったら、すぐに逃げ出すわい」

「精霊に見張っとくようにお願いしたからね」

 リーネの言葉に、ペノンズの表情がふにゃりとなる。子供か孫に言われたかのように、顔が崩れている。正直不気味だ。

「すぐに対応出来るように、商会倉庫の近くを観光しようか」

 そのアキラの言葉に、いつの間にか手に入れたのか、リーネがパンフレットのような物を取り出した。

「ふふふっ、リアルトには『かふぇ』なるものがあって、甘味が抜群なんだって」

 リーネが広げて指さすパンフレットの地図を、皆がのぞき込む。特にツキが興味深げだ。

 王都と帝都にもあったような気がするが、カフェとは呼ばないのかと、アキラは思う。

 カフェの場所を確認したアキラとペノンズが、倉庫近くである事から頷く。

「それじゃ、明日は朝飯とったら、ぶらぶらと行くか」

 その言葉を合図に、皆は自分たちの部屋へと戻るのだった。


社畜男:「Cafe。はい、発音して」

幼女もどき:「かふぇ」

社畜男:「ちがーう。Cafe、はい、One more please」

幼女もどき:「……かふぇ」

社畜男:「ちがーう」

わんわん:「それ以上は止めておけ。泣くぞ」

社畜男:「すんません。調子こいておりました」

女の子には優しく……って女の子?


次回、明日中の投稿になります。

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